【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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昼寝とあやとりと射撃が得意な彼は生まれた時代が悪かったと思う

 最初の階層についてはその後も香苗さんが、光魔導──さっきの虹の架け橋を出してそこから色々出す技だ──を使い、何の苦もなく敵を駆逐して終わった。

 強い。本当に強い。絶対に強い。ていうか何だあの虹、雑に派手で雑に強すぎん? 怖ぁ……

 

「私の《光魔導》は、虹を主体にしたスキルなんですよ。人によっては、そうですね……それこそレーザーとかビームとか、あるいは単純に眩しいだけですとか、様々ですが」

「同じ名前のスキルでも、ですか?」

「《魔導》系はそうですね。同じ名前でも使用者の、何でしょう素質? 的なものによって実際が変わるんですよ」

 

 とは、他ならぬ使用者である香苗さんの言葉だ。次の階層へと降りながら、今しがたの虹について説明してくれる。

 虹を主体と言っても、とんでもないパワーだ。虹ってこんなんだったっけ? ってなるよ、なった。

 

 放たれる光線がまず強いし、しかも色々な形状を模して放つものだから、応用性もある。

 何より香苗さん自身は動きに制限がかからないもんだから、発現した虹に好き放題バカスカ攻撃させながらも、別の手段で攻撃なり防御なり何でもできる。

 いや、ズルかよぉ。

 

「敵う気がしませんね、いやマジで」

「そうでしょうか? 別に公平くんとの戦闘を想定するわけではないのですが、格闘戦ではまずこちらに勝ち目はありません。それに遠距離攻撃もあるでしょう? 例の衝撃波。あれこそシングルアクションで放つことができる以上、私の虹にも負けず、強力ですよ」

「衝撃波……そう言えば山形くん、動画でそんなの出してたな。あれは確かに便利そうだったが」

 

 鈴山さんがそんなことを言ってくる。そうだこの人、香苗さんの救世主チャンネルを見てたんだった。

 てことは当然、ある程度は俺の探査を知っているってわけか。にしても衝撃波があの虹より強烈? ないない、見た目のインパクトからして段違いだわ。

 

「遠くから正拳を一つ出す、それだけの動作が必殺の威力を持っている。恐ろしい話ですよ、ええ」

「御堂ちゃんに限らず技術系スキルは、まずスキル名を宣言してから、さらに技名を告げる必要があるからね……無言の動作一つで同等の効果を得られるなら、たしかにそっちのが効率は良いさね」

「惜しむらくは肝心の、威力そのものがまだまだ低めということですが……それでもレベル200にもなってない身で、出せる技ではありません。自信を持つべきです、公平くん」

 

 単純なパワー面だけを考えていた俺だけど、今のやり取りはなるほどと唸らされる。

 技を放つまでのスピード、段取り。その辺も絡めるとたしかに、俺の衝撃波もそう、悪いものではないのか。というか、技術系スキルって音声認識なんだね。初めて知った……

 

 目から鱗を落としつつ次の階層へ。第二階層は鈴山さんが受け持つことになっている。

 彼の戦闘スタイルだが、なんと銃だ。いわゆるリボルバーを一丁、洒脱に手にして余裕げに部屋へと入る。

 

「ぎ──」

「遅い」

 

 途端、火を吹く銃口。ダダダ、と短くも鋭く連射される。

 3発。いずれもモンスター、二足歩行のサイこと通称サイマンの頭、胸、腰に正中線に沿って弾が打ち込まれた。

 早い。しかも普通の銃弾じゃないな、あれは。

 

「モンスターの素材でできた弾、ですか?」

「なんなら銃本体もね。弾同様にA級モンスター、コランダムバードから手に入れたコランダムで拵えてある。そうでもないと銃なんて、モンスターには通用しないからね」

 

 銃口から出る煙を吹いて鈴山さん。言っちゃ難だが穏やかな、ともすると地味ですらある見た目と裏腹に、ひどくワイルドな所作だ。ははーんさては、学生時代とかそこそこ突っ張ってたなこの人。

 しかしやはり、モンスターの素材を使っていたのか。それも弾丸だけでない、銃本体までときた。そりゃあ普通の銃とは違い、モンスターにも攻撃が通るわけだ。

 

 銃やら大砲と言った近代兵器の類は、どうしたことかモンスターには効果が薄い。まったく理屈が分かっていないが、傷は付くものの即死レベルのダメージには中々、至らないのだ。

 唯一、モンスターがドロップする素材の一つ、鉱石を用いた弾ならば通常の武器同様、攻撃として成立するらしかった。

 

 大ダンジョン時代開始から数十年が経過した頃に行われた実験では、何とマシンガンや大口径のバズーカ、パンツァーファウストを駆使してなお、精々E級までのモンスターしか倒せず、それ以上のモンスターにはほぼほぼ無傷というのだから驚きだ。

 

 ちなみに、同様の理屈は探査者にも当てはまる。高レベルの探査者ほど、銃を受けてもダメージが少なかったりする。

 単純に身体能力が一般人を遥かに超えるためというのもあるが、防御系のスキル保持者なんてもう、痕すら残らないんだからよくよく考えると恐ろしい話だよ。

 

「モンスターの素材を使えば銃でも通じるんですから、どういう理屈なんでしょうね」

「さあ? 一節には素材そのものが、モンスターへの特効効果を持つって説もあるけど、素材を使った槍やら剣はさして特殊な威力を発揮したわけでもない。不思議な話だよ」

 

 肩を竦めて、口振りとは裏腹に興味なさそうに鈴山さんは答えた。

 うーん、何というか、シブい。

 武器のチョイスに、少なくとも探査業においては少数派な銃を選ぶところもだけど、素っ気なくも淡々と銃を取り出し、発砲し、そして仕舞う一連の動作がさり気なさすぎる。

 こんな探査者もいるんだな……


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