攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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バグスキル 増幅したら ただのバグ

 青樹さんの取り調べは火野や翠川と比べても格段にスムーズに、かつテキパキと進んでいた。

 前の二人も下手な隠し立てや抵抗をしなかったからすんなりいろいろ供述してくれていたけど、青樹さんはそれに加えて倶楽部内でもあまり、重要な情報を握っている立場じゃなかったみたいだからね。

 

 つまりはそもそも、聞くことが少ないというのが一番の理由なわけだ。

 そのため刑事さんもどちらかというと火野、翠川の供述を青樹さんに確認してもらう流れを作り、聞き取りを行っていた。

 

「ウラノスコーポレーションとは鬼島が主な交渉を行っていたと聞くが、他の幹部は誰も関わらなかったのか?」

「そこは間違いなく。ただ、一度だけ火野からの指示で翠川ともども、スキルブーストジェネレータの開発実験に参加したことがあります。2年ほど前でした」

「ウラノスに行って、実際に開発チームに協力したのか」

「はい。泊まり込みで半月ほど、私の《次元転移》、翠川の《座標変動》、そして火野の《玄武結界》についてそれぞれ、データを取りました」

 

 偽りの神の器に組み込まれていたスキルブーストジェネレータらしき機械の残骸。あれはやはり、ウラノスコーポレーションが倶楽部に技術供与した結果生み出されたもののようだな。

 三幹部のバグスキルのデータを取って解析し、取り込んで増幅させる──システム側にも近い行為だ。大した技術力だけれど、それを用いてやったことが悪事への加担では、なあ。

 

 この辺についてはシャーリヒッタが一番、頭にきているらしかった。

 ヴァールの隣で険しい顔をして、口元をへの字に歪めてモニターを睨んでいる。

 

「バグスキルを解析、増幅するなんてな。そもそものスキルブーストジェネレータテクノロジー、およびそれを用いた対モンスター用兵装AMWについちゃあ感心してたが、ここまでくるとちょいとやりすぎだぜ。なあ妹よ」

「誰が妹だ……言いたいことは分かる。バグスキルとはそもそもが起きるはずのないバグを起こした者へ与えられるものであり、起こしたバグをダウンサイジングして調節したものになる」

「それを増幅するってのはつまるところ、調節されていたバグスキルを元のバグへと戻す行為にほかならねえ。こないだの神の器、アレに体質として3種のバグスキルが組み込まれていたのも当然だ。要はスキルになる前の、フィックスされる前のバグに戻っちまってたんだからな」

 

 やり取りをするヴァールも負けず劣らずに深刻な表情をしている。ウラノスコーポレーションがバグスキルを増幅した行為の本質、その危険性を思い頭を悩ませているみたいだ。

 

 魔導系スキルや魔法系スキルを増幅させたところでシステム的にはすごいね! よく頑張ったね! という程度のものでしかないんだけれど……

 通常のスキルと違う特別なカテゴリに分類されるバグスキルを同じように増幅されてしまうのは、システム領域としてもかなり困った事態になりかねないんだよね。

 

 そもそも、バグスキルってのはその源流にあたるバグ──オペレータが偶発的に引き起こしてしまった、システム領域が想定していない挙動の総称──をフィックスした上で該当オペレータへの謝礼代わりに贈られる、バグをダウンサイジングしてスキルの形に落とし込んだものだ。

 つまりは劣化バグとでも言うべきか。それゆえ、バグスキルの効果は常に対応するバグをマイルドにしたものとなっているのだ。

 

 例えばそうだな……青樹さんの《次元転移》。

 アレとか本来のバグはおそらく、普通にシステム領域まで到達できちゃうタイプの現象だったはずだ。次元座標さえも制限なしに弄れるんだから、人間が到達しちゃいけないところにまで到達できてしまう能力だったのは間違いない。

 翠川の《座標変動》や火野の《玄武結界》なんかも、元になったバグは制限なしでそれこそ、偽りの神の器がそれぞれ使っていたものと大差なかったはずだ。

 

 そんなバグスキルを今回、ウラノスコーポレーションはスキルブーストジェネレータに組み込んで増幅させてしまった。

 劣化バグをスケールアップさせればそれはバグと変わりなくなる。そんなものを作り出して偽りの神の器に組み込んだのだから、システム側のシャーリヒッタが怒るのも無理からぬことではあるよね。

 

 明確にバグスキルを悪用している点では倶楽部と大差ない以上、システム側もウラノスコーポレーションに対してはなんらかのアクションを起こすかもしれない。

 まあ、そうなる前にまずはWSOから捜査の手が入るかな? 許す感じの空気を出してないヴァールをチラ見しつつ、俺は再度モニターに目を向ける。

 粗方取り調べも終わり、刑事さんが資料をまとめ終えていた。

 

「……ご苦労だった、取り調べは以上になる。今後も取り調べは行われつつ、刑事裁判も行われるのでそのつもりで」

「ありがとうございました……私の知る限りで捜査に協力し、また謹んで裁判を受け、生涯をかけて罪を償います」

 

 淡々とした今後の予定に、やはり無表情に青樹さんが頭を下げる。憑き物は堕ちたものの、やっぱり元気はないよな。

 香苗さんもそんな彼女を見て憂い顔だ。諸々呪縛から解かれたとはいえ、精神的にはまだまだ疲れ切っている師匠が心配なのは、当然のことだよね。

 

「香苗さん……また今度、青樹さんと面会しましょう。俺も一度、今の彼女と向き合ってお話ししたいですし」

「公平くん……そうですね。今の青樹さんなら、きっと落ち着いて話ができます」

 

 慰め半分、本音半分で提案する。青樹さんとはもう一度、話し合いたいとは思っていたことだ。

 少し笑ってうなずく香苗さん。かくして倶楽部三幹部への取り調べは、ひとまずこれで終わりを迎えたのだった。




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