攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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時代が変われば世代も変わる。隠居ラッシュが始まる予感……

 リンちゃん達との会話もそこそこにまた、ブルーシートの上をうろつく。気分はさながらお花見の宴会って感じだ、上を見たって桜なんてなし、どこまでも広がる空と雲しかないけれど。

 この場にいる人達は大体知り合いなものの、グループによっては当然、話しかけやすかったり話しかけにくかったりする。歳上の方ばかりの集団だと特に顕著だね、お話の途中に割って入るとかマジ無理。

 

 ちょっと会話が途切れてるっぽくて、それでいて比較的俺に近い世代の人達の輪はないかなーとあたりを見回していると、不意に横合いから声をかけられた。

 意外にも俺よりだいぶ年上の、渋い男の人の声だ。

 

「おお、公平殿! 少しこちらに来て話さないか?」

「ミスター・公平、お疲れ様です。ぜひとも勝利の乾杯をともに掲げましょう!」

「サウダーデさん、ベナウィさん!」

 

 今回の事件においてともに戦ってくださった偉大な先達のお二人。サウダーデ・風間さんとベナウィ・コーデリアさん。

 彼らがありがたいことで、俺にお声がけをしてくださっているのだ。見ればWSOのお偉い人、グウェン・サン・スーンさんにダンジョン聖教の神谷さん、お付きのウィリアムズさんもいて、俺にニコリと笑って会釈してきている。

 

 まさかの超年上の方々だ。いいのかな俺が割って入っても。ちょっぴりドキドキしつつもそちらへ向かう。

 サウダーデさんとウィリアムズさんの間にスペースが空いていて、俺はそこに促されるまま座る。もちろん正座ね、なんかすごい緊張する。怖ぁ……

 サウダーデさんが俺の肩を叩いて一つ、笑いかけてきた。

 

「遠慮せずに足を崩してくれ、公平殿。君がそうしていては、俺達などそもそも座ることさえ憚られてしまうさ」

「そんなわけないじゃないですか……ええと、いいんですか本当に?」

「もちろんですよ山形さん。どうか楽になさってくださいまし」

「お父上に似ず遠慮がちな御方ですなあ。あなたの正体から言っても、また今回の件における御活躍から言ってももっと、尊大に振る舞ったとて許されるお立場だと言いますのに」

 

 神谷さん、サン・スーンさんも続けて声をかけてくださる。揃ってとてもこんな若造に対する態度じゃないってくらい、丁寧に接してきてるんだけど……事情を唯一知らないウィリアムズさんが目を白黒させているのが印象的だ。ご迷惑おかけします。

 ていうかサン・スーンさんは少し待ってほしい。うちの親父に似ず遠慮がちって何? そんなに遠慮してないんですか父ちゃん。

 ものすごい不安になったのでつい、尋ねてしまう。

 

「いえ、そんな……っていうか父がその、大変なご無礼を働いてたりしますかねもしかして」

「はははは、まさかまさか! むしろ気安くて嬉しい対応をしてくれていますよ、我が心の友正彦は」

「こ、心の友……」

 

 怖ぁ……WSOのお偉い人に何言わせてんだよあの父ちゃん!

 心の友なんて滅多に聞くことのない表現だぞ、よっぽどだよ。しかもずいぶん気安くサン・スーンさんに接してるみたいで肝が冷える。

 

 母ちゃんや妹ちゃんが聞いてたら血の気が引いて卒倒しかねないよこんなの。ある意味凄いよ。

 山形一族随一のちゃらんぽらんとも言える我が父の狼藉に、俺も思わずドン引きである。

 

「永らく政界にいて、ああまで心開ける友はすっかり私の元を去っていってしまっていました。そろそろ隠居するか考えている矢先に、彼という友を授かれたのは幸福なことです」

「そ、そうなんですね……」

「もう近々私も職を辞し、田舎に戻り悠々自適に過ごそうかと考えていますが……彼との友誼は以後も培っていきたい。そう考えるほどにあなたのお父上は素晴らしい友人ですとも」

 

 めちゃくちゃ父ちゃんを買ってくれてるぅ……ありがたいけど怖いよぉ……

 長年政治家として活動してきたがゆえの悲哀をも滲ませつつ、だからこそ新たにできた友に対して友情を感じているみたいだ、この人。

 

 父ちゃんの人たらしぶりが本当にヤバい。コミュニケーション能力どうなってんだよ俺にも分けろ! って言いたくなるレベルだわ。

 話を聞いてきた、神谷さんがどこか懐かしげにしつつもからかうような声色で、彼に話しかける。

 

「今のサン・スーンさんがそうまで仰るのね……海千山千の老獪なる古狸はそろそろ廃業ということかしら?」

「ただ情熱だけだったはずの若き探査者が、いつの間にやら陰謀渦巻く政治劇に呑まれてここまで来た。多少腹黒い真似はしたがそれでも私利私欲はなく世のため探査者のために尽力してきた、それだけは誇りだが……もうそろそろ肩の荷を下ろしてもいい。そう思えるのだよ、最近な」

「そうですね……私も、近頃は同じ思いです」

「神谷様!?」

 

 まさかの神谷さんまで引退を匂わせてきた。ウィリアムズさんが焦りの声をあげるのを、彼女はしとやかに微笑んで受け流す。

 なんていうか、マリーさん同様に長く探査者達のために尽力してきた人達が、今ここに来て一つの区切りをつけようとしているみたいなんだな……システム的にはもう大ダンジョン時代が終わったってのを受けてそう、思われたところはあるのかもしれない。

 時代が変われば世代も変わる。そういうことなのかもしれないなあ。




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