攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
剣、槍ときてのまさかのガントレット。チョコさんの両手から前腕部を覆う白銀の輝きを放つ武器化ムメの姿は、ネムレス、ノナメとは一風変わったものだった。
たしかに拡大解釈によってはガントレットも武器とできなくもないし、実際殴打用の武器のつもりでいるみたいだから問題ないんだけれど……こう来たかーって感心しちゃったよ、思わず。
『ネムレスやノナメと異なりしっかりと防御のことまで考えた我! いやーできる概念存在はやっぱりこのくらいじゃなきゃだよね! これは今後の《武装化顕現》使用率一位をマークしちゃうかな? かーっ、参っちゃうね我ったら、かーっ!』
「滅茶苦茶調子に乗ってますねー……」
「ムメが一番図に乗りやすいタイプだしなあ……」
両手に装着したガントレットから声が出る。あからさまに高揚した、はしゃぎまくってる感じのお調子者の声だ。
ネムレスやノナメ、そしてまだ武器化した姿を見せていないゴンベを差し置いて自分こそが一番《武装化顕現》の指名を受ける──すなわちアメさんやチョコさんの力になれると豪語している。
俺知ってるよ、それフラグってやつだ。なんだかんだ結局全員均等な塩梅に落ち着くか、あるいはムメだけあんまり使われない結果になりそう。
実際、至近距離で殴り合いをする武器ってのは一つくらいあっても良いんだが、チョコさんの普段遣いの武器が剣なのを考えると率先してショートレンジで仕掛けていく理由が特にないからなあ。
見ればアメさんの隣に佇む5歳児、ゴンベが呆れたようにチョコさんに装着したムメを見ている。その見た目でその目してるのかなりシュールだぞお前、怖ぁ……
やれやれと首を振り、そしてゴンベはアメさんへ話しかけた。
『アメよ。アレはああ言って調子づいているが、基本的にはネムレスやノナメと組み合わせることで使い物になる代物だ。実質、あの姿は完全な防御用途の姿と言っていい』
「そ、そうなのですか?」
『チョコの間合いはどう考えてもミドルレンジ、剣や槍を用いて成立する距離感が彼女の基本だ。相手の懐に飛び込みショートレンジで殴り合いなど、これまでに見たことがあったか?』
「い、いえ。チョコちゃんこれまで、剣を使っていましたから」
普段のチョコさんを思い返しつつアメさんが言う。なぜか俺にひっついてるガムちゃんも、追従するように、それに頷いた。
ごく普通のロングソードを用いていたチョコさんはたしかに、ミドルレンジを得意とする探査者と言える。さっきもネムレスやノナメ使用時、いつもより伸びた攻撃範囲に対して距離感を掴みにくそうにしてたしね。
それでもそれなりに使いこなせていたのはチョコさんの才能、素質だ。今後も《武装化顕現》による強化を受けて戦う中でさらに開花し、やがては武器化した始原の4体達の力を完全に引き出せるようになるかもだけど、だからっていきなりは無理だよね。
そこを踏まえ、ゴンベは続けて言う。
『ミドルレンジ主体の者にショートレンジで戦う機会など滅多にないと言っていい。そうでなくともチョコはスピードファイターだ、足を止めずに動き回っての立ち回りこそが本領。となればボクシングでもあるまいに、わざわざ殴打という選択肢を取る必要はない』
「えっ……そ、そのことをムメ様は」
『普段ならばさすがに気づく。が、今回ばかりはな……見れば分かろう。浮かれ過ぎだ』
「あっ……」
スピード重視、常に動いて撹乱しながら攻撃するスタイルと自身を敵の間合いに入れることを想定しなければならないインファイトスタイルと。正直あまり噛み合せが良いようには思えない。
仮にも始原概念たるムメがそんなことにも気づけないのは、やはりゴンベの言うように浮かれてしまっているんだろう。今だってなんか、コボルト相手に構えるチョコさんを置いてきぼりにイキりまくってるし。
『はっはっはははは! 我がこの姿になったからにはチョコに、ひいてはアメに万に一つも心配事はない!! 何故かって? 攻防一体の究極たるこの武器化ムメ様に、砕けぬものはないし砕いてくるものもないからだよ! 少なくともモンスターではね!!』
「ウウゥゥウウッ!?」
「突っ込んでいっての殴り合いなんて初めてだよ……ま、やるだけやるかあ!!」
モンスター相手なら最強無敵、と微妙に範囲を設けての大口を叩いている。さすがにS級や俺みたいなのを相手にすると武器化したとてヤバいって判断してるんだろうな。
それはそうなんだがそこはせっかくだし誰相手でも勝つ! くらいのことはチョコさんのためにも言ってほしかったかもなあ。いやまあ、おかし三人娘がモンスター以外と戦う機会なんて早々、ないだろうけど。
さておき、不安を隠せない様子でチョコさんはコボルトに突撃した。今回はショートレンジだ、いつも以上に踏み込み加速する!
コボルトも鋭い爪を立て、袈裟懸けに腕を振るってチョコさんへと襲いかかる。早くもないし強くもないが、さりとて当たれば擦り傷くらいは受けるだろう。
「ワォォォウウウウウ!!」
「なんのっ!!」
そんな攻撃をチョコさんは左腕で受け止めた。ガントレットのある前腕部にてガードしたのだ。
甲高い音を立てる、束の間チョコさんは攻撃をも繰り出していた。攻撃を受けると同時に両足でしっかりと地面を踏みしめ、腰を深く落とした。
そうなるとチョコさんよりも二回りは小柄なコボルトと、自然と目線が合うことになる──右腕は腰に添え、正拳の握りをしている!
「でやぁあっ!!」
「グァッ!?」
そして爪先を軸にして身体全体をバネにして右腕を放つ、しなやかでかつ強力な正拳突き。
恵まれた肉体的素質によるパンチは敵の腹を突き、コボルトを数メートルほど吹き飛ばしていた。
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