攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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信じられない話だけど、VTRという単語ももう死語らしい

 親族への挨拶もそこそこに、すぐに俺達は部屋に案内された。今は誰も使ってない部屋で、10人近く人が入っても十分なスペースのある広い部屋だ。

 とはいえ物置部屋にも使用しているらしく、部屋の隅にはいろいろ雑多にものが置かれてある。慌てて外に放り出そうとしたじいちゃんだったけど俺は制止した。

 

 ここで寝泊まりするわけじゃなし、ちょっと話し合いするのにそんなことをする必要はないからね。

 

「じいちゃん大丈夫だよ、部屋だけ貸してもらえればそれでいいんだ」

「いやつっても公平お前、いくらなんでもそれは」

「ファファファ! お気遣いありがたいですがね公平ちゃんのおじいさん。私らにそんな気ぃ使わんでくれていいさね、気持ちはありがたく受け取りますよ」

 

 大御所までいるこの集団に、決して粗相はできないと思ってるんだろうけど……ヴァールもマリーさんもその辺あんまり気にする質じゃないからね。むしろそういう気を遣われると逆に困るまであるんじゃないだろうか。

 ともあれマリーさんに言われて渋々部屋を出るじいちゃん。後で写真取りてー! とか去り際に言ってたので良いですかね? とみんなに聞くと、快く頷いてくれたのが助かる。

 

 ま、そういう話はこの辺にしておこうか。俺はスキル《はるかなる大地に吼えよ/PROTO CALLING》を使いヌツェンとシャーリヒッタをも呼び出しつつ、話を切り出した。

 

「さて、それじゃあ始めましょうか。宥さんやリンちゃんが遭遇し、そして今俺が封印している謎の化物についての話し合いを」

「うむ。幸い、望月宥達が撮影していた動画に一部始終が収まっている。まずはそれを確認しよう」

 

 そう言ってヴァールは自分のスマホを取り出し、みんなに見える位置に立て掛けた。スマホスタンド付きかぁ、便利そう。

 そして映し出される一部始終。元々配信用だったためか宥さん達、リスナーさんを意識した目線で挨拶したり話をして進行している。

 

 リンちゃんもガチガチに緊張しつつも美人さん達と和気藹々と話していて、ものすごくいい雰囲気で楽しそうだ。

 だからつい、俺はこぼしてしまう。

 

「これ、お蔵入りもったいないなー……」

「望月宥さんったら日本でも有数の配信勢の探査者みたいだしね。この動画も普通に面白いし、ちょっと惜しいよねー」

「まーでも、なんかよく分かんない倶楽部関係っぽい化物が映ってるんなら仕方ないですよ師匠、山形くん。お蔵入りを楽しめる私らはある意味ラッキーってことにしときましょう。はっはっはー!」

 

 エリスさんや葵さんもこの動画を面白い、楽しいと思ってくれているみたいでしきりに残念がっている。

 とはいえ、たしかに葵さんの言う通りであの化物まで動画に収まっている以上、公にはできないから仕方ないよねー。

 

 ちょっぴり悔しく思いつつ、それ以上に宥さん達パーティーの無念を晴らさないとなと内心気合を入れていると、動画の中ではいよいよダンジョンに入る様子が撮影されていた。

 現れるモンスターをいきなり蹴りつける画面内のリンちゃんを見て、今現在のリンちゃんが補足気味に説明する。

 

「化物がいたのは3階層3部屋目。それまでは私がメインで、リスナーの人達に星界拳を披露して説明しながら探査を進めてた」

「うむ……見事な技だ、シェン殿。さすがは公平殿や先生、ベナウィとともに邪悪なる思念に立ち向かっただけのことはある。素晴らしい」

 

 動画では言う通り、リンちゃんが現れるモンスター相手に丁寧に蹴りを入れつつ解説している。

 星界拳のスタイルからモンスターに相対した時何を思うか、どこを狙うか。そして実際にどう動くかまで……かなり実践的なレクチャーだ。

 

 唸る剛脚は画面越しにもすさまじく、初見のエリスさんと葵さんは息を呑んでいるしヴァールは明らかに後方理解者面を浮かべてうんうんと頷いている。

 その中でもサウダーデさんは同じ武術家ということもあり、ことさら彼女の極めきった星界拳の技の数々を褒め称えていた。照れながら、リンちゃんが拱手して一礼する。

 

「謝謝、風間先生。先生ほどの武術家にお褒めいただけること、光栄です。あと、私のこと、どうかフェイリンとお呼びください」

「分かった、フェイリン殿。俺のことも風間先生などと仰々しさは抜きにして、サウダーデでいい。ともに肩を並べて戦う以上、俺達に上も下もありはしないのだから」

「は、はい! ありがとうございます、サウダーデさん」

 

 さすがサウダーデさんは、リンちゃんにとっても敬うべき存在みたいでしきりに恐縮している。

 現在の探査者界隈にあって最強の近接格闘家だもんな、この人。単純な技術面ではリンちゃんやランレイさんも追随するところがあるのがすさまじいけれど、それでも積み重ねたものもあり彼にはまだまだ遠く及ばないだろう。

 

 そんな人からこうまで讃えられたらこうもなるよね。

 愛らしくはにかむ、目の前のかわいいリンちゃんとは裏腹に、動画内では破竹の勢いで星界拳正統継承者シェン・フェイリンがあらゆる敵を蹴りつけて進んでいた。

 

 そして3階層3部屋目、問題の階層と部屋だな。そこまで降りてきたところで異変が映し出された。

 

『ああううえうおいううええおおあいうええ』

『な……何、コイツ。モンスター……なの?』

『ば、化物……!?』

 

 例のバグスキル3つを体質として備えた無敵の化物。

 やつが動画の中、宥さん達の前に姿を表したのだ。




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