攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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さあみんなも、シャイニングお兄さんと一緒にストレッチ体操をしよう!!

 徐々に、でも着実に伝道師のあのノリに適応してしまっている自分がいることに夏らしい、肝の冷えるものを覚えつつ俺はみんなとともに川瀬にたどり着いた。

 涼やかに流れる水はせせらぎの音が心地よく、手を入れて温度を確認してみるとひんやりしていて夏の暑さにちょうどいい。

 これは涼を取るのに十分だろう。実際、リューさんなんか即座に川に入ってはしゃいでるね。

 

「うっひょーう、冷たくて気持ちーぜー!! おいお前らも来いよ、冷こいぜー!」

「リュー兄ちゃん! 一番年上がなんで一番最初に羽目外すの!?」

「そりゃお前、一番年長だからだよー! こういうのは上のもんがさっさとはっちゃけねーと、下の子がやりづれーだろっホホホーイっ!」

「リューさん相変わらずだなあ」

 

 決して深くない、膝丈にも満たない程度の水場に入り、なんかよくわかんないダンスを踊り始める彼に、春香が叱りつけるもののまるで意に介されていない。

 一番の兄貴分が真っ先に行動することで、啓太くんや恵ちゃんみたいな幼くて引っ込み思案な子でも遊びやすい空気を作る……みたいなことを理屈としては言ってるけど、間違いなく自分がやりたいだけだと思う。

 

 実際、啓太くんや恵ちゃんが自分達もやりたい! って顔をしてるから、やりたいようにやってると見せて案外、ちゃんと他のこの子のことも考えてるのがこの人なんだよね。

 昔からの妙な気配り上手さんっぷりに、俺は内心で感心していた。こういうところ、毎年お兄さん役してるから頼りになるんだこの人。

 

「ほれー! みんなも早く来なよ、冷たいぞー!!」

「!」

「今行くー!」

「おっと、はいストップー」

「はいはいその前にちゃんと準備体操しなさい、あんた達!」

 

 楽しそうな親戚のお兄さんに釣られて啓太くんと恵ちゃんが駆け出そうとするのを、俺が啓太くんを止め、夏子さんが恵ちゃんを止めた。

 一応水の中に入るんだから、しっかり準備運動はしないとね。万一にでも足がつるとか、あってはならない話だからさ。

 

 優子ちゃんやリーベ、春香もあっ、そうかー! みたいな顔をして立ち止まる。すでに靴や靴下を脱いで川原沿いに置こうとしていたところで、今にもリューさんに続けとばかりに駆け出そうとしていたのは明白だ。

 気持ちは分かるけどはしゃぎすぎは良くない。俺は啓太くんを連れて彼女達の隣まで行き、微笑んで言う。

 

「浅くても一応、川の流れに足突っ込むわけだしね。軽くでもストレッチしてから入れよ、みんなー」

「はーい!」

「啓太くん。恵ちゃんもだけど、まずは俺達とちょっとだけ準備運動しようね」

「うんー!」

 

 みんなさすがに安全に関わる話だ、真面目に受け止めて頷いてくれた。流されるとかはないにしても、足を取られてコケて頭を打つとかしたら一大事だからね。

 というわけでみんなでストレッチ。すでに川に入ったリューさんも合わせ、全員でいくつかの運動を行う。

 深呼吸ー、伸ばしてー曲げてー、回してー逸してー。全身をくまなく解していく。

 

「いーち、にー、さーん、しー」

「ごー、ろーく、しーち、はーち」

「にー、にー、さーん、しー」

「ごー、ろく、しち、はーち」

 

 掛け声もみんなでやれば結構楽しい。啓太くんなんかニコニコしながら俺のマネをして動いてるよ。

 そうして一通り体操を終えて、そうしてついに俺達は川へと入った。素足になって冷たい水に踏み入れば、ひんやりとした心地いい流れが夏の火照りを冷ましてくれる感覚。

 

「おー、つめたい!」

「気持ちいいですー!」

「んー、最高!」

「ちめた! つめた!」

 

 啓太くんや恵ちゃん含め子供達が全員、川の中でその冷たさにはしゃぐ。いや本当に冷たくて気持ちいいや、夏なのにこんな冷たいんだね、川の水って!

 ちょっとしゃがんでぱしゃぱしゃと、川の水を手で掬って落とし手を繰り返す。足で感じる以上に手で感じる冷たさは、山に囲まれた中での水遊びという、ここに来て一気に夏休みっぽさを醸してきた俺のテンションを上げるに足るだけのものはある。

 

 なんかいいなあ、こういうの! 親戚みんなで夏の盆、集まって川で遊んで。

 楽しくなってきた。俺はテンションのまま、リーベの足元に水をひっかける。

 

「よいしょー!」

「きゃひ!? ……んもー、公平さんたらー! えいえい、リーベちゃんの反撃ー!」

「うお、つめてっ!? やったなこいつめ、うりゃうりゃ!」

 

 さすがは心やさしいハイテンション陽キャ精霊知能。唐突な陰キャの浮かれた行動にドン引きすることなく、即座に対応してくれた。やさしい。

 互いに水を軽くだが掛け合い、笑い合う。この時ばかりは俺達に、なんの難しい話も立場もいらない。ともに生きる仲間として楽しむだけだね。

 

「そこ! 二人だけでいちゃつくな、そーい!」

「啓太くん恵ちゃん、あそこのバカップルに攻撃だよ!」

「ばかっぷるー!」

「ぷるぷるー!」

「うわわ、冷たっ! はは、やったなー!」

 

 気づけばリューさんや春香も参戦。啓太くんと恵ちゃんを扇動してこちらに水を引っ掛けてくる。

 俺も負けじと幼年二人に、無理ない程度の水をかけつつ笑う。

 

 そうして全員が水浸しになるまで、俺達は川の中ではしゃぐのだった。




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