攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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スーパー探査者大戦はーじまーるのー?

 アンドヴァリの目的に乗じる形で、自分達のなんらかの野望を果たすための手段を確立させようとしていた。

 委員会が今回の一連の騒動で画策していたこととは、つまるところこういうことになる。

 

 すなわちダンジョンコアの加工、それに伴うスレイブコアの製造技術。加えてバグモンスターの発生法に、あるいは神の器の製造法まで含まれるかもしれない。

 倶楽部がモンスターハザードを引き起こそうとしたのも、アンドヴァリの要請に応じて偽りの神の器を作ったのも……翻っては委員会が自分達の手札を増やすために行った、いわば実験のようなものに過ぎなかったのだ。

 

「ここまで大掛かりなことをして、委員会の本命は一体なんだというのだ……現世と概念領域のバランスを改変し掌中に収めたいのは分かるが、一体それらの技術を使って具体的に何をするつもりでいるのだ」

「俺にもそれは分からん。役員でもなければ所詮は妖怪カテゴリの中の、一尖兵に過ぎないからな。だが相応のことは考えているだろうことは予想できる。それこそ現世をひっくり返すくらいのことはな」

 

 ヴァールの問いにもどこか力なく答える鬼島。彼自身はすっかり心が折れているようだが、委員会に関わる多くの概念存在達は当然、やる気満々なんだろうな。

 倶楽部のノウハウもすでに把握しちゃってるだろうし、連中の目指す"正しい概念存在と人間の関係性"に向けて、一段と準備を整えているってわけか。

 

 これ、今首都圏で起きている問題とはあまり関係なさそうなのが厄介だよなあ……複雑になってきた事態を思い、少しばかり考える。

 委員会にとっておそらくはもう、ダンジョン聖教過激派の動きなんてどうでもいい話でしかないだろう。うまい汁はまんまと吸い終えられたわけだし、サークルだって引き上げても良いくらいには考えてそうだ。

 そうなると、少なくとも首都圏の騒動についてはこれ以上の横槍は入らなさそうだし、そこは良いことなのかもね。

 

 あとは鬼島の言う通り、俺個人に狙いを定めてきての天罰執行とやらが行われた時の対処次第かなあ。

 どれだけのことを仕掛けてくるかも分からないし、ひとまず織田に話を聞いてからの考えにはなるんだけど……一応いつ何が起きても対処できるように備えはしときたいところだね。

 

 さしあたり現世において権力的な意味で誰よりも頼りになる存在、ヴァールを見る。彼女も当然のように視線を受け止めて、力強く頷いてくれた。

 

「首都圏は首都圏で騒動を収めなければならんが、今度は山形公平、あなたやあなたの周辺を狙って騒動が起きる可能性もある……だが任せてくれ。もはや我々も総力戦とて辞さぬ構えだ」

「ああ、頼りにして……総力戦? 何が?」

「世界に数多いる能力者犯罪捜査官を、可能な限り集めて委員会なる不逞の輩どもに対抗する。無論、あなたの周辺の護衛も強化しよう……手透きのS級にも依頼する。狼藉に次ぐ狼藉、挙げ句にあなたへの天罰を示唆するなど、そろそろワタシも腹に据えかねていてな」

「!?」

 

 思っていたより遥かに強気、と言うかものすごい対応策を示してきた。無表情ながら纏う空気が、恐ろしいほどの怒りの色に染まっている。

 鬼島をジロリと睨みつけながらそんなことを言うもんだから、彼もすっかり身を強張らせて怯えてしまっているよ、怖ぁ……でもありがたい。

 

 どうやら天下に名高いWSO統括理事の、本気の怒りを買ってしまったらしい委員会。

 ヴァールは鋭い視線から柔らかい視線に瞬時に切り替えて俺を見、軽く微笑んでみせた。安心させるよう、柔らかい声色で言ってくれる。

 

「目の前の不貞腐れている戯け者が他にもいるならそれはそれで構わん。あなたに仕掛けようと言うなら叩きのめして、逆にやつらの喉元にまで一気に食い込んでやる」

「お、おう」

「来るなら来い、だ。自分達が何に喧嘩を売ったのか思い知らせてくれる。骨の髄まで染み込む程にな……!」

 

 あーあー、委員会が虎の尾を踏んじゃったよこれ。

 仮に鬼島の物言いの通り、俺に天罰やらを下しに委員会の連中がやって来た場合……そのまま返り討ちにした上で本拠地を突き止めて、壊滅まで持ち込んでやろうって顔してるよこの子。

 

 そのために世界中のS級や能力者犯罪捜査官に声をかけるとなるとかなりの大事だ。

 現世と概念領域の戦い──もしも本当に勃発しちゃったら、システム領域も絡んで大ダンジョン時代始まって以来の大騒動になりかねないぞ。怖ぁ……

 

 目をつけられた身としては、護ってもらえそうでありがたいんだけどお騒がせして申しわけない気持ちにもなる。

 できれば鬼島の言うようなことが、起きないならそれに越したことはないよなーなんて考えていると鬼島がヴァールの言葉に反応した。

 怯えながらも犬歯を剥き出しにして、聞き捨てならない言葉に激昂したのだ。

 

「不貞腐れているだけ……だとォッ!?」

「人間に相手されなくなって寂しい、だから何もかもを滅茶苦茶にしてやる……それが不貞腐れているだけでなければなんだ? 愚痴を垂れるだけならばまだしも実際に行動に移したならば単なる馬鹿だ、それも底なしのな」

「貴様ッ!! 貴様に何が分かる!?」

「分かるものか。徒党を組んでまでやることが、駄々を捏ねるだけの連中のことなどな」

 

 冷たく吐き捨てるヴァール。

 その言葉の鋭さに、鬼島はただ歯噛みして憎しみの目を向けるばかりだった。




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