攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ま、まさか織田の正体があの神様だったなんてー(棒読み)

 俺が託したヒントから恙無く真実に辿り着いた概念存在、織田。

 同時に俺からの厚い期待、すなわち概念領域とシステム領域とをつなぐ唯一無二の人材として、ストッパー兼仲介役になって欲しいという思惑をも理解したみたいだ。

 

 "自身と同格、格下の存在に対して真実を語ることはできない"という誓約。その意味するところはつまり、織田という存在を特殊な立場に据えさせるためのものだったということに後から気づいたわけだね。

 そしてその時にはもう引き下がれない状況に陥っていたことに、彼は薄く笑みを浮かべたまま乾いた拍手などしつつも俺へと言い放つ。

 

「こうなればもはや、良い悪いの決定権は私の手にはありません。すべてを知った時点で私は概念存在の中で唯一、あなた方システム領域に対して明確に協力体制であることを義務付けられたモノなのですから。ああ、あるいはパイプ役、窓口役と言ってもいいかもしれません。最高神といえどこうなれば中間管理職さながらですね。くくく……」

「…………ま、まあそのー、それとなくシステム側を調べる動きを抑制してくれればいいだけだから。あと、現世に介入しようとしてる連中についても随時教えてもらえればそれで」

 

 怖ぁ……怒ってるのかな? 直接聞くのはさすがに煽り行為になるだろうから聞けないけど、怒ってるんじゃないかなこれ。

 とはいえ最高神クラスがわざわざ出張ってきたのはつまるとこ、直接真実を知りたいからってそれだけだろうし。誓約の内容からして相当にヤバいネタだってのは想像できたろうものを、それでも知識欲を抑えきれずに踏み込んだのは織田自身だ。

 

 その自覚もあるから、ちょっとピキッてる笑顔を浮かべる程度に収めてるんだろう。好奇心は猫を殺す、この場合は神だけどね。

 ふう、と肩の力を抜いて織田が笑みを緩めた。怒りを鎮めた、こないだと同じく人を食ったような笑顔を浮かべる。

 彼は応えた。

 

「お気遣いいただきありがとうございます。こうなれば私も一蓮托生ということで、それなりに楽しませてもらいますよ。一番知りたかった真実についても、たしかにお教えいただいたわけですからね」

「そう言ってくれると助かるよ、織田。騙し討ちみたいに思われたらどうしようかと思っていたんだ」

「一杯食わされた感はありますがね、まさしく身から出た錆、自業自得ですよこれは。次……があるかは知りませんがあるなら肝に銘じておきましょう、世の中には興味本位で触れてはならないものもある、とね。クククッ」

 

 力なく首を振って嗤う彼は、なんていうか哀愁さえ若干漂うなあ。

 サラリーマンの姿だから余計なんかこう、くたびれた感じの姿が疲れてるように見える。まだ特に何もしてないんだけど、よほどショックだったのかな、自分から袋小路に入っていったのが。

 空中浮遊しつつ人生の嘆きを味わってる風なサラリーマン、シュールだ。

 

 少しの間を開け、織田は再び俺を見た。もはやそこには猜疑も疑念もないが、相変わらずの警戒はある。

 けれど裏腹のフレンドリーさでもって、彼は俺に言うのだった。

 

「ああそうだ。ここまで来たならば私も、正体を明かさないでいるわけにもいきません。現世ゆえ一瞬ではありますがご覧に入れましょうか。私の正体をね」

「……いいのか? 別に俺は、知らなくてもいいなら無理に聞こうとも思わないけど」

「これから一種の協力関係を結ぶというのに、こちらだけ身元を隠すというのもおかしな話でしょう? まあ、あなたなら知らずとてなんなりとなさるのでしょうがこれは形式の話でもあります。概念存在としては、そうしたものを無視するのも座りが悪いのでしてね」

 

 織田の正体とか言われたとて、神話にそこまで詳しくないからなんとも言えない可能性さえあるんだよなあ……

 自信満々にこれが私の正体でござい! と告げられて、でも知らないから微妙な反応しか返せませんでした! ってなったらすごく気まずいし。下手するとそこで揉めかねないくらいデリケートな話ではあるんだよね。

 

 とはいえ織田というか概念存在としてはそうした、名乗り合いというのも一種の儀礼、イニシエーションとして重要なものだったりするのもたしかだ。

 今後たしかに協力関係と言えるものを構築する上で、こちらだけ何も知らないってのは通らないんだろうな。

 

 ────そして、織田は一つ頷いた。瞬間、彼の身体がブレて別の者へと成り代わる。

 端末たる織田の肉体を介してごく限定的に、本体の姿のみを呼び出したか。中年サラリーマンの姿から一気に様変わりした彼を、俺は具に確認した。

 

 白髪を長く伸ばした老人だ。ローブを纏っている。シワの刻まれた顔は若い頃はさぞや男前だったんだろうなってくらいシブくてカッコいい顔立ちをしてるが、一箇所大きな特長がある。

 右目が閉ざされているのだ。へこんでいるところを見るに、抉るか何かして片目を失っている。シワに隠されているが傷も残っていて、全体的に威厳のある姿にさらなる視覚的威圧感を与えている。

 

 総じて織田の姿と全然違う。

 息を呑む俺に、現れた最高神は愉快そうに笑い、名乗った。

 

「…………!」

「────お初にお目にかかる、コマンドプロンプト。我が名はオーディン、またはオーディーン。オージンやオーデン、ヴォーダンその他様々な呼ばれ方をすることもあるが、この国ではオーディンという名こそが最も通り良いものと心得ている」

 

 そのモノ──オーディンと名乗る神は、杖を片手に優雅に一礼した。

 知ってるー! この神知ってるよ俺ぇ、ゲームや漫画でめっちゃ見かけるぅー!!




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