攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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リミッター解除は戦士の浪漫!でも後で叱られるから気をつけて!

 チョコさんの周囲に浮かぶ槍が一転、鋭い刃を敵に向け猛烈な勢いで襲いかかる。

 ノナメのアシストを受けつつ使用者の思念で動くそれら武器群は、ノーネームシューティングの名に違わないまさかの遠距離射撃を実現していた。

 

「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!?」

「ぴぎゃ、ぴきききき!」

 

 流星のように爆撃していく槍、総数6本。それぞれゴブリンとスライムを滅多刺しにする。

 これだけでゴブリン一体を残して他はすべて光の粒子と成り果てていった。残ったものも、辛うじて直撃を免れたというだけで腹を掠め、肉体が著しく損なわれているな。

 

 放っといてもじきに倒れるだろうし、実際光の粒子が微かにその体から出始めているけど──関係ないとばかりに槍は動き回りチョコさんの元に戻った。

 ノナメが叫ぶ。

 

『そこなモンスターには悪いけど、試し打ちはまだ終わってないのよ! ネムレス! 後は任せたわ!』

「えっ、えっ!?」

『任された! ここからは我の出番だ、チョコ!!』

「えええええっ!?」

 

 どうやら意図的に最後のゴブリンは瀕死に留めさせたみたいだ。ネムレスにバトンタッチを促した途端、剣が虹色に光りだす。

 6本の槍が剣の先端に、切っ先の延長になるように縦に連なった。すると槍ごと虹色の光が呑み込んで、やがて大きな、大きすぎる、10m近い長さの刀身を顕現させていったのだ!

 

 放たれる莫大なエネルギーは先程までの比じゃない。放つだけ放って、後は空気中に霧散するという無駄なリソースが多いとはいえその出力自体は異常なまでに大きなものだ。

 《武装化顕現》一つでここまでのことができるわけがない、となれば始原の4体側で手を加えているんだ。

 

 とんでもないことをするな、あいつら! 俺は驚きとともにリーベへと叫んだ。

 

「始原の4体、全員がエネルギーを放出してるぞ!? アメさんのスキル制御にもアシストかまして、擬似的にリミッターを解除してるんじゃないのか、あれ!」

「みたいですねー……! たぶん一つだけですけどリミッター外してますよアレ! F級の出していい威力じゃないですよ、アレー!?」

「うわわわわっ!? なんか出た、なんか伸びたァー!?」

 

 チョコさんだけじゃない、アメさんのスキル制御にもアシストを入れて、本来かかっているはずのリミッターによる出力制限──レベルキャップを一段階外したんだ。

 一気に長大な光の剣と化した武器化始原概念を、チョコさんが慌てて握りしめる。反動は未だなさそうだが、あんなの今の彼女だと持っているだけで体力を奪われていくぞ!

 

 幸いあの状態は普通に武器として使えるものだ、だったら残るゴブリンに叩き込んでやれば良い。

 明らかにどうしたらいいか分からず、それでもゴブリンへと向き直り野球のバッターのように武器を構えるチョコさん。彼女に俺はすぐさま伝えた。

 

「チョコさん! 攻撃してください、エネルギーの奔流は何かしらに直撃させれば止まります!」

『先に言われた!? ええいチョコよ、残り10秒だ! 今ならそこの位置からでも振れば届く、征け! お前の、新たなる最強奥義をかましてやるのだ!!』

「ッ──なんだか分かりませんけど、これが私の最強って言うんなら!!」

 

 先に言われた!? じゃないんだよ、こうなる前にあらかじめ言っておくべきなんだよ!

 後で叱るのが確定したネムレスもそう叫び、チョコさんは瞬間的に気持ちを切り替え覚悟を決めた。経緯や理屈はどうあれ、たしかに今から放つ技は彼女の、いいやおかし三人娘の持つ最大最強の切り札として扱われることになるだろう。

 

 腰を落として敵を見据える。ゴブリンは身体のあちこちを光の粒子としながらもなお、殺気を秘めた瞳でチョコさんを見ている。

 それに対して一切怯まない、一人前の探査者の目をしてチョコさんは剣を振るった。

 

「行くぞゴブリン、これで決める! 《剣技》オリジンブレイバー、奥義!!」

「ぐ──ぐげぎゃぎゃぎゃぎゃああああっ!!」

 

 関口くんの元々使っていた剣技、ブレイブブレイバーを武器化した始原概念に合わせて改変した、オリジンブレイバー。その奥義。

 せめて一矢報いようとしたのか向かってきたゴブリン、しかしてあまりに遠いその距離は最初から最後まで攻撃の射程範囲だ。

 

 決意を込めた大斬撃が、迸る虹色の光とともに振り下ろされる。

 成り立ての探査者としてはありえない威力と規模の攻撃威力。それはまさしく超常のモノとともに歩む者、概念存在と人間のコラボレーション!

 

「────ネームレスディバイド!!」

 

 その名もオリジンブレイバー・ネームレスディバイド!

 今後おかし三人娘の代名詞にもなりかねない、あまりにも派手かつ大規模な必殺技であった!

 

「ぐげ────」

 

 元より致命傷だったところにそんなものを受けてはひとたまりもない。ゴブリンはもはや断末魔の叫びさえ満足に発することなく攻撃を受けて塵となり、それはやがて光の粒子へと返還されていった。

 分かりきった勝利だけれど、とても意味のある勝利だ。この戦いをもっておかし三人娘は、極めて強力な切り札を手にしたのだからね。

 

「か、か、勝ったぁ〜!!」

「チョコちゃん、やったわね〜!!」

「大丈夫ですか、チョコさん!?」

 

 光の奔流が消え、時間制限も超過したことで始原概念達も領域へと帰っていった。残されて一人勝利を叫ぶチョコさんにアメさんとガムちゃんが駆け寄って抱きつく。

 麗しい光景だ……見た感じチョコさんへの反動ダメージもほとんどない。始原概念達がある程度肩代わりしたのか、その辺は丁寧だな、あいつら。

 

「まあ、それはそれとして普通に叱らなきゃいけないんだけどね……」

「やったことはともかくとして、使用者に対してなんら説明をしないままぶっつけ本番なのは論外ですからねー……」

「さすがに先輩探査者として、一応ながら武器があそこまで振り回してくるのは捨て置けませんね……」

 

 何がやりたかったのかはなんとなく見当がつくけど、そこに至るまでのやり方が滅茶苦茶にもほどがある。

 リーベも呆れてるし、さすがの香苗さんも伝道師として以前に探査者として苦言を呈しているほどだ。別に怒っちゃいないけど、それでも始原の4体には浮かれ過ぎだと言わなきゃいけないだろう。

 ため息を吐きつつも、俺達はしばらくおかし三人娘を眺めていた。




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