攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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すみません、遅れました!


このアメさんはもう手遅れだ、使徒から戻せないよ

 なんだか湿っぽくなった空気を吹き飛ばすように、姉妹関係の複雑さを語ったアメさんは続けざまに言ってきた。

 

「それより! 改めまして本日はようこそお越しくださいました先生、リーベ様! なんだかすごく緊張しちゃいます〜」

「い、いえいえこちらこそ。緊張してるのはむしろ俺のほうでして」

 

 何しろお美しいお姉さんのお部屋にお通しされてるからね! あまり緊張してる風には見えないおっとりアメさんに応えつつ、俺は本題に入るべく居住まいを正した。

 

 今日は別に遊びに来たわけでも、親御さんにご挨拶するために寄ったわけでもないのだ。

 俺の正体やシステム側について、アメさんに洗い浚い喋っちゃったらしい始原の4体と話をつけるべく、リーベまで駆り出してやってきたわけである。

 一応、アメさんに最後の確認を取る。

 

「もう一度だけ確認させてください。始原の4体は、アメさんに対して何を話しましたか?」

「は、はい。この世界を運営するワールドプロセッサ様という方と、コマンドプロンプト様という方と、精霊知能様という方々につきまして。それと大ダンジョン時代の到来するきっかけとなった邪悪なる思念という存在と……先生がコマンドプロンプト様であり、世界の存亡をかけた戦いで勝利を収められた方である、というところまではお聞きしております」

「ほぼ全部じゃないですかー。何やってんですかあの子達ー」

 

 さしものリーベも呆れ返っている。マジで大筋について一切合切喋ってるのな、あいつら。

 邪悪なる思念絡みについてまで話してるのは本当に何してんの感が強い。実は知らない間にこの世界終わりかけてたよ、なんてことを必要もないのに伝えてどうしろってんだか、無駄に怖がらせて終わりなだけだろ。

 

 期せずしてほぼすべての真相を知ってしまったアメさんを見る。

 目の前にいる俺とリーベが、普通の探査者かと思いきやまさかの最上位存在であることを受けてか、以前よりも崇敬や畏敬の籠もった眼差しを向けてきている。

 

 伝道師とか抜きにしても、こうなっちゃうだろうなーって思いはあるよ、正直。

 与えられた情報が劇薬すぎた。アメさんは特に繊細なところがあるから、世界の裏側とか聞かされたらまるごと受け止めてしまうんだろうな。

 

 それこそ宥さんに近いかもしれない。使徒になってしまったことだしそのうち、伝道師と使徒二人の三人がかりで伝道しだしちゃうのかな、怖ぁ……

 とんでもない想像をかき消して、俺はこほんと咳払いした。

 

「ええと。そこまでご存知ならば改めて名乗らせていただきますね。山形公平、またの名をシステム・コマンドプロンプトです。元はこの世界のあらゆる因果を司る因果律管理機構であり、邪悪なる思念との戦いのために人間として転生しました」

「精霊知能リーベちゃんでーっす! 元々はこの世界を構築しているプログラムの一つでしたが、心と魂を獲得して今ではとっても愉快な精霊知能になりましたー! 邪悪なる思念を倒すために公平さんのサポートをしていましたが、今はバカンス中でーす!」

「は……はい〜っ! お目にかかれて光栄です〜! この世界をお護りくださり、まことにありがとうございます〜!!」

「えぇ……? いえあの、普通に接してください……」

 

 事情が筒抜けならと正体含めて名乗ったところ、えらく平伏されてしまって戸惑う。勘弁してくれ、俺もリーベもそんなリアクションはほしくないんです。

 彼女に近づき肩をやんわり掴んで、ソファに座ってもらう。予想はしてたけど話が進まないんだよね、そういう風にされちゃうと。

 

 微妙な心地で彼女の顔を覗き込む。

 頬を紅潮させたアメさんの色気がやばい、これで中身は天然おっとりポンコツお姉さんなんだからさぞかしモテるんだろうなーって感じつつも、俺はゆっくりと語りかけた。

 

「どうか普通に接してください。俺達の事情は俺達だけのことであって、現世の人達に傅かれるような話であってはいけないんです」

「ミッチーやモッチーみたいな、山形公平という人間個人を救世主として信仰するところから始まってるなら話は別かもですけどー、システム側への理解ありきでの信仰は正直、トラブルの元なのでご遠慮いただければ幸いなんですよねー」

「俺個人への信仰ってのもちょっとアレなんだけど……」

 

 そもそもそんな極端なのめり込み自体あんまりよくないんじゃないかなあ、と思わなくもないんだけどこればっかりは個人の自由だからね。

 少なくとも人に危害を加えるでなければ俺からは何も言えない。これは香苗さんに対しても宥さんに対してもそうだから、アメさんに対してもそう対応することになる。

 

 でもできれば、何もかもを知る前のように精々先輩扱いって程度でお願いしたいなあ。

 使徒になった時点でもはや叶わぬ願いなんだけど切に祈る俺の目の前で、彼女は力強くリーベに頷き、応えた。

 

「はっ、はい! 分かりました! 私も救世主様として先生を信仰いたします!」

「いや、それもそのっ……ぬう、あの、ほ、程々でお願いします……」

 

 ほらやっぱり! 信仰って断言しちゃってるもの!

 完全に使徒化してしまっているアメさんを、もはや遠い彼方へ逝ってしまった人を見るように遠い目をしながらも、それでも俺は本題に入った。

 

「ええと、それじゃあ早速なんですが……喚び出していただけますか? 始原の4体、ネムレス、ノナメ、ムメ、ゴンベを」




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