攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
お昼ご飯も食べ終えて、ちょっと居間で寛いでから俺とリーベはそれぞれの部屋に戻った。昨日から寝てないってんで、軽く昼寝でもするのだ。
徹夜して今回の作戦に臨んだことは、親族もみんな知ってるからね。お疲れ様、ゆっくり休めよーとのお言葉までもいただいたので、それならとお言葉に甘えて静養させてもらうわけだ。
自室にて敷かれた布団に潜り込む。はー、温かい。
ぬくぬくの布団は夏でも心地良くて、あっという間に眠れちゃいそうだ。体力的に消耗してるわけじゃないけど、やっぱりいろいろあると気疲れだってしちゃうからね。
「きゅう、きゅーう」
「あー、アイも温かいなあー」
「きゅう〜」
俺の昼寝に、羽根をパタつかせてついてきたミニチュア・ドラゴンことアイが横たわる俺の胸元にしがみつくのを、柔らかく抱きしめてつぶやく。
親元に来てからこっち、主に親族の皆さんに可愛がられまくっていたこの子も、楽しいのは楽しいけど遊び疲れてもいるみたいだ。ちょっぴり気が抜けた様子で俺に擦り寄ってきているね。
そんなアイの背中を優しく撫でつつも、俺は本格的に寝に入るまでの僅かな時間、少しだけこの子に話しかけた。
「いろいろあったけど、少しだけ暇な時間ができたよ。アイとも一緒に過ごせる時間、あると思う」
「きゅうー」
「それに、もうじきシャーリヒッタも受肉するとかなんとかって話だし、家族が増えるかもな……そうなったらもっと賑やかになるよ。きっとアイとも仲良くしてくれるだろうし」
「きゅっきゅう」
アイもそうした語りに応じてくれて、目を瞑って心地よさそうに脱力しながらも頷いている。
シャーリヒッタの受肉──親元に来る際にリーベから聞かされてマジかよってなった衝撃の話。どうやらわざわざ人間の身体を得てまで俺の傍にいようとしているみたいなんだよね、あの子。
そこまで慕われていることに、戸惑いつつも嬉しみも感じる。500年放置しておいてなんだけど、優しくて良い子だよなあ。
ワールドプロセッサがよく受肉を許したなあって思うが、あいつからしてもシャーリヒッタは永きに亘り自分をサポートしてくれた補佐役の精霊知能なんだ。ちょっとくらいは願うことを叶えてあげるのも、上司の役目ではあるよなあ。
────と、称号の変更を感知する。
人の寝込みまで見てるのか? あまりプライベートに干渉はし過ぎないでくれよと思いつつも俺はつぶやいた。
「《ステータス》」
「きゅ?」
名前 山形公平 レベル925
称号 終焉、それは次なる開闢への喇叭
スキル
名称 風さえ吹かない荒野を行くよ
名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た
名称 誰もが安らげる世界のために
名称 風浄祓魔/邪業断滅
名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で
名称 よみがえる風と大地の上で
名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの
名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師
名称 あまねく命の明日のために
名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING
名称 神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─
称号 終焉、それは次なる開闢への喇叭
解説 時代のうねりの狭間にて、せめて今は安らかなれ
効果 なし
《称号『終焉、それは次なる開闢への喇叭』の世界初獲得を確認しました》
《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》
《……一つのことが終われば、また次なる何かが始まる。シャーリヒッタもまた、これまでの日々を終えてこれからの時代に目を向けたということなのでしょう。生きるということは、選んだ道を歩き続けることの連続なのですね、コマンドプロンプト》
「……そうだな、ワールドプロセッサ。誰もがみんな、選んだ道で歩き続けているんだ」
「きゅう」
訪れたはずの新時代に、なおも巻き起こる騒動の嵐。
今度は護るべき現世や概念領域のもの達と戦うことになったんだ、ワールドプロセッサもいろいろと思うところがあるみたいだ。
誰もが選んだ道を進んでいる。俺や仲間達もそうだし、倶楽部の幹部達だってそうだ。善悪を問わず選択と、その先にある目標のために行動している。
望んだ地点に辿り着けるかは別にしても……生きるってことは、その繰り返しと言えるんだろうな。
邪悪なる思念との決着がついた今になってはじめて、俺もワールドプロセッサも精霊知能達も、そんな風に考える余裕がでてきた気がする。
今となっては俺たちシステム側の存在も一個の生命。であるならば、生きるという選択と行動の連続を繰り返していくことに変わりはないんだ。
「だからこそ、今くらいはせめて、休まなきゃな……」
「きゅう〜」
ただし、狭間には当然一時の憩い、安らぎだってあるべきだ。
俺にとっては今から認定式までの10日間ほどがひとまずそれにあたるのだろう。
次なる戦いは近い。だからこそ今はひたすらに休み、英気を養おう──柔らかく暖かなアイのぬくもりを抱きしめながら、そんなことを想って俺の瞼はゆっくりと閉じられていった。
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