攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
うちの県の全探組から駆けつけてきてくれた人達も概ね去っていき、続いては隣県の全探組から来てくれた人達が帰路につく。
探査者ツアークランの半数以上の人達だね。新田さん、掛村さんもこちらに属する。ちなみに奈良さんは一応うちの県で大学生やってたりするので、さっき叫びながらワームホールを通り抜けていったね。
帰り際、去り際の挨拶を新田さんや掛村さんと交わす。
比較的高齢の新田さんが、俺を見て肩をすくめた。
「やれやれ、熱血くんにハーレム探査者に救世主……個性豊かな面々ばかりで、こうなるとオジサンな俺は地味で仕方ないなあ」
「何言ってるんですか、今をときめくツアークランのリーダーが。実は新田さんも結構注目されてたりするでしょう。あと僕はハーレムじゃありません、囲われているだけです」
「えぇ……?」
それを巷ではハーレムと呼ぶのでは? 俺は訝しんだ。
個性って面では新田さんも大概だと思うんだよ。見た目からして作業着に何故か腰に工具ベルト巻いてるし、でも使う武器は弓だしで、なんていうかファンタジー世界に転移したばかりのオジサマ冒険者感がある。
この人、3年前までは建築現場でバリバリ働いていたのが、急にスキルが覚醒して探査者へと転身せざるを得なくなった身の上だったりするんだよね。
資格もかなり取得してたみたいだし、妻子もお持ちでかなり順風満帆だった40手前でのいきなりの進路変更。相当ショックだったみたいで、今でも名残分かちがたく作業着に身を包んだいるのだそう。おつらい……
「ま! それでもなんとかやっていけてるし、稼ぎって面じゃ前とは比べ物にならない。ありがたい話でクランのリーダーなんてのもやらせてもらってるし、俺としちゃこれからも人生って感じだよ」
「そうですね……生きてる限り、いろいろ方向が変わっても道は続く。僕もそろそろ外勤を嫌がってても仕方ないなって、前向きになることにしましたよ。彼女達に言われるだけじゃなく、僕も僕なりに頑張らないとなって」
ポジティブに笑う新田さんに、掛村さんも神妙に頷いた。
彼も彼でハーレム主人公みたいな境遇ながら、実は内勤だったのを掛村ガールズの人達に言われて外勤に移った経緯がある。
実際、内勤でいるにはもったいないほどの精密な剣捌きを得意とする実力者なんだけど、本人は金より安全という安心志向の持ち主なんだね。
そんな掛村さんも、ツアークランの一員になったりしたからかダンジョン探査にも本腰を入れるつもりになったみたいだ。
これあれだ、本気出したやれやれ系主人公だ。俺知ってるよ、こうなったこの手の人はめちゃくちゃすごいんだ。ハーレム主人公だなあつくづく!
俺も気怠げにしたら格好がついたり……しないなあ。中二病のぶり返しってからかわれそうだし最悪、夏風邪かな? ってみんなにいらぬ心配をかけちゃうかもだし。
ううっ、忘れたい14歳の記憶の引き出し! やらかした中学時代に内心で悶えかけていると、不意に背後から別なお友達の方々がやってきた。
ツアー参加者だけどツアークランには所属してない特殊なトリオ、タカちゃんナカちゃんスズちゃんさんのお三方だね。
「ウェェェェェェイ! ツアークランのみんなもオッツゥー! ヤマちゃんウェイ! 改めてお疲れェェェイ!!」
「うぇ、うぇーい。山形くん、おつかれうぇーい」
「スズちゃん、無理して彼のテンションに合わせることはないよ。そういうのは逆に彼も嫌がる。自然体が一番だ、お互いにね」
「そ、そうかい? 助かる……」
怖ぁ……泣く子も黙るA級探査者がノリについていけなくて戸惑ってるじゃん。
頑張ってパリピになろうとしたけど無理で、中島さんに諭されて落ち着く鈴山さん。ちょっと頬が赤いのは、自分でもかなり無理な真似をしたって思ってるんだろう。分かる。
彼らとも当然、探査者ツアーの縁がある新田さんが苦笑いしつつも手を挙げて気軽な挨拶をした。
気さくな調子で話しかける。
「来たなぁ、個性の塊トリオ……おうタカ、たまにはツアークランにも顔見せろよー。スズの旦那にナカさんも、な」
「モチのロンだべ新田サァーン。俺らは俺らで意気投合してっからトリオってだけで、心はいつでもヤマちゃん一派っしょ!」
「俺ぇ!?」
「それを言うなら俺らツアークランも山形くん派閥って言っていいだろうなあ。元からシャイニング世代でも彼に一番距離の近いグループだし、今回から救世の光とも組むしな」
「ま、マジなんですね……」
本気で組むのか、あの人達と……真剣に戸惑う。さっき伝道されてたけど、真面目に手に手を取り合うつもりみたいだ、両組織。
救世の光側に香苗さん、マリーさん、ヴァールとめちゃくちゃ有名な探査者がいるってのも大きいんだろう。WSOが絡むわけないにしても絶大な権力を持つ人達と懇意になるわけだしね。
「今やシャイニング世代と名付けられた、直近5年前後の若手探査者達の勢力図はさながら戦国時代だ。別にぶつかり合うわけじゃないんだけど、仕事量や評判の良さで優劣が決まるところはある」
「その優劣で、傘下についたりつけたりすると?」
「全国制覇、天下統一を夢見る勢力もいるとは聞くよ。そんな者達にとっては山形くん、君こそ勢力の趨勢を握る鍵として見ているかもしれないね」
「えぇ……?」
一体どこへ向かうというのか、ツアークラン……というかシャイニング世代。
知らないうちに勝手に玉璽めいた扱いにされてることに、いよいよ戦慄する俺ちゃんでした。
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