攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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答えろよ、取り調べはすでに…『査問』に変わっているんだぜ

 少しして、取り調べの扉がノックされた。刑事さん達が鬼島を連れてやってきたんだ。

 ドアを開けて入ってくる厳しいスーツ姿の人達と、手錠をかけられたラッパー姿の男、鬼島。ふてぶてしい表情をしているけれど、そこには隠しきれない疲労の色が見て取れる。

 

 概念存在としての力を軒並み封じられて人間同然となったことで、精神的にかなりのダメージを受けたみたいだな。

 滲み出る憔悴のまま席につき、俺と向き合う。こちらを見る目にはたしかな憎悪と、それ以上の恐怖。

 心がへし折られているのだと、簡単に察せられる姿だった。

 

「それではチェーホワ理事、あとはよろしくお願いします」

「うむ、任せろ」

 

 刑事さん達に混じっていた郷田さんが、ヴァールと軽くやり取りして退室していく。刑事さん達も同様だ、去っていく。

 こと今回に限っては申しわけないけど警察の出番ではない。概念存在・赤鬼に対して問答を行うわけなのでこちらはシステム領域のモノとして話をするし、またやつは概念領域のモノとしてそれに応じる。

 

 つまりは現世の話ではないのだ。あまり聞かせたい内容でもない。そのためヴァールがこの場を整えるべく、郷田さんに掛け合ってくれていたんだ。

 鬼島への取り調べだけはWSOの管轄とする、機密に関わる話でもあるから警察は関与してくれるな、とね。そしてそれを受けて郷田さんも頷いてくださった、という話だった。

 

「……要するにここはもう現世に依らない空間ということになる。俺達はあなたを鬼島じゃなく赤鬼として質問するから、あなたのほうもそのつもりで答えてくれると助かる」

「…………」

 

 すでに今、この場所は現世にあって現世にあらず。システム領域による、概念存在への尋問の場なのだ。

 そう嘯くも鬼島の反応はない。憎悪と恐怖に交じって困惑と、あと警戒も見えるな。

 何度か口を開き言葉を発しようともしているみたいだけど、その度に思い留まるかのように口を閉じる。

 

 意外にシャイだったりするのかな? とも一瞬思ったが違うな、これは……

 なるほど、と俺は得心した。以前に妖怪そのものが結んだ誓いを、再度破却しないかと警戒しているんだな。

 落ち着かせるように笑みを浮かべて、俺は続けて語った。

 

「ちなみに妖怪が交わした、"今後、大ダンジョン時代に絡まない"という誓いについては今はもう関わりはない。当たり前だな、すでに誓いを破却してペナルティを受けた後なんだから。これ以上力を奪われることはないため、安心して受け答えしてほしい」

「というか答えないほうが、今の状況だとよろしくないかもですよー? 誓いについてはこの際置いといて、洗い浚い吐くのをおすすめしますねー赤鬼さんー」

 

 リーベも続けて忠告する。いつものノリよりはかなり静かで大人しい、お仕事モードだな。

 誓いの破却、それに伴うペナルティについては基本的には一回限りだ。その一回のペナルティが致命的だってのもあるし、二重処罰に該当しちゃうからね。意外とそういうことは気にするシステム側なのだ。

 

 俺達の言葉に、目を白黒させる鬼島。俺だけでなくリーベまでやたら詳しいことに戸惑っているみたいだな。

 これで話してくれると良いんだけどな──と思う矢先、シャーリヒッタが鼻を鳴らして鬼島へと告げた。

 どこか不機嫌そうに、低いトーンで唸るように声を上げる。

 

「悪ぃことは言わねえから素直になるのが一番だぜ……あとなァ、父様へのその憎悪を抑えろや三下が。誰にガンつけてんだテメェこらオイ」

「……………………っ!?」

 

 処刑人としての威圧、威厳をもって今や只人に過ぎない鬼島を圧倒する。シャーリヒッタは彼がひたすら俺に向け、憎悪を向けてきていることが気に入らないらしかった。

 気にしてくれるのは嬉しいけど脅かすなよ、怖ぁ……しかも言葉遣いが完全にチンピラさんだし。良くないよ?

 

 容易に自身を殺してしまえる存在だと、一瞬で理解したらしかった。鬼島は即座に気圧されて、その憎悪も忘れて恐怖のみが目に浮かぶ。身体も小刻みに震えて、完全に怯えてしまっているな。

 やりすぎだ。さすがに止めなきゃと思った途端、ヴァールがシャーリヒッタの肩を叩き、冷静に諌めた。

 

「落ち着けシャーリヒッタ。お前がカッカしてどうする」

「いやでもこのボケ、オレの父様にとんでもねぇ目ェしやがってよォ……」

「だからといって脅しつけてはいかん。余計に頑なになる可能性さえあるのだからな」

「わーってるよォ……すみません父様、下手な横槍を入れました」

 

 こういう時この子のクールさはちょうどいいよね、助かる。努めて冷静に、理性をもってシャーリヒッタを嗜めるヴァールは非常に理知的と言える。

 実際、それで彼女は落ち着いたしな。頭を下げて謝罪の言葉を述べるシャーリヒッタに、ドンマイと言って励ましてから俺は、再度鬼島へと告げるのだった。

 

「あー、恫喝するような形になって申しわけない。まあとにかく、取り調べに応じてくれると助かる。あなたも、いつまでも俺と面と向かっていたくないだろう? 素直に話してもらえればすぐに済むから」

「…………わか、った」

 

 ポツリ、と零す鬼島。もはや一刻も早くこの場を立ち去りたいのか、諦念混じりの焦燥さえ浮かぶ顔色だ。

 案の定だけど脅しになっちゃったなあ。後ろでバツが悪そうなシャーリヒッタを、リーベがやれやれってな感じで背中を軽くはたいている。

 

 取り調べ開始前からすでに一悶着あったけど、何はともあれ自発的に話してくれそうで助かるよ。無理強いはできなくもないけど、しないに越したことはないからね。

 さて、と本腰入れて、俺は質疑を開始した。




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