攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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本当になんでもありなのは御堂なのでは?山形は訝しんだ

 シャイニング兄ちゃんという、せめて山形公平要素を入れてほしい気がしなくもない呼び方をするいとこの啓太くん。

 でもなんかキラキラした瞳で見てくるからそれを言うのも悪いなあということで俺は華麗にスルーして、みんなと一緒に川に向かうことにした。

 

 俺と優子ちゃん、リーベ、リューさんに春香。加えて夏子さんと啓太くん恵ちゃんの合計8人とかなりの大所帯だね。

 道路沿いの歩道をまとまって歩いて進むと、すぐに川瀬にまで下りる石垣の階段が見えてきた。めったに車の通ることはない車道だけれどしっかりと左右確認して横断歩道を渡る。

 

「啓太くん、恵ちゃん。一緒に右と左を確認しようね、はい左ーヨシ」

「ひだりーよし」

「右ーヨシ」

「みぎーよし」

「よくできました。偉いよ、二人とも」

 

 幼い兄妹が横断歩道を渡ろうとするのを、俺はしゃがんで目線を合わせて一緒に左右を指差確認する。指差呼称だったかな。

 ダンジョン探査で時折工場に出向く時、構内道路を進む時には必ず行うよう義務付けられているから、従っているうちになんとなし身についた習慣だったりする。

 

 気をつけてるつもりが、左右を気にしない時って意外にあるからね。危険予知っていうものの一環らしいけど、個人的には結構好きな所作だ。

 そんな指差呼称を終えて子供達を褒めると、素直に笑ってくれる。かわいいなあと思いつつ微笑み二人の頭を撫でる俺を見て、夏子さんが感心して話しかけてきた。

 

「公平……なんか去年より一気に大人びたわねえ。言動がまるで大人みたいよ。探査者になったのが春からって聞くけど、そんなになるほどいろんな経験したんだ?」

「うん? まあ、そうだね。自分でも振り返ると意味分かんないなってくらいには、結構いろんなことを経験した気はするよ」

 

 大人びたというか、精神年齢は上がったと思うしね、実際。コマンドプロンプトとしての500歳が加算された以上、探査者になる前と同じ15歳ですとももう、言えないだろう。

 

 探査者になりアドミニストレータとして覚醒しただけならまだしも、やはりコマンドプロンプトの人格と融合したのが決定的だ。

 ほぼボッチでコソコソしてたに過ぎないとはいえ、システム領域での350年ほどとそれ以降、輪廻に乗って転生を繰り返した150年の記録は嫌でも人格に影響を与えるよね、そりゃ。

 

 あーちなみに。

 輪廻に乗ってから山形公平に至るまで、当然ながら何度も転生していたりする俺ちゃんだけど、各時代のことは記憶でなく記録として覚えていたりする。

 実感や体験的な感覚として覚えてはないんだけれど、情報としてのログなら閲覧できる状態にある、って言い方がイメージに近いかな。

 

 だから歴代の俺はあくまで"コマンドプロンプト転生体"であって山形公平ではないんだよね。その辺で人格が何か、影響を受けてるってわけでもないのだ。

 もし受けてたらさすがに、人格面では山形公平どころかコマンドプロンプトですらない誰かさん達の集合体になってただろうしね。怖ぁ……冷静に考えるとゾッとする話だよ。

 ちょっと背筋に冷たいものを覚えつつ、夏子さんに答える。

 

「ありがたい話で、香苗さん……今度S級になる御堂香苗さんを筆頭に偉くてすごい探査者の先輩達と縁ができてさ。惜しみなくいろんなことを教えてきてくれるから、たくさん勉強させてもらってるよ」

「ああ、例の伝道師さん。ていうかそうだ、聞きたかったんだけどあの人のアレは素なの? 演技とかキャラ付けの一環でなく?」

「素です……残念ながら紛れもなく純度100%、御堂香苗さんの素です……」

 

 動画サイトの例のチャンネルを見て、香苗さんの例のアレを見て率直に思ったんだろうね、キャラ作ってんじゃないの? って。

 違うんだなーそれが。アレ完全に素でやってるんだよね、これが。

 

 出会った時点から概ねあんな感じだったけど、この間その理由を知ってしまってなおのことガチさを悟ってしまってもはや俺の手には負えない。

 誰にも言えない重すぎる事情を抱えて人間不信にまで陥った末、ついに辿り着いた救世主との邂逅──重くなるのも仕方ない、ああなるのも仕方ないかなって思っちゃったしね。

 

 他者への伝道行為については迷惑のかからない範囲で、公序良俗を守りつつ適度にやってくださいと願うくらいしか俺にはできない。

 そしてなんだかんだ彼女は卒がないのでその辺、しっかり俺の許容範囲を見定めた上でラインギリギリまで粘るため、結局コントめいたやり取りでツッコんで止める程度に収めてくるからある意味スマートなんだね……

 

「あの人、いろいろあって俺のことを本気で救世主だって思っててさ。話を聞くと実際、そうなるのも頷ける理由はあるんだけど……」

「はー……だからってハープ弾いて吟遊しだすんだ、最近の若い子って。どこの中世風ファンタジーRPGかしらって、初めて見た時唖然としたわよ」

「まずハープ弾けるのが想定外だしね。あの人なんでもできるんだものなあ……」

 

 最初見た時、俺も愕然としたよ……たしかGW中、梨沙さんとのデートの時だったかな。

 なんか御堂さんがやってるよーって彼女に見せてもらったスマホの画面にて、華麗にハープを弾いてリズムに合わせて俺を讃え続ける伝道師を見て絶句したんだ。

 

 それが今ではなんやかんや納得するところまで来てるんだから、慣れって怖いね。

 夏なのにどこか寒気を覚える、そんな俺である。




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