攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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親しい友人相手にもメールとかだと堅苦しくなる系男子(総勢2名)

 夏休みの自由研究でまとめる事柄について、あれこれ考えていくうちに図書館あたりで情報収集する必要があると思い至った俺ちゃん。

 特殊条件が絡むスキル群について、逆に知りすぎているからゆえにどこまで開示すればいいのか。あるいは虚偽を交えていけばいいのかの塩梅を確認するための資料として文献が必要だと考えたのだ。

 

 微妙に頓珍漢な目的での図書館利用な気はするけれど、迂闊に突っ込みすぎたことを記してしまうのも万が一の問題に繋がらないとも限らない。

 それを防ぐためのものなのでまあ、たまにはそういうのもありかなって思うね。

 

「図書館は県立のと市立のがあるけど、東クォーツ高校のすぐ近くにある県立のほうがなんとなく行きやすいかなー」

『空間転移ならすぐだしね。まあちゃっちゃとやりなよ、僕にとっては至極どうでもいい作業でしかないし』

 

 アルマの適当な相槌を聞きながらも予定を立てる。明日は先程ヴァールと約束した通り一日仕事なため、明後日辺りになるかな?

 東クォーツ高校周辺に行くのも久しぶりだな、ほぼ一ヶ月ぶりか。

 

 あそこのあたりは図書館とか美術館、埋蔵文化財調査センターや自然公園があったりと妙に文化施設が多い地区でもある。勉学に励む学生さんや文化的な趣味を持つ学生さんにとってはなかなか、住みよいところなんじゃないだろうか。

 もっとも、そもそもの立地が山の上って言っていいような丘の上にあるため、行くだけで一苦労ってのはあるんだけどね。俺だって登校時は駅とバスで概ね一時間かけてるわけだし。

 

 登下校時のことを思い出して若干憂鬱になる。別に嫌なわけじゃないんだけど、電車もバスも大体常に満員なんだよなあ。

 いっそ空間転移でも使うか? とついつい思っちゃうわけなんだけども、それもそれでなんとなく憚られるのも事実だ。

 

「あんまり権能とかでインチキしてると、普通に生きるってことを忘れちゃいそうだしなあ」

『ふん? ……ま、君に関しては特にね。現世とシステム、ヒトとコマンドプロンプトの狭間にいる以上、あまり浮世離れしていられないところもあるだろうし』

「それもあるし、単純に便利さに慣れきっちゃう感覚がどことなく嫌なんだよな。ただでさえ忘れがちな初心を、いよいよ意識することさえなくなりそうで」

 

 ちょくちょく因果操作で楽をしている俺だけど、あくまでちょくちょくの範囲だ。毎日毎時毎分毎秒そんなことをしているなら、それは山形公平というよりもはやコマンドプロンプトでしかない。

 現世においては俺は山形公平なんだ。だったら人間として、それなりに弁えた生き方をしていきたいとも思うからね。

 

 便利なものは便利に使えばいいんだけれど、それに溺れてしまっては仕方がないってことだ。

 この感覚はいつか、コマンドプロンプトとしてシステム領域へと還る時までずっと持っておきたいなあ。

 

「ま、登下校も学生生活の一部ってことで。青春青春」

「きゅうきゅう」

「……あ、そうだ。せっかくだし梨沙さん達も誘ってみるかな。一人くらい自由研究の目処が立ってない人もいるだろ」

 

 思い立ってスマホをポチポチ。グループチャットアプリを起動する。

 クラス全体用のグルチャでなく、梨沙さん、松田くん、木下さん、片岡くん、遠野さんのいつものグループ内でのみ運用しているほうのチャットを開く。完全に仲間内でやり取りする用だね。

 

 クラス全体のほうは言わずもがなこっちもそれなりにメッセージの頻度が高く、時折通知が山のように来ることがあって思わず通知非表示にしてしまったほどだ。

 陽キャパリピはそういう、通知爆撃とでも言うべき有様でも楽しんで受け止められるんだろうか? できるんだろうな、やっぱすごいわ陽キャの人達。

 割と本気で尊敬しながらもメッセージを打つ。

 

「えーと、自由研究するために明後日、県立図書館に行こうと思います。お暇な方、まだ自由研究やってないって方はぜひ一緒にいきましょう……っと。送信」

『仲間内でその固さはどう考えてもおかしいだろ』

「親しき仲にも礼儀ありって言うだろ」

 

 呆れた声のアルマに即答する。そもそも俺がいきなりはしゃいだテンションでメッセージなんか送ってみろ、空気が死ぬわ。

 さすがに《俺はメッセージを送ってないから空気は凍りついていない》などと因果操作をしたくはない。未来永劫の黒歴史だよそんなもん、想像するだけでも怖ぁ……

 

 と、即座に返信が来た! うわ嬉しい、既読スルーとかされたらちょっとビクビクしちゃいそうだったし助かるよ!

 松田くんと遠野さん、そして梨沙さんだ。口々に俺のメッセージに反応してくれている。

 

『相変わらず堅苦しいなあ。いいよ行こうぜー』

『いっきまーす!! よろしくね!!』

『もちろん行くよ公平くん! 自由研究、お手伝いだってしちゃうぜ〜?』

 

 上から松田くん、遠野さん、梨沙さんなわけだけど、みんな参加してくれるみたいだ。でも自由研究がまだですって人がいなさそうなんですけど、あれぇ?

 まさかみんなもう、宿題終わらせちゃってる系の夏ですかこれ? 俺だけですかこれぇ? ちょっぴり予想外の事態に焦る。

 

 いや、まだ木下さんと片岡くんが残ってる。どちらか一人でも自由研究してなかったらお仲間さんだ、俺は一人じゃあない。

 全員分の既読がついた。緊張の数分、さてどうなる。自分だけ宿題ができてないからって、わざわざ友人を呼びつけて図書館まで同行させるような厚かましいやつになってしまうのか俺は、どうなんだ!?

 

『自由研究終わってないし行くねー。梨沙センセーこっちもヘルププリーズ〜』

『俺も終わってませんので行きます。よろしくお願いします』

「よっしゃあーっ!!」

「きゅっきゅうーっ!!」

 

 思わずガッツポーズ、アイも真似して高らかに叫ぶ。

 いや喜ぶべきではないんだろうけど正直ね、胸は撫で下ろしちゃうよ。木下さんに片岡くん、両方ともまだ自由研究終わってなかった!

 

 はー、これで大義名分的なあれは確保できたね。

 ていうか片岡くんも大概、下手すると俺よりメッセージ堅苦しいよなー。

 ホッとしつつも俺は、早速集合予定日時をみんなと打ち合わせていくのだった。




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