攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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別作品の方に投稿しちゃってました!
失礼しました!


誰が何をどれだけやらかしても初代ラスボスさんに比べれば塵芥なんだよなあ

 現世と概念領域の大戦争──っていうのはさすがに誇張が過ぎると思うけど。

 ともかく全面抗争の方向に舵を取るらしいヴァールが気炎を吐いたところで鬼島への取り調べは終了した。

 

 WSO統括理事が全身全霊をかけて委員会返り討ちにしてやるわ宣言をしたことで、虎の尾を踏んでしまったのを理解したか鬼島はさらに項垂れ、疲れ切った様子で留置所へと戻っていったのが印象的だ。

 

 そんなになるなら、俺に天罰とかどうとか言わなきゃ良かったのに。雉も鳴かずば撃たれまいとはこのことだ、南無。

 三途の川で見た赤鬼としての正体、恐ろしく雄々しく猛々しい姿が見る影もなくなった小さな背中を見送っていると、ヴァールがおもむろに俺の肩を叩き、心配そうに話しかけてきた。

 

「その、大丈夫かコマンドプロンプト。あなたを侮るわけでは決してないが、ああも敵意を剥き出しに、不穏な話を聞かされては少しばかりの不安もあるだろう。すまない、余計な発言を許してしまった」

「あ、いや……俺は気にしてないよ。ただ、そうだな。むしろお前が思い切ったことを言ったなって感じは受けたけど」

「能力者犯罪捜査官やS級の招集についてか? むしろ遅すぎたほどだとさえ思っているが」

 

 俺のメンタルを気遣ってくれる、クールな中にも暖かな優しさを秘めている子だ。嬉しくて微笑みつつ、しかし意外だったと心情を吐露する。

 世界のS級、並びに能力者犯罪捜査官をできる限り集めて委員会に相対する……なんて、事実上の総動員だ。自分ごとながらずいぶん大事になっちゃったなーって、ちょっぴりと不安が胸を過るよ。

 

 ただ、ヴァールとしてはこれでも遅きに失したと認識しているらしかった。

 自嘲気味に笑い、遠くを見て彼女は語る。

 

「もっと早く……アドミニストレータ計画のこともありなかなか難しかったかもしれないが、少なくとも倶楽部の騒ぎが始まったあたりでこうしておけば良かったと思うよ。いい加減やつらの下らない暗躍にもうんざりだ。挙げ句にあなたにまで危害を及ぼそうなどと」

「まあ、連中がここまで大掛かりな規模で動いていたなんてのは分からなかったわけですしー。仕方ないところもあるかもですよー?」

「そうだぞ、そんなに気にしすぎるなよ。これまでだっていろいろ助けてくれてるんだ、俺はお前に心から感謝してるよ、ヴァール」

 

 判断ミスをした、と思っているらしいヴァールにリーベがフォローを入れた。実際、彼女はその時点で打てる最善を尽くしてくれたと俺も思うんだけどなあ。

 そう思って労うと、曇りがちな顔はそのまま、けれど少しだけ救われたかのように彼女は頭を下げた。真面目だからこそ、ちょっとしたことが気になっちゃうんだろうなあ。

 

 少なくとも俺のことについてはそんな気にしなくていいって気持ちを込めて、肩に置かれた手を握る。

 それに応じて指を絡めて来る反応の意外さに内心ちょっぴりドキッとしてると、彼女は続けて言うのだった。

 

「それでもだ。今回やつらの動機や目的を聞き、心底から失望させられた分、余計に思う──100年もしつこくやらかしてきた理由が、幼稚な自己顕示欲、あるいは承認欲求によるなどと。あまつさえそんなことで、コマンドプロンプトの手を煩わせるなど許されることではない」

「ああそうだ、ゼッテーに赦せねぇ!! アイツら何があっても叩き潰してやるっ!!」

 

 シャーリヒッタが吼えた。途中からずっとブチギレていた彼女は今もブチギレ中で、肩で息をしながらも鬼島が出ていったあとの席を睨みつけている。

 怖ぁ……そのキレ具合にビックリだよ。リーベもヴァールも心なしか引いてる空気を出しているのも構わず、娘さんは激怒のままに続けて叫んだ。

 

「概念存在どもが、言うにこと欠いて天罰なんざよくほざきやがった!! 父様に、よりによって父様相手によくも、よくも……っ!!」

「し、シャーリヒッタ? お、落ち着いてくださいー?」

「落ち着けるかよっ!! これ以上まだ、まだ父様に負担をかけようってのか、あのクソども……!! 邪悪なる思念なんて究極の生ゴミを片付けて、ようやっと肩の荷を下ろしてくださった矢先にフザケやがって……っ!!」

 

 顔を真っ赤にした、怒髪天を衝くって表現がぴったり来るキレ方だ。

 500年かかった打倒、邪悪なる思念。それを終えた矢先のこの騒動に、俺のことを想ってここまで激怒してくれているらしかった。

 

 500年前から俺の存在に気づいていて、かつずっと黙って信じて待っていてくれたこの子からすれば、委員会達の存在や天罰宣言なんてのはまさしく天に唾するようなことなのかもしれない。

 正直俺としても、やっと全部終わって倶楽部なんて面倒ごとも一区切りついたのに、それが元で本格的にこっちに狙いをつけてくるのかー……ってうんざり感はちょっぴりだけ、あるもんな。

 

 

『誰が究極の生ゴミだ虫けらが!! 娘を自称する不審者羽虫が、何を偉そうにほざいているんだかなあ!! ファザコンも大概にしとけよ、実際には父娘でもないくせに倒錯しやがってド変態が!!』

 

 

 そして案の定というべきか脳内のアルマさんもよくビキビキしてらっしゃる。

 いやでも言われても仕方ないことしてきたろお前。委員会や倶楽部や概念存在がどれだけやらかそうが、お前のやったことの1兆分の1にも満たないんだからな!

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