攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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この頃の救世主様は瞑想にもすっかり慣れきったご様子で…

「父様! 父様ーっ!!」

「シャーリヒッタ!? ちょ、さすがに目立つから!」

「へへっ! 初めて父様にこうして触ってるぜ、嬉しいぜー!!」

 

 駆け寄ってくる少女。霊体ではなく肉体を得ているシャーリヒッタが俺を見るなり、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて走ってきた。

 そのまま抱きついてくるんだから、その場にいる人達の目を引いてしまって困る。見た目で言えば俺とそう変わらない、むしろ一つ二つくらいは年上にも見える容姿なんだから……父様呼びも含めてちょっと抑えめにしてほしいよね。

 

 というか、マジで受肉したんだな。申請してるってリーベが言ってたからそのうち現世に来るだろうとは思っていたけど、思っていたよりはるかに早い降臨である。

 これには当のリーベやヴァールも唖然として、俺に抱きつく擬似的な娘を見ていた。彼女達も知らなかったんだな、この子の受肉。

 

「ちょ、ちょっと待てシャーリヒッタ! 貴様いつの間に……!?」

「いくらなんでも早すぎますよー!? こっちに来るための手続きなんて、そんな一週間もかけずに済むような話じゃないでしょうー!」

「というかなんで香苗さんと一緒に来たんだ? こうして直に触れ合えるのは嬉しいけど、ちょっと落ち着いて一から話してくれないか。いろいろ混乱しちゃってるんだ」

 

 精霊知能姉妹はもちろんのこと、俺も仲間達も不思議に思ってシャーリヒッタを見る。どうしてこんな早くに、それも香苗さんと一緒に行動してたんだ?

 香苗さんも困ったように苦笑いしている。この人のこんな姿もなかなか珍しいぞ、普段は苦笑いさせる側の人なのにね、伝道師的な意味で。

 

 リーベと同じくらいの体格をしているシャーリヒッタは、そんな俺達の反応に嬉しそうにニヒヒと笑う。丸い瞳がいたずらに成功した子供のように細められ、野生児さながらの無垢で天然な笑みを浮かべる。

 うーん、見た目は完全に野生児美少女だ。正統派アイドル系に素直クール系ときてワイルド系とは、精霊知能も個性豊かだよなあ。

 

 変なところに感心していると、抱きついたままの彼女は向けられた質問に対し、まとめてこう返すのだった。

 

「サプラーイズ大成功ーってなァ! 父様、それに姉貴に妹よ、現世の仲間達も含めて説明するからとりあえず座るぜー!」

「ちょ、ちょい待て腕を引っ張るな、こけるから」

「やだ! 今日は一日父様に引っ付いて離れねーからなー!」

 

 腕にしがみついて、俺ごとロビーのソファに座るシャーリヒッタ。滅茶苦茶楽しそうなのは良いけどボリュームは抑えよう、下手すると機密に関わる話だしね。

 香苗さんもシャーリヒッタと逆側、俺を挟むようにして座る。二人とも密着してくるからものすごい柔らかい感触なんだけど、顔に出すと漏れなくセクハラ認定されそうな気がするので鋼の自制心で己を律する。

 

 瞑想、瞑想……一瞬だけ瞳を閉じて称号効果で気分をフラットに。最近だと慣れてきたから一秒あれば落ち着けるようになってきた。良いんだか悪いんだか。

 まあとにかく席につき一息つける。メンツは揃ったしこのまま取調室に行きたいところだけれど、その前にやはりシャーリヒッタについて聞かないとね。

 

 彼女もさすがに説明するとなると居住まいを正す。コホン、と咳払いを一つしてから、サプライズ受肉についての仔細が語られ始めた。

 

「えーっと。受肉申請自体は実のところ、アフツスト……精霊知能統括役の協力も得て最速で済ませたんだ。いわゆるゴリ押し、力業だなァ」

「アフツストだと? あの堅物が、事実上バカンスも同然だろうお前の受肉にそこまで協力したというのか?」

「おうよ、なんか滅茶苦茶協力的だったぜ。アイツも最近ちょっとずつ余裕が出てきたから、その辺結構話が分かるようになってきてるみたいだわ、意外だけどよォ」

「まあ、彼はそもそも精霊知能の味方ですからね、基本ー」

 

 精霊知能側のトップであり、システム領域全体においてもシャーリヒッタに並んで最上位の立ち位置にいる統括役、アフツスト。

 男性人格である彼はこれまで、精霊知能全体を指揮してワールドプロセッサによる各種世界運営のフォローを行ってきた。

 

 厳格な法の番人って感じの性格をしていて、精霊知能達からは微妙に融通の利かない面倒な上司扱いされていたところもあったという、若干気の毒な立ち位置の子だね。

 そんな彼だがシャーリヒッタの受肉に際しては、むしろ率先してスムーズに手続きを済ませられるよう力を尽くしてくれたそうな。

 

 邪悪なる思念を倒してセーフモードも解除されたからか、ずいぶんと余裕ができたみたいだ。

 遠巻きに観察していた私からしても意外に思える程度には、あの子も変わろうとしているみたいだった。

 

「オレとリーベは事実上、特別休暇みたいな形での受肉として扱われてるぜ。まあオレはいろいろ追加で仕事もあるし、リーベも探査者として頑張ってるみたいだからそこまで呑気な話でもねーだろうけどよ」

「それでここまで迅速な受肉が実現したのか……」

「なんならアフツストも受肉したがってたくらいさ。アイツからの言伝だぜ、父様──"そのうち一度帰還なさってください。システム領域においても、祝勝会というのは必要でしょう"ってさ。ワールドプロセッサも同意見みたいだぜー」

「こないだの称号効果はそれでか……」

 

 親元に帰省する直前にワールドプロセッサから与えられた称号効果、高次元領域への正規ルートでの進入許可証について得心が行く。

 要するにアレはワールドプロセッサのみならず精霊知能全員も含めた、システム領域全員からの催促状なんだね。祝勝会やりたいから一回帰ってこいっていう。

 うーん、帰らないわけにもいかなくなったな、これは。




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