攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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なんてこったこれが探査者

 集合後、スタッフの人から簡単な注意事項を受け、俺も含めた探査者たちは、用意されたバスに乗り込んだ。スタッフ込で80名、探査者だけでも60名いるため、大型バスが2台来ていた。

 隣県に行くだけなのにずいぶん物々しいんだが、これだけの人数で公共交通機関を利用するわけにも行かないんだろう。かと言ってじゃあ、各個人で現地集合な! とすると仮にもツアーの形式を取ってるのにどうなんだそれは? となる。

 

 難しい塩梅だね……ともかく俺は2号車に乗り込んだ。これは純然たる級ごとの振り分けで、A級から順に1号車に乗り込むのだ。

 そのため当然ながら香苗さんとは離れ離れだ。何ならこのツアーに参加してるA級なんてあの人しかいないから仕方ないね。

 代わりに望月さん、逢坂さんとは一緒だった。彼女ら、自由席となると俺の近くに寄ってきたんだけど、釣られてさっき俺を睨んでた人たちまで来ちゃったよ。怖ぁ……車内で暴れないでね。

 

「公平様、ご一緒できて光栄です! 今回のツアー、あなた様のお役に立てるように頑張ります!」

「望月さんほど、その、そんな感じにはなれませんけど。私も精一杯がんばります。よろしくおねがいします」

「あ、ああうん。よろしくおねがいしまーす」

 

 すっかり狂信者二号と化してしまった望月さんはともかく、逢坂さんはまったくもって普通だ。ありがたい……

 ていうか彼女、E級に昇級してたんだね。仲間だ、仲間。

 

「実力面ではまったく、仲間にはなれなさそうですけどね。ご存知のように私、サポーターとしてはそれなりと自負してますので。ご期待ください」

「不肖この望月宥も、公平様と組ませていただけましたら粉骨砕身がんばります! 御堂さんからも私、公平様に仇なす者を討てと仰せつかってますから!」

「俺に仇なす者って何だよぉ……怖いよこの人ぉ……」

 

 もはや武闘派になってしまっている。香苗さんの吹き込みっぷりがエグい。話を聞いてた逢坂さんはおろか、俺を敵視してた男性探査者たちまで微妙な顔し始めてるじゃないか。

 と。そんな中、そのドン引きしてた探査者たちの一人が俺に、おずおずと話しかけてきた。

 

「えー、と……山形だっけ? 君、普段ソロで戦ってるって聞いたし、実際御堂さんの動画なんかでも見たけど……」

「え、ええまあ。スキルの関係で」

「どんなスキルなんだ? ソロパーティっても撮影者の御堂さんはいたんだし、本当に一人ぼっちじゃないと戦えないってわけでもないんだろう?」

「あー……と、それはですね」

 

 まあ気になるよね。普段一人でダンジョン探査してる素っ頓狂が、何を思ったかこんな、パーティ組むの前提のツアーに参加してるなんて。

 しかし困ったぞ、こうなるとあのスキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》を晒すことに繋がる。ポエミーな名称ももちろんながら、10倍バフなんてぶっ飛びすぎな効果も説明しないといけないのか。反応が怖いなぁ。

 

 とはいえせっかく向こうからコミュニケーションを図ってくれたのだし、無下にしたくはない。仕方なし、俺は説明してみせた。

 スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》、効果は一人での戦闘時、全能力10倍。

 聞いた面々の反応は、それぞれながら劇的だった。

 

「何だその名前。誰かのお気持ちかよ」

「効果……嘘でしょ? 全能力10倍って君、小学生じゃないんだからさあ」

「いやでもたしか、組合本部長が彼のスキルのことで慌ただしかった姿を見た覚えあるぞ。嘘じゃないだろう、さすがに」

「それに強力だけど、ソロ限定ってのがね……リスク高すぎない?」

「御堂さん程の人が一緒でも、撮影に徹してたらソロ扱いなのか? ……基準はどこにあるんだろう」

 

 単純にドン引きする人、あんまりな効果に嘘だという人、それを否定する人、強力さと裏腹の脆弱性に言及する人、そもそもソロってなんだよって哲学さえ展開する人。

 本当にみんな色々だ。一つ共通しているのは、スキル一つとっても彼らは、真剣に考えて議論しているという点か。

 

 これが、探査者たちなんだな。

 自分のものであれ他人のものであれ、同業のスキルや称号にも常にアンテナを高くし、もし自分と組んだとしたら何をしてやれるか、何をしてもらえるかを考え続ける生態。

 生きてダンジョン踏破を成すために、100年続くこの時代の中で培われた、プロフェッショナルとしての姿。

 

「逢坂が助けられた際にもスキルは発動してたのかな? シャイニング山形のあの光は、また別のスキルなんだよな」

「御堂さんが助けに入ろうとした時、バフが消えるからまずいと仰ってました。発動していたと考えるべきでしょう」

「たとえばソロ戦闘時、いきなり望まぬ助っ人に入られたらそこで途切れる強化か……うわ、怖い! 私なら使いこなせる気がしないわ」

「よく御堂さんを連れて回ってるね、キミ……あ、逆か。一緒にいてもバフを途切れさせるような邪魔をしないって信じてるから、いつも御堂さんが一緒なんだね」

「さすがは伝道師、救世主様からの信頼が厚い……私も早く、その境地に達しないと!」

 

 俺のスキルを茶化すことなく、本気で話し合ってくれるのはなんだか、嬉しいもんなんだな。

 あ、でも望月さんはちょっとそのノリ、今は控えてくれると嬉しいです。

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