攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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星界を穿ち、真なる道をいざ征かん────すべては天覇の名の下に!

 作戦の最終段階、それはことここに至れば極めてシンプルなものだ。

 "すべての権能を剥がされた偽りの神の器を破壊する"、それだけなのだから。

 

 だからこそ、この役割を買って出たのがリンちゃんだ。昨日、鍛えに鍛え抜いた星界拳が無敵などに阻まれてまるで真価を発揮できなかったことを悔しく思っていた彼女は、それゆえにリベンジに燃えていた。

 誇り高き拳法家として必ずや、やつを蹴り穿つと心に誓っていたのだ。

 

「しぃぃぃぃぃぃ────ッ!!」

 

 完全に具現化された彼女の闘気。オーラエネルギーが可視化して燃え盛る彼女の右足が天高く掲げられる。敵との距離は未だあるが、ここから何をするというのか。

 竜虎大学における俺との模擬戦を経て、新たな境地に至ったという彼女の星界拳。その全貌が今、明らかになる!

 

「────やぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 振り上げた右脚を、そのまま大地に叩きつける。震脚。

 すさまじい力の込められたそれは当然のように辺り一帯を揺るがすも、そればかりではなかった。

 衝撃とともに彼女の纏う焔、闘気が地を伝って疾走し、化物の足元から勢いよく吹き出てやつを呑み込んだのだ。

 

「あおいうえええいいうあおああああああいうういおう」

「しぃぃぃやぁぁぁぁぁぁっ!! しぃっ! やぁっ!! しゃぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 天高く打ち上げられる化け物。そこに向けてリンちゃんが幾度となく蹴りを放ち始めた。

 当然離れた距離からだ、いくらなんでも届くはずがないのだが──彼女の纏うエネルギーが一撃一撃の蹴りから凄まじい勢いで放たれ、ビームさながらに次々、敵を穿っていく。

 

 信じがたい光景だ。《あまねく命の明日のために》に近い挙動を、彼女はその身体一つで成し遂げている! ほとんどバグに近いぞ、アレ!?

 慄き顔がひきつる俺はもちろん、地上にいる探査者達とりわけ、武術を修めている人達からの驚きの声が次々あがった。

 

「聞いたことがある……極めきった武術家は、その手足一つで遠方にいる相手をも撃ち、穿ち、貫くこともできると」

「ウェッ!? そ、それってシェンさんがその領域にいるってことっすかナカちゃん先生ェ!?」

「間違いない。大学で見た時もそうだったけど、もはや僕にも理解し難い領域にいるよ、彼女の武は!」

「なんともはや……シェン・フェイリン。駆け足でA級トップ層に殴り込みをかけた時点で天才とは分かっていたけど、そんな評価じゃまだまだ足りなかったな。御堂よろしく、あれはS級の器だ」

 

 中島さん、高木さんのやり取りを受けて鈴山さんが呟いている。

 山育ちの武術家……というかもっとヤバげな何かを修めているらしい中島さんの言葉は、A級で活躍されている彼にとっても納得の行くものらしい。

 

「…………驚いた。幼くしてあの域に達しているなどと、単なる鍛錬の賜物ではない。あれこそは才気の塊──才能の申し子か!」

「風間くんにそこまで言わせるか。ヴァール様の意志を継ぎ世界の危機を救うべく形成された、シェン一族の集大成とは聞いていたが……とてつもないな。長いこと生きていてこうまで鳥肌が立つ瞬間はなかったぞ」

「気合い入れてますねえミス・フェイリン。こうまでお膳立てされたのですから当然ですが、しかしこの大舞台で一切尻込みしない度胸は素晴らしい。やはり彼女は大成しますよ、探査者としてね」

「違いない。今はまだ俺のほうが上かもしらんが、そう遠くないうちに追い抜かされるかも、な」

 

 サウダーデさん、サン・スーンさん、ベナウィさんが次々に彼女を讃える。

 いずれも押しも押されもせぬ大探査者だけど、そんな彼らをして今のリンちゃんが魅せる技は戦慄と感嘆を禁じえないものなのか。たしかに、あのオーラは並大抵のことではないしね。

 

「リン、すごい……! あれスキル使ってないよ、素の身体能力だけであんなことできてるよ、アンジェちゃん!」

「ヤッバぁ……! ねえお婆ちゃん、スキルもなしにあんなことする探査者って今までにいたりしたの……?」

「それこそ公平ちゃんとかクリストフくらいなもんさね……他はともかく肉弾戦ってジャンルにおいて、フェイリンの嬢ちゃんはすでにあの二人に近いところにいるってことさね。ファファファ! あー引退しといてよかったぁ、あんな子に大御所面して偉そうなこと言うかもしれなかったってんだから、背筋が寒くなるよ」

「そ、そこまで言わせるんだ、お婆ちゃんにさえ」

 

 怖ぁ……マリーさんがドン引きしてるぅ……

 アンジェさんにランレイさんと、A級トップクラスのお二人から見てもあの技は意味不明らしい。

 オーラを出す、それを衝撃波として放つなど、挙動がほぼスキルだからなあ。それを武術と鍛えた肉体だけで行ってるんだから、俺からしても目を疑う光景だよ。

 

「しゃあっ!! しぃやぁっ!! しぃぃぃやぁぁぁっ!!」

 

 無数の蹴り乱舞、そのすべてからビームが放たれて化物を穿ち続ける。リンちゃんはそして一泊おいて構え直し、叫んだ。

 

「今こそ見せるは我が真道! 星界拳を超えし星界拳!!」

「! 来るか、奥義!」

「その名も! ────しぃぃぃぃぃぃやぁっ!!」

 

 燃え盛る身体のまま、大地を蹴って敵めがけて突き抜ける。

 あまりの超加速に、最後に放ったビームに追いつき──それをキックで押し込むようにして、さらに化物へと接近する!

 

 もはや流星だ。蒼い焔を纏った一筋の流れ星と化したリンちゃんが、慣性の法則さえ無視して直角に方向転換しながらも敵を穿つ!

 これが! シェン・フェイリンの見出した究極の星界拳!

 

「────真道ッ!! 天覇星界拳ッ!!」

 

 光も音も置き去りにして、敵を貫き滅ぼしてから。

 ──聞こえてきたその技の名、真道天覇星界拳。

 

 星界拳正統継承者たる彼女の最終究極奥義がみごと化物に直撃し、やつは塵一つ遺さず爆散することとなったのだった。




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