攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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おかし三人娘が有名になれば、自動的にシャイニング山形も有名になる。これぞ永久機関!

「接近しての殴り合いを、足を活かして行うのなら!」

「グロォァ!?」

 

 正拳突きで軽く吹き飛ばした、コボルトは苦悶で顔を歪めてそれでもどうにか立っている。さすがに拳での殴打なんてあんまり経験がないからだろう、ネムレスやノナメを使った時より威力は低い。

 だがその分、チョコさんはスピードで翻弄するつもりでいるみたいだ。息もつかせず踏み込み、レベル帯にしてはかなりの速度で敵に肉薄する。

 

 おかし三人娘の切り込み隊長なだけはある、迷いも油断もない突風のような勢いだ。だけどそれだけでなく、フェイントを仕掛けつつ側面に回り込むクレバーさも併せ持っている。

 

「威力が低いなら、手数で稼ぐ!!」

「グォルァルァルァッ!? グルェ! グルォッ!?」

 

 先程の正拳突きで、慣れない攻撃に威力は乗せられないと悟ったんだろう。チョコさんの近接スタイルが明らかに変化した。

 パワーからスピード、威力から手数の多さへと移行したのだ──矢継ぎ早に左ジャブを仕掛ける。チクチクと細かく刺すイメージの攻撃の連打。

 

 当然、コボルトも反撃しようと腕を高く振るうもそれこそ狙い目だ。即座に軽やかなステップで側面から背後に回り込み、身体中に武器化ムメで殴りかかっていく。

 あっ、後頭部にストレート。もしも人間相手だったら普通に殺人もののパンチだ。痛そう。

 

「ショートレンジでも割と、動けてるなあ」

「チョコさんの戦闘センス、マジでおかしいですからね。今でもたまに出る突撃癖さえ制御できれば、同世代……あっ。"シャイニング世代"でしたっけー? でもトップクラス狙えるんじゃないのかって感じしてますよ」

「まだあるんだね、あの癖……あとシャイニング世代は止めて?」

 

 小悪魔ガムちゃんがニヒヒヒと笑う。怖ぁ……マジで浸透してるのか、シャイニング世代……

 それはともかくチョコさんの戦闘センスについてはもはや疑う余地もない。単純な戦闘力って意味での伸びしろで言えば、本当に同世代の探査者の中でもトップクラスかもしれない。

 

 概念存在に愛される魅力を持つアメさんに、戦闘センスがずば抜けているチョコさん。そしてその二人を指揮しつつサポートし、うまく勝利への流れを組み立てるガムちゃん。

 この三人、たぶん有名になるんだろうな。そんな予感がする。見た目もいいし個性豊かで何より強くて見映えするしなあ。

 俺はニッコリ笑ってガムちゃんの頭を撫でつつ言った。

 

「"おかし三人娘世代"ってそのうち呼ばれるようになるだろうから頑張ってほしい。応援してるよ」

「いやシャイニング世代ですし。何逃げようとしてんすかパイセーン、逃しませんよパイセーン。私達が有名になるのは当然にしても同時にパイセンも有名になるんすよパイセーン」

「いやなんで!?」

「とうとうチョコさんの強化にまで協力してくれた、事実上おかし三人娘の戦闘スタイルを完全に示してくれた師匠が何言ってるんですかパイセーン。っていうかアメさんがあんなことになってる以上責任は取ってもらいますよパイセーン」

 

 責任ってなんだよ俺なんもやってねーよ、それは伝道師に抗議するべき案件だろ!

 言いたくもなるけど、頭に乗せた俺の手に自分の手を重ねて嬉しそうに笑うガムちゃんを見てるとなんだかもう、諦めにも似た感情が湧いてくるよ。

 

 誰か、シャイニング世代なんてアレな呼び方を更新してくれる人はいないだろうか?

 世代の私物化を防ぎたくて仕方のない俺である。

 

『良いぞチョコ、そこだ! ──いくんだ、アッパーカーット!!』

「よいっしょぉっ!!」

「キャイィィィィンッ!!」

 

 と、ぼやいているうちに戦闘もそろそろ終わる。チクチク刺すように殴っていたチョコさんが、渾身のアッパーを放ちコボルトの顎を強かに打ち上げたのだ。

 それまでに十分弱らされていたコボルトもこれには堪らずダウンし、光の粒子に変わっていく。

 

 ネムレスやノナメよりはさすがに時間がかかったが、それでも無傷での勝利だ。

 歓喜に震えた声色でムメがチョコさんを讃えた。

 

『よくやったよチョコ、見事な勝利だ!』

「ありがとうございます、ムメさん……やー、初めての殴り合いで慣れなくて、時間かかっちゃいました」

『これから慣れていけば良いんだよ、ハハハハ! 何しろ使い勝手抜群の我だからね! これから他3体にも大きく差を開けて君の力になることだろう!』

「あ、あはは! そう、かもですね!」

 

 滅茶苦茶浮かれて喜んでるムメだけど、チョコさんはちょっと苦笑いというか愛想笑いで応えているね。さすがに毎度殴り合いってのは勘弁かなあと、そう思っているのがありありと分かる困り顔だ。

 そりゃそうだ、スピード重視で間合いを取って斬りつけるタイプの人がなんで毎回至近距離での撃ち合いをしなきゃならんのか。

 

 まったくとは言わないにせよ、ネムレスやノナメに大きく差を開けて常用するってのはさすがにないんじゃないかと思うけどなあ。

 モンスターを倒し終えた部屋、チョコさんとムメに近寄っていく俺達。ゴンベが開口一番、呆れ顔で武器化した同胞へと告げた。

 

『ムメよ、お前の主な使用用途はネムレス、ノナメを使うにあたっての両手部分の保護だ。ナックルダスターとして使えなくもないがそれをメインにさせようとするな、弁えろ』

 

 当然といえば当然の指摘。というか普通に考えて、ガントレットってそれそのもので直接殴りつける用の武器じゃないと思うんだよ俺。

 始原の4体的にもやはり、ムメはネムレスやノナメと組み合わせての運用を想定しているみたいだしな。それをムメは自分だけ特別になりたくて、執拗にナックルダスターとしての運用を推しているってわけか。

 自重しろと言われて、ガントレットとなったままムメが反論する。

 

『えー!? なんだよゴンベ、今さっきの戦いぶり見たでしょ!? チョコは接近戦こそが輝くと思うんだよね、我!』

『そうだな、武器を用いてのミドルレンジでなら輝くな。良いからワガママを言うな、チョコの適正を最優先にするのが《武装化顕現》を、無理を言ってまで願った我らの責務だろう』

『う。それを言われると弱い……』

 

 しかして最優先事項は当然、武器化した始原達を実際に振るうチョコさんだ。そしてその彼女はミドルレンジを適正距離として、すでに自身のスタイルを確立させている。

 さっきみたいな殴り合いはあまり積極的にはしない、しても距離を詰められた時とかだろう。ムメもそれが分かっているから反論したんだろうが、ワガママという自覚もあったらしい。

 しょんぼりした声を出して、仕方ないとつぶやくのだった。




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