攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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恐るべき化け物・あまりに異質なUNKNOWN

 リンちゃんと敵の間に咄嗟に割って入り、カウンター気味のビームで目眩ましだけして後退する。

 まるで手応えがないところから本当にダメージを与えられない類のモンスターであることを確認した俺は、矢継ぎ早にリンちゃんに確認した。

 

「リンちゃん、何をどこまで試した!?」

「通常打撃、ほぼ全部すり抜けてくる! 瞬間移動もするし、まともに当てられるのは移動してきた直後の0.1秒程度だけ! でもまともに当てても通らない、まるで手応えなし!!」

「分かった!」

 

 さすがだリンちゃん。敵のダメージカットのギミックや攻撃方法について、戦いながら検証しているだろうと確信して尋ねてみたけど予想以上だ。

 そう、予想以上。敵の性質の多様さもまた、俺の想定していたものを遥かに超えている。精々カップルスライムみたいな不完全耐性かと思いきや、それに加えてすり抜け? だの瞬間移動だのまでしてくるとはな。

 

 敵を見る。ゆらゆらと蠢くそのモンスターらしきモノは、人型ではあるものの決してまともとは言えないフォルムをしている。

 手足が極端に長く、細い。反面に胴体は太く、ところどころピンクの内臓が剥き出しになっている人間、とでも言うべき常軌を逸したデザインだ。

 そして何より顔──人間大のサイズに、ポッカリと空いた虚空が3つ。目と口を模しているかのようについてあり、かつ絶え間なく蠢いている。さながら生物のように。

 

 薄気味の悪い。率直に生理的嫌悪感を催す化物の姿。

 どことなく以前見たバグモンスターに似通うものがあるのは……つまりはそういうことだろうな。

 因果も存在してないらしく、俺からしても一切見えないし。因果操作ができないのは厄介だな、まったく。

 

 だがこれで事前情報はバッチリだ。

 あとは彼女を逃がすだけと、俺は地上に直通するワームホールを開いた。

 

「開け、ワームホール!」

「! 公平さん!?」

「これを通れば地上に出られる! 地上にはリーベがいるから治療を受けるんだ! こいつの相手は俺がやる……間違いなく普通のモンスターじゃない。今のままだと俺以外には少し手に負えないかも」

「っ……分かり、ました!」

 

 俺の言葉に一瞬、悔しそうに唇を噛み締めながらも素直にリンちゃんは頷いた。

 星界拳正統後継者として、一度相対した敵に一回も有効打を与えられずに押されっぱなしで離脱する、それは深く強いショックなのだろう。

 

 だがどうか堪えてほしい、相手は明らかにまともじゃない。

 君じゃなくても他の誰かでも、間違いなく俺は離脱を促していた。そのことを暗に仄めかして、俺は告げる。

 

「あれは厳密にはモンスターですらないかもしれない……システム側の存在にしか対処できないだろう」

「……!? そんなモノが、どうしてこんなところに」

「おそらくは倶楽部絡みってところかな? ……さあ、行くんだ。ここから先はこの私、システム・コマンドプロンプトが受け持つ。地上に戻ったら急ぎ、ヴァールに連絡してくれ」

 

 因果の存在しない生物って時点で、たぶんだけど倶楽部が関与してるのは確定的だ。この局面を乗り切ったら、またぞろ関係各所集めての話し合いは確定だな、これは。

 せっかくの盆に何をしてくれてるんだか……リンちゃんがワームホールを潜り抜けたのを確認して閉じつつ、俺は内心で嘆いた。

 と。

 

「えええあううううおおおええああああ」

「!」

 

 突如目の前のグロテスクな化物が、言葉にもなっていない呻きをあげた。同時に感知する、座標の改竄。

 察するに今のワームホールを見て、離脱したリンちゃんに追撃を仕掛けようとしているのか。

 

 自分は因果を持たないくせに、他の因果には手をつけるとは。そもそもこれはどこかで見たことがある、なんだ?

 訝しみつつも即応でキャンセルする。

 

「《このダンジョン内では座標を改竄できないから空間転移はできない》」

「あおおおおあおおおうううううええええ」

「…………来るか!」

 

 座標改竄による空間転移の禁止。以前翠川のバグスキル《座標変動》を封じたのと同じ措置をしかける。

 それによってやつはリンちゃんを追うことはできなくなったわけだけど……今度は目の前の俺を敵として認識したのか、細く長い手足をワサワサと蠢かせながら近づいてくる。気持ち悪っ。

 

「《風さえ吹かない荒野を行くよ》、《誰もが安らげる世界のために》──出し惜しみはなしだ、極限倍率10万倍!」

『大盤振る舞いだな。まあここまで得体の知れないやつならそれがベストか。さっきの小娘の物言いだと、まだ何か隠し玉があるみたいだしな』

 

 相手の詳細も分からない以上、半端に手を抜いて返り討ちに遭う可能性は十分にある。それは避けたい。

 アルマの言にも同意しつつ、俺はフルパワーを解放した──山形公平としての身体で出せる最大出力、神魔終焉結界の力も借りてのノーリスク10万倍だ!

 ダンジョン全体が俺の放つエネルギーの余波で壊れていく。これほどの力、邪悪なる思念でもなければ耐えきれるものではない!

 

「でやぁっ!!」

「うおえあええおおええうう」

 

 向かってくる敵にこちらから突っ込む! 即座に距離を詰め、手慣らしに手刀を放つ。

 袈裟懸けの大斬撃。空を切り裂くそれは威力のあまり巨大な衝撃波となって部屋内の天井から壁から床からダンジョンそのものまですべてを叩き斬る。まともなやつならこれで決まるが!

 

「おおおおあおおおおおおおおいおおおお」

「っ……これは、青樹さんと同じ!?」

「ええええええいいいいいいいあああああ」

 

 敵自身には当たったはずなのにすり抜けてしまい、逆にカウンターを放ってくる始末。

 間違いない──《次元転移》! 青樹佐智のバグスキルをも、この化物は備えている!!




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