攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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空を自由に飛べはするけど、それはそれとして高所恐怖症は据え置きです!

 ────ふと、目を覚ました。蕩けるような微睡みから覚める瞬間、何か夢を見ていた気もするけど、すぐに記憶の彼方へと追いやられてしまう。

 スマホを見ると14時30分。昼寝を開始して1時間と少し程度か。もうちょい寝てるつもりだったんだけど、どうやらお客さんらしい。

 

 さっきから空の上、概念存在がチラチラと俺の感知範囲ギリギリの地点をうろちょろしていて気になるったらないのだ。

 つい今朝方獲得した称号《人の罪、神魔の驕り。今こそ断罪の時来たれり》の効果で感知できちゃってるんだよね、概念存在。

 

「なんだよ、もう……結界起動」

「きゅうー……きゅうー……」

 

 俺の腕の中でぐっすり寝ているアイを、起こさないようにゆっくりと布団に残しつつ俺は立ち上がった。

 眠気眼を擦りつつ神魔終焉結界を発動し、蒼いロングコートに大陸系の服に身を包む。

 

 さて……このタイミングでこんな風に俺の周りをウロチョロする概念存在、まず思い浮かぶのは彼の姿だけれどどうかな。

 推測しつつも俺は、ワームホールを開いて飛び込んだ。この家の上空、はるか高度1kmの地点に繋がる時空の穴だ。

 

「──っと。うわっ怖ぁ……」

 

 地上から一瞬で空中に身を投じた俺ちゃん。次の瞬間にはどこまでも広がる蒼い空の真っ只中にいたわけだけど、落ちるでもなく制止して浮遊する。

 神魔終焉結界の機能の一つ、飛行能力だね。さっきまで俺がいた親元の家ははるか眼下で、流石にこの距離からだと小さいなあ。

 

 たしか世界で一番高い建築物が、800mから900mまでくらいの海外のビルだったっけか。つまり俺は今、飛行機とかヘリコプターで空を行くのでなければ誰よりも高いところにいるわけだね。あくまで物理的な話として。

 うーん、特に感慨もない。むしろ高所恐怖症だもんで、下を見るのが怖いまである。こちとら二階の窓から下を見るだけでも膝が震える始末だよ。

 

 さっさと終わらせて帰ろう、すぐ帰ろう。

 そう思って俺は、気配の上では近くにいるだろう概念存在へと声をかけた。

 

「遠くから伺ってきて、一体なんの用かな? 織田」

「…………さすが、この距離から掴んできますか、我が気配を。権能による隠形さえしているのですが」

 

 呼びかけに僅かな間を置き、現れたそのモノ。スーツ姿で黒髪のオールバックが、いかにもビジネスマンって感じのピシッとした印象を受ける中年男性。

 しかして高度1kmの何もない空中に、俺同様浮遊している彼は見かけ通りのサラリーマンではない。概念存在……それもどこぞかの神話の最高神クラスが受肉しているという、なんでそんな簡単に姿を見せてるんだよって言いたくなるレベルの大物の神だったりする。

 

 仮の名を織田という、その神が苦笑いしつつ姿を見せたのだ。

 笑うしかない、というどこか諦めも入っているように見える姿に、俺も笑みを浮かべて反応する。

 

「このタイミングであなたがここに姿を見せた。ということはもうあらかたの事情は把握しているんだろう? 俺が何者かも含めて」

「ええ。帰還後、あなたに言われた通りに各神話の創造神クラスを手当たり次第にあたりましてね。それでもほとんどは知らぬ存ぜぬでしたが、極一部の方からすべてを聞くことができました……山形公平、いえコマンドプロンプト」

 

 真顔。一瞬でそれまでの、どこか胡散臭くも感情の垣間見えるうっすらした笑みが消え、完全なる無表情にて彼は俺の本名を言い当てた。

 やはり創造神に聞く形で真実を知ったか、織田。並々ならぬ好奇心を持つ彼は、俺からのヒントもあって知らないままではいられなかったということか。

 

 無表情のままに、彼は俺をまっすぐに見据えた。上空ゆえに風の吹きすさぶ中であっても、お互いの声はよく聞こえる。

 俺がなぜわざわざ誘導する形を取ったのか、彼もさすがにことここに至っては気付いていたようだ。静かに、けれどはっきりとした断定口調で語る。

 

「そして同時に、私に課せられたあなたからの期待をも理解しましたとも。いらぬ詮索をする概念存在達への、ストッパーとなることを求められているとね」

「知りたいと願い接触してきたのはあなただからね。こちらとしてもヒントたりとて与える以上は、少しくらい利用させてもらいたかったわけで」

「これは少しのうちには入らないと思いますが、システムジョークか何かですか? まあ、構いはしませんが」

 

 創造神クラス以外では唯一、システム側について真実を知ることとなった概念存在、織田。

 彼に俺が期待する役割はたった一つ、他の概念存在がシステム側に気付く兆候を見せた場合、それに対してストップをかけることだ。

 

 別に戦えとか言ってるわけでないよ、もちろん。

 むしろ本格的な厄介事に発展する前に、なるべく内輪で穏便な形で済ませられるようにするわけなので平和的解決策を用意したとさえ言っていいかも知れない。

 

 ただまあ事実上、概念存在とシステム領域の仲介役に立たされてしまった彼からすると堪ったものじゃないってのも分かるよ。

 だからこの際愚痴は聞くから、それでどうにか納得してほしいなあ。元は好奇心を優先したそちらにも責任の一端はあるんだし、ねえ?




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