攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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Q.自分達の存在意義をかすめ取る奴らが出てきました。どうする? A.絶許

 大ダンジョン時代の到来──

 スキル、称号、レベルを獲得し、ダンジョンに潜りモンスターを倒すことで理論上、際限なく強くなれる探査者の登場により、概念領域には衝撃が走ったのだと鬼島は言った。

 

 すでに最高神をも凌駕する戦闘力を持つ存在さえもちらほら現れつつある昨今。

 今後数百年はダンジョンが、モンスターが絶えないだろうことを思えば、概念存在の危機感を鼻で笑うなんてとてもじゃないけどできないことではある。

 

 さらに言えばもうすでに、人間達の側からも概念存在への意識が変化し始めている。

 

 神はともかくとして悪魔、妖怪など超自然的な存在に対する畏れが薄まっていったのだ……これは相対的なものだな。

 より身近にモンスターという恐ろしい存在と、それに抗する探査者があちらこちらで活躍するようになったため、あるかどうかも分からない存在への畏怖が弱まったのだ。

 

「……今の、強くなった探査者達は。そしてそれを知った人間達は、あなた達を以前より絶対視しなくなった。それか、バランスが崩れたという発言の根幹は」

「そうだ。モンスターは我々以上に直接的、かつ理不尽的に現世に害を及ぼしている。そしてそれに対抗できる探査者は、人々から我々への畏敬を、悪魔や妖怪への畏怖を薄めるには十分に過ぎた」

 

 吐き捨てる鬼島。その瞳はいかにも忌々しげな色合いが強く、本気でダンジョンや探査者に対して憎悪を抱いているのが嫌でもわかるよ。

 つまるところ、これはシェアの問題だ。これまで人々が概念存在へと向けていた畏敬や尊崇、あるいは畏怖。そうした感情がダンジョンやモンスター、探査者のほうに著しく流れていったわけだな。

 

 こうなると概念存在としてはそりゃあ面白くはない。彼らの存在意義とはつまるところ現世の知的生命体、今で言えば人間達だ。

 彼らを脅かし、寄り添い、害し、護る。愛して損ね殺して益する。どこまでいっても人間に寄り添い、問いかけ、試し、成せれば愛し成せずとも愛するあり方──

 

 概念存在達自身はそんなつもりは一切なく、ただ自分達を差し置いて強くなったり畏敬を集めるモノ達に思うところはあるという認識なんだろうけど。

 その実、本人達にさえ関与できない存在の中核の部分では、本能的にこう思っているのだろう。

 

 

 すなわち──"なぜ私達を見ない/想わない"。"なぜ私達を敬わない/畏れない"。

 "なぜ私達を忘れようとしている/置いていこうとしている"。

 ……なんて、こんなところか。

 

 

「日夜各地に発生するダンジョンとはそれそのものが極小規模の災害に等しい。そこにあるだけで貴様ら人間を緊張させ恐怖させ、時に内より出づるモノどもは物理的な実害さえも伴うのだ。これが災害でなくばなんだ?」

「迷惑なのは、たしかにそうだな。極小規模の災害か、上手く言う」

「そしてそんな災害を、やり過ごすでも回避するでもなく真正面から立ち向かい打倒する探査者ども──まるで英雄と呼ばれる者達だ。もっともその強さたるや、過去に存在していたそうした人間どもの対抗者とは明確に一線を画するが、な」

「…………」

「分かるか? すり替わってしまったんだよ。我々と貴様らの関係が、ダンジョンと貴様らの関係に」

 

 皮肉ったらしく嘯く。鬼島はここに来てより明確に、探査者やダンジョン、モンスターへの怒りと憎しみを吐露していた。

 

 ダンジョンという災害、そこにあるモンスターという危機。そしてそれらに対抗して未来を切り拓く、探査者という人間達。

 なるほど、構図としては大ダンジョン時代以前の神話などに類型を見ることもできるかもしれない。

 

 俺はあんまり詳しくないんだけど、神話の上位存在とか伝説の妖怪とかってなんとなし、試練を与えたり害を成したりしては英雄達に乗り越えられたり、討たれたりしてるイメージあるしね。

 そうした構図が現代ではそっくりそのまま、ダンジョンやモンスターと探査者、人間って図に入れ替わってると概念存在は見ているわけだ。

 

「ふざけている! 神も悪魔も妖怪も関係なしに発生する伝説、神話など! 貴様らへの理不尽は我々の領分だ、誰の許可を得てあんな、出処も意味も分からん穴が乱発している!?」

「……概念存在側でも未だ、ダンジョンやモンスターについての把握はできていないのか」

「能力者以外に入れないのだ、把握などできてたまるか! ……各カテゴリの賢神、賢魔賢妖が集まり日夜ひたすら議論が交わされるのみだ。どこぞかの勢力の仕業なのか、あるいはまるで知らない未知の存在による侵攻なのか。よもや完全に自然現象でしかないのか。それさえも定かではない!」

「あー……つまりはあなた達は蚊帳の外ってわけですかー」

「それが一番許しがたい!! 我らを、概念存在を差し置いて!!」

 

 激昂して叫ぶ鬼島。俺はすかさず発光して気持ちを落ち着かせる。権能もないただの人間である今の彼には、リラックス効果が多少は見込めるはずだ。

 

 しかしこれで見えてきたぞ、概念存在の動機の根底。

 つまりは概念存在達の一部は、大ダンジョン時代において完全に脇役に置かれてしまっているからキレてるんだ。

 

 人間に試練を与えて苦しめるのも、乗り越えた者を言祝ぎ愛するのも自分達だけだと自負しているからこそ──その役割を奪い、自分達に取って代わってしまったダンジョンや、その結果活躍している探査者に対して怒りを抱いているんだな、これは。




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