攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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おのれリーベ!貴様のせいで新人さんの常識まで破壊されてしまった!

 お寿司も結構食べ終えて、それなりに満腹になってきた俺ちゃん。

 見ればお寿司や刺身はまだもう少し残ってるけど、大人達は早々に満足したみたいで酒ばかり飲んで雑談しているね。

 

『ああ、やはりお寿司ってのはいいね、最高だ……魚の切身を酢飯に乗せただけのものがこんなにも美味しい』

 

 ジュースを飲みつつはふうと息をつけば、脳内食レポ専門家のアルマさんがポツリと呟いた。

 こいつずっと次はあれ食えだの、そしたら次はこっち食えだのと指示が多かったものの、基本は黙って俺が感じる味覚を共有して受け止めているばかりだったな。

 

 大体終わりがけの今頃になってなんか言い始めるのか、食後の感想ってやつかな?

 俺としてはめちゃくちゃ美味しかった、また食べたいなーってくらいのざっくりした感想ばかりが思い浮かぶけど、アルマはやはり思うところ山のごとしって感じみたいだ。

 俺にしか聞こえない食レポを、一人おもむろに開演し始める。

 

『柔らかく舌の上で蕩ける刺身の旨味、すなわち甘味にも酸味にも似た幻想的な甘さと酸っぱさが、酢飯によって補強されつつ食感にも彩りを加えてくれている。味がまとまっていながらも単調でなく、複雑な奥行きある味わいを表現しているんだ。これはもはや芸術と言っても過言ではないだろう』

 

 めっちゃよく語り始めたアルマ。最近思うけど、若干テンションというかノリが伝道師なんだよなあ。

 旨いものを食べた感動、衝撃を言葉にして表現し、それを誰かに伝えたい。そんな思いゆえにこんな感じになっているんだろうか。

 

 世界喰ってた頃に比べてとてつもなく健全だとは思うので、うるさいのはうるさいんだけどまあいいかなって感じはしている。

 どのみち今日はもう腹一杯だしな。ジュースを飲んで口の中をさっぱりさせてから、俺は両手を合わせて食事の終わりを告げた。

 

「ごちそうさまでした」

「なんだ、もういいのか? まだいくらか残ってるぞ?」

「いやーもう腹いっぱい。これ以上食べたらお腹壊しそうだよ」

「それじゃあリーベちゃんがもらっちゃいますねー! お寿司、お寿司!」

 

 じいちゃんがなおも勧めてくるのをやんわり断る。もうお腹パンパンなんだよね、さすがに限界だ。

 隣のリーベはまだ食べ足りないみたいで、残るお寿司やら刺身は彼女が食べていく。受肉してほぼ2ヶ月とかそこら、この子は本当によく食べるよなあ。

 

 シャーリヒッタも受肉したら同じくらい食べるんだろうか? エンゲル係数がががが! ………なーんて食費の心配はさすがに無用だ。

 なんせ探査者のいる家だからね。普段からまるで贅沢もしてないし、食費に使うくらいしないと貯まっていくばかりになっちゃうのだ。

 

 あーそうだ、夏子さんへの仕送りとか、後で父ちゃん母ちゃんを通してそれとなく段取りをつけないとな。

 いくら金には困らない探査者でも甥御、それも未成年に面と向かって切り出されるのは夏子さんからしたら辛い話だと思うし……なんか偉そうで俺自身、したくはないしね。

 

 父ちゃんと母ちゃんからの支援、みたいな感じにしたほうが穏当だろう。家に帰ったら話そうかなー。

 考えているとリーベも、テーブル上の料理をすべて平らげて満足したみたいだ。両手を合わせ、元気よく朗らかに食事の終わりを宣言する。

 

「はふー、さすがにこちらもお腹いっぱいですー。ごちそうさまでしたー!」

「ワハハハ! 良い食いっぷりだったぞリーベちゃん、若いのはそうでなくちゃーいけねえ!」

「えへへー! あ、あんまり言われるとそれはそれでちょっとー」

 

 じいちゃんに褒められて照れつつも、若干困った顔をしている。食い過ぎ感は毎度出てるけど、本人も少しは気にしてるからなこれで。

 探査者としての活動を始めたんだし、多少のカロリーオーバーとかもすぐに帳消しになるのでは? と思ったけどこの子の場合、級に対して実力が高すぎるのでダンジョン探査しても大した運動にならないんだよね。

 

 そもサポート役だし、攻撃と言っても《破砕光粉》を棒立ちで撒き散らしていれば概ねケリがつくという、いかにもものぐさリーベちゃんって感じの性能してるし。

 翼生やして空を飛ぶと少しはカロリー消費の足しになるそうなので、もっぱら探査中はそうしているらしい。よく一緒に活動するパーティーメンバーの方々も最初は面食らいつつも、今ではすっかり慣れっこなんだとか。

 新米探査者の常識をも破砕しているな、リーベ!

 

「はふー、おいしかったですー」

「ほんと美味かったなあ。アイももういいのか?」

「きゅう〜」

 

 満足して2人、腹を撫で擦る。隣ではアイも満腹になったのかぺたんと尻餅をついて、満足げに目を細めて鳴いている。

 アイはアイで刺し身の短冊、大きいのを2つも平らげたしな。ちなみに雑食だから寿司も普通にいくつか食べたよ、酢飯の感覚にちょっと戸惑ってたのが可愛かった。

 

「今、お風呂沸かしているからね。一息ついたら順繰りに入って温まってねみんな。公平ちゃんもリーベちゃんも、昨日今日と大変だったねえ」

「ありがとうばあちゃん。お疲れ様」

「ありがとうございますー、お疲れ様ですー」

 

 食後の一時を過ごしていると、ばあちゃんがねぎらってくれる。

 身内にお疲れ様って言われるの、ちょっと照れくさいところあるよね……でも嬉しい。感謝の言葉で応じつつも俺達は、風呂の準備ができるまでしばらくのんびりと過ごしていた。




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