攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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探査者なんてダッセーよなー!裏社会のほうが面白いよなー!

 倶楽部における二人目の幹部、翠川への質疑応答が始まった。まずは簡単な来歴の確認から行われている。

 

 この男はそもそも全探組への登録さえしていないという、正真正銘モグリの能力犯罪者だ。

 同じ幹部でも青樹さんはもちろんのこと、火野でさえ78年前にも遡るけど登録していた形跡はあるというのに、彼だけは一切のデータが存在していないのだ。

 

 大ダンジョン時代の闇、裏側にどっぷりと浸かってきた男。

 刑事さんは資料を読みながら、その半生を語った。

 

「──県立高校を中退し家を出奔。以後、裏社会で暴力組織に所属。おそらく高校中退のタイミングだな? お前がステータスを獲得し、能力者となったのは」

「正解正解ー。そうだよ、大体16歳の時分だったかなァ? 学校フケてぶらついてたらいきなり脳内に声が響いてよ。ステータスと称号と、スキル《振動》を獲得してたのさ」

 

 ケラケラ笑って肯定する。翠川の態度はいかにも不真面目極まりないけど、それでもそれなりに質疑に答えるつもりではいるみたいだ。

 16歳……俺とそう変わらない歳で能力者になったんだな、彼は。そしてそれを機に家を飛び出し、そのまま裏社会の犯罪組織に身を寄せた、と。見習いたくない行動力だ。

 

 言ってしまうと、一体何を考えてそんな行動に出たの? という感想が真っ先に来ちゃうよ。

 能力者になった以上は普通、すぐさま全探組に登録して探査者になるってのが大ダンジョン時代のスタンダードだっていうのに。それを完全に無視して翠川は裏社会へと打って出た。

 家族さえ捨てて、学校さえ捨てて反社会的勢力に合流したんだ。

 

 正直理解できない。刑事さんもまた、その点について尋ねた。

 

「その時点で全探組に登録しに行かなかったのはなぜだ? 能力者になった時点で速やかに全探組に登録する義務が発生するのは、お前も知っていたはずだ」

「ハッ。誰がンなつまんねーことすっかよ。全探組入って品行方正な探査者サマとして一生費やすなんざゴメンだ、今も昔も変わらずな」

「……学校を退学し、家さえ飛び出して暴力組織に与した理由は? 不良少年だったようだが、家庭環境に何か問題が?」

「いんや別に? 家族は好きだぜ、今でもな。ただ、そっちのほうが楽しそうだったから俺は家を出たのさ。実際楽しかったぜ? 裏社会はいつだって能力者を求めてるんだ、そりゃもうチヤホヤされっぱなしよ!」

 

 えぇ……? 聞いていて思わず眉をひそめる。

 この男、楽しそうだからってだけで何もかも投げ捨てて犯罪者になることを選んだのか? 好きな家族も、学校の日々も何もかも捨てて、ただ楽しいからって理由で今まで裏社会で生きていたっていうのか。

 

 あまりにも短絡的な動機に絶句せざるを得ない。見れば仲間達も苦い顔をしたり、呆れ返った様子を見せている。

 特に葵さんは完全に白けた顔をしているね。鼻で笑い、見るからに侮蔑の眼差しでモニターを見ていた。

 

「クズですね、ただの。大した目的意識もなくただ楽しいから犯罪に走るって、火野以下じゃないですかこんなの。馬鹿馬鹿しい、さっさと実刑食らえば良いんですよ」

 

 怖ぁ……ガチトーンじゃん。

 火野以下ってのはどうだろう。それまでの所業を加味するとどうとも言い難いところはあるんだけれど、動機に限って言うならあの老人にも勝りかねないほどに短絡的な感じはするよね。

 

 ヴァールも困惑を隠せずにいる。WSO統括理事として築いてきたこの大ダンジョン時代において、裏社会にまで至ってしまった能力者の動機があまりにも軽薄だったことに、ある種のショックを受けているのかもしれなかった。

 

「享楽的な探査者もいるにはいるが、これはまた桁が違うな……逆に、それだけの動機でよく今までやってこれたものだ。裏社会の能力者など、大概の場合同じ穴の貉にぶつけられて潰し合いをする運命にあるというのに」

「長生きできる生き方じゃないですよねえ。何より人殺しをしなければならないわけですし、楽しさ目当てにそっち方面に行くなんてのはなかなか理解がしがたい……あーでも、バトルジャンキーらしいですからね、こいつ。それもスキルをぶつけ合いたいタイプの」

 

 変な話、よく今まで生きてこれたなって感心すらしている様子のヴァールにエリスさんが応える。同時に翠川のバックボーンについて語り、それにみんなが耳を傾ける。

 そうだよ、翠川は何がアレってバトルジャンキーなんだよ、それも法に引っかかるタイプの。具体的に言うと能力者との、スキルを使った殺し合いが大好きで堪らないタイプの人間なんだ。

 

 何しろ葵さんのフーロイータに腹を突き刺されてなお、自殺行為に近い反撃を試みてきたほどだ。

 あの時彼はたしかに叫んでいた。どうせ最後だからバトルを楽しませてくれ、と。そして自分から腹を裂き割るような真似をして、無理矢理決戦に持ち込んだんだ。

 

 当然、死に体の能力者など敵ではなくすぐに取り押さえたものの、その異常な振る舞いに俺もヴァールも葵さんも、不気味な感覚を覚えたのはたしかだ。

 シャーリヒッタが、なるほどなあと腕を組んで納得していた。

 

「オペレータ同士の力比べが好きって手合いか。探査者は人に向けて力を振るうのが原則、禁止されてるからなぁ。好きなことをしたいってんなら、そりゃそっち行くかァ」

「バトルジャンキーの受け皿になど、裏社会とてなるつもりもなかろうが、な」

 

 探査者は基本、品行方正が求められる。手にした力に対して正しい使い方を常に考え、その使命、責務に対して真摯に向き合うことが義務付けられているんだ。

 そうしたある種の清廉さを嫌う人も、そりゃ中にはいるんだろう。そして直接の動機はどうであれ、翠川もまたその一人だった。

 言ってしまえば彼が裏社会に流れた理由は、そういうことなのかもしれないね。




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