攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「パイセンパイセンパイセンパイセンパイセンパイセンパイセンパイセン」
「いきなり何!?」
渋くて素敵な大人の輪からも離れ、さあ次はどこに行こうかと考えながらうろついていた矢先のことだ。
バッチリ分かるレベルでコソコソ背後に忍び寄ってきた少女が、唐突にヤンデレじみた囁きをかましてきたので俺はついつい驚いて振り向いた。
俺のことをパイセンだなんて呼ぶ子は現状、一人しかいない。
新潟花夢さん──花の夢と書いてカノンと読む、通称ガムちゃん。新人冒険者で、通称おかし三人娘の最年少メンバーが、イタズラな笑みを浮かべて俺に密着していた。
思わず後ずさると、その分だけ踏み込んで俺の顔を覗き込んでくる。怖ぁ……
ガムちゃんはニヤニヤしながらも唇を尖らせ、からかうようにっていうか、まんまからかい口調で俺に言ってくる。
「なーんでこっち来てくれないんです? 私もアメ姉も一応チョコさんも、先輩のために今日ここに来てあげてるのにぃ〜」
「そ、それは感謝してますです、ハイ……あの、近いです」
「近づいてますしね〜。年上趣味のパイセンにはご褒美にもなりませんかね?」
「年上趣味!? 誤解です!」
前々からこの子は俺のことを年上キラーと呼んで憚らない。なんなら同年代ハンター、年下ラヴァーと年代別に対応してくる始末だ。そんなの対応しなくていいから!
慌てて離れる俺を面白がって、彼女は俺の手を取る。小さくて愛らしい手だけど、覇王忍者を自称するだけはありやたらと力強い。
へ? と目を丸くする俺に、ガムちゃんはニッコリ笑って告げた。
「いつまで経ってもあっちフラフラこっちフラフラしてるパイセンは、このまま強制的にごあんなーいしますね。拒否権とかないんでヨロシク救世主」
「強引!」
「っていうかアメ姉の様子がおかしいんで、話聞いてあげてほしいんですよね」
おどけてこんなことしてるのかな? と思いきや次の瞬間、ちょっと不安げな表情を浮かべて彼女がポツリ、つぶやく。
アメさんの様子がおかしい? 気になって進行方向を見れば、清楚に巫女服なんか着て正座している年上の美女がいてこちらを見ている。
鹿児島天乃──通称アメさん。おかし三人娘の一人で、召喚スキルなんてお持ちの方だ。
普段は楚々としつつと微笑みを絶やさない方なんだけど、たしかに今は少し元気がなさそうだ。俺とガムちゃんのやり取りに、なんかハラハラしてらっしゃるし。
「数日前から時折ちょっと変だったんですけどね。今日ここに来て、空を飛んで中2丸出しな演出のスキルを放つパイセンの姿を見て、いよいよ深刻になっちゃって」
「中2はやめて! いやまあ、たしかにド派手な見た目ではあったけど!」
「神魔終焉なんたら? 天地開闢どーたら? な名前の時点で中2扱いは不可避でしょパイセン。諦めてくださいよ根拠のない全能感に支配されてるお年頃の救世主様」
「うぐぅ」
《神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─》のネーミングに、我ながらこれは……と内心で思っていたことをズバリ指摘されて顔が熱くなる。中2呼ばわりを否定できない、つらい。
名前を考える時にうっすらヤバいとは思ってたんだよ、神魔に天地に開闢に終焉て。中2に中2と中2と中2を混ぜ合わせた究極の中2ネームだなこれって、あれこれ意見を出してくれたリーベやアルマには悪いけどそんなことを考えてはいたのだ。
ただまあ、時間もなかったし。ハイセンスな名前を考える余裕もなかったし。なんなら深夜から夜明けにかけてのテンションで俺も調子に乗ってたところもあるし。
この際言っちゃうと発動時、結構ノリノリだったからなー俺も。アルマと合わせて二人で前口上なんて言っちゃって、振り返ればかなりの黒歴史になりそうな気配がして戦々恐々だよ。
『何をくだらないこと気にしてるんだよ……世界は違えどワールドプロセッサとコマンドプロンプトの合体技みたいなものなんだぞ。むしろ正統なハイセンスさまであるだろ』
と、脳内のアルマさんは仰るんだけどね? 現世社会においてはどういう捉え方をされるのかについては、まさに今ガムちゃんが示してくれた通りのことなので……
人は誰しも心の中に14歳を飼ってるものなんだ! と自己弁護をしていると、ガムちゃんはニヤリと笑ってさらに言ってきた。
「むしろ安心しましたよ、パイセンがそういう名前のスキルをお持ちの方で」
「ど、どういうこと?」
「覇王忍者ガムの覇道をともに歩く方として不足なしってことです。私は中2というよりむしろ高2病のきらいがありますけど、だからこそパイセンとはそういう方面でも相性がいいって思いますね」
「どういう方面!?」
覇王忍者の時点で壮絶に14歳だよ君も。いや実際14歳だけどね君。
彼女的にはお気に召したネーミングのスキルみたいだけど、こうなると他の人からの追求こわいな。お、おう……みたいなリアクション返されたら残る夏休み、あんまり外に出たくないかもしれない。
青空を見上げて遠くを眺める俺を見て、ガムちゃんはくすくす笑った。ちなみに、と続ける。
「チョコさんもアメ姉もそっち方面の知識はあまりなくて……関口さん達もそうなので、私だけ若干浮く時あるんですよね……」
「ああ、分かる……つらいよねそういうの。自分の手持ちのネタに一切対応してくれないのって困るんだよね」
「覇王は常に一人、ということなのかもしれませんが……だからこそパイセンのような理解者がいてくれると助かるところはありますね」
ニコリと笑う彼女は愛らしい。愛らしいけれど、実質的に俺まで巻き込んでパンピーの中で浮くオタクになろうとする姿は覇王と言うにはだいぶ姑息だ。
怖ぁ……隙あらば巻き込もうとしてくるじゃん。戦慄しながらも俺は手を引かれ、おかし三人娘の座るところまで案内されるのだった。
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