攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ネームレス─勇気ある者のための剣─

 現れた武器、それはネムレス。

 さっきまで犬だった概念存在が一旦己の領域に還り、そこからスキルの力によって武器化して降臨したのだ──言うなれば名称は武器化ネムレスってところか。

 ずいぶんな丈の剣を象ったもんだけど、何か理由でもあるのか?

 

「チョコさんの背丈より大きいけど、意味とかあるのか、ネムレス」

『うむ。我ら4体で各々、チョコに振るわれるにあたり役割分担をしようと考えた結果である。我の場合は威力と攻撃範囲を意識して、リーチの長い刀身を模してみたのだ』

『チョコはスピード重視であるがパワーが足りない。そこを補うためのネムレス、大剣というわけだな』

「わ、私の戦闘スタイルのことまで意識してくれてるんだ……!」

 

 説明するネムレスとゴンベに、チョコさんが感動の声を漏らした。まさか概念存在が、ここまで自分のことを慮る形で武器化してくれるとは思いもしていなかったのだろう。

 やはり武器化して人間に振るわれる以上、せっかくなら適したモノになりたいということだろう。武器化自体がかのモノ達にとっては面白くないものなのだから、どうせやるならということなんだね。

 リーベと香苗さんが、しげしげと他の3体を見て話をする。

 

「となると、他の3体もそれぞれ別の形でチョコさんに適した武器なのでしょうか」

「でしょうねー。話を聞くにチョコちゃんが武器ならなんでもござれみたいですから、どういう形で来るのかはリーベちゃんにも読めませんけどー」

『うーん、まあ、そこはあとのお楽しみってことで! このダンジョンでおそらくは我ら全員のお披露目ができるだろうしね』

『我らなりにチョコの長所を伸ばす、あるいは短所を補う形で考案してきたモノばかりよ。どれをとっても現世最高級のポテンシャルを秘めてるから、それを引き出せるかは今後のあの子とアメ次第だけれどね』

 

 他の始原達、ノナメにムメにゴンベがどんな種類の武器になるのか。そこは気になるところだがたしかにあとのお楽しみではある。

 それぞれ"チョコさんのためになる"というテーマで考えてきているみたいだから滅多なものはないんだろう。始原の4体による、いわばチョコさんプロデュースってところかな?

 

 いずれにせよ今、目の前にある武器化ネムレスは相当な業物なのはたしかだ。

 何しろ放たれるオーラが違う。名剣、名刀の類をお目にかかったことはないけどこんな感じなのかもなってくらい、それそのものが放つ威圧感がすごい。

 

 魂の格を参照するタイプのスキルだとこいつら、こんなにも力を発揮できるんだな……

 顕現させるアメさんと、実際に使用するチョコさんがその力をどこまで発揮できるかは今後、彼女達の探査者人生がどんな風になっていくのかにも依るんだろうけど。すべて引き出せた暁にはS級探査者にも匹敵するんじゃないかと思わせるだけのポテンシャルは、たしかに秘めているように俺には思えた。

 

「チョコさん、それじゃあ早速お願いします」

『やるぞ、チョコ。我は鑑賞されるために顕現したのでなく、お前とともに戦場を駆けるために顕現したのだから』

「は、はい。よろしくお願いします! ──っ意外と軽い!?」

 

 ガムちゃんに促され、ネムレスにも励まされ、そして武器を手に取るチョコさん。見た目の重厚さに反してずいぶん軽いらしく、あっさりと持ち上げて軽く構えたりしていた。

 なるほど、チョコさんの長所であるスピードを殺さないように重量は軽めか。さすがに羽のような軽さとまではいかないにせよ、彼女が特に無理せず振るえているところからも彼女の筋力に合わせた重さに調整しているのが伺える。

 

 いくらか剣を振る。風切り音の鋭さと力強さが、否応なくチョコさんが武器の恩恵を受けてパワーアップしたことを告げてくる。

 いい感じだ。昂ぶった様子で、彼女はそのまま前に出た。彩雲三稜鏡でゴブリン達を拘束している香苗さんへと、力強く話しかける。

 

「これなら行けます──御堂さん、このままゴブリンと戦います!」

「分かりました、檻を解きますね。彩雲三稜鏡よ、戻れ!」

 

 気合十分なチョコさんに呼応して、香苗さんが彩雲三稜鏡を腕輪に戻した。途端、解放されたゴブリンがこちらに向かってくる。

 チョコさんはそれを──自身のスキル《俊足》も使用してのいきなりトップスピードで部屋に躍り出て、迎え撃った!

 

「行くよゴブリン!」

「ぐげげぎゃぎゃぎゃっ!?」

「《剣術》ブレイブブレイバー・ファストスラッシュ!!」

 

 元からスピード特化、おかし三人娘の切り込み隊長役を自負する彼女ならではの鋭い踏み込み、そして剣技。一気に加速してゴブリンに肉薄し、すれ違いざまに斬りつけるヒットアンドアウェイの技法だ。

 以前まであんな技は使ってなかった。関口くんから剣技を継承しているって聞いてたけど、あれがそうなんだろうか。ブレイブブレイバーなんていかにも勇者っぽいから、たぶんそうなんだろうな。

 

 一瞬でゴブリンに接近して切りつけ、一瞬で離脱する。軽く撫でるような斬撃だったが、一匹目の敵はそれだけで両断されて光の粒子になっていく。

 斬れ味はある程度わかってたけど、今の時点でもなかなかのもんだな。アメさんのレベルが高くなればさらに鋭さを増すんだろうけど、今はこのくらいでも十分だ。

 

「ギギギギャっ!?」

「ブレイブブレイバー・ヘビースマッシュ!!」

「ギギャーッ!!」

 

 二匹目のゴブリンが襲いかかるのを、スピードで翻弄せずチョコさんはあえてその場にて迎え撃つ。

 腰を落として足を据えて、頭上高くに振り上げた武器化ネムレスを──技名とともに一息に振り抜く!

 斬撃のスピードも相当だ、ネムレスの刀身のリーチもあり、相手の攻撃範囲外からでも致命傷を放つことができた。威力特化の大斬撃に、なすすべもなく二匹目が消えていく。

 

 戦闘終了だ。なんら危なげない、余裕の圧勝。

 チョコさんと武器化ネムレスのコンビは、問題なく初戦を完全勝利で終えた。




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