攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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目指せ世界に根ざした信仰!救世の光をどうぞよろしくお願いします!!

 来たる首都圏での戦いを見据えての話もそろそろ、終わりが近くなってきた。

 金目当てなどと、どう考えても嘘でしかないサークルの動機についてはやはり、戦いの中で真なる目的を探っていくしかないという結論に至り。

 

 それを踏まえての今後の予定に関してが、ヴァールの口から語られる段になったのだ。

 

「約一週間後の8月25日、御堂香苗のS級探査者認定式が開催される。その前日の8月24日に我々は首都圏入りすることになるな」

「ちなみに私はさらにその前の日、23日には首都圏にいるように言われています。なんでも24日に政府関係者や全探組、WSOへの挨拶回りと実際の式のリハーサルをしなければならないそうでして」

「うわ、大変だねそれは……」

 

 俺達はともかくとして式の主役、S級として今般認定されるところである香苗さんは前もっての挨拶回りなど、やはり相当にお忙しいみたいだ。

 ていうか全探組やWSOは分かるけど政府関係者って、つまりその、総理大臣とかに挨拶するってことなんだろうな。

 怖ぁ……テレビニュースでよく見る人に会いに行くんだ、この人。

 

 エリスさんも同じS級としてか、気の毒そうな目を香苗さんに向けている。

 そう言えばこの人やマリーさん、ベナウィさんにサウダーデさんもそういうことしたのかな? お国のお偉いさんとご対面! みたいな。

 葵さんが気になったのか、直接師匠に尋ねていた。

 

「師匠も認定式とかってやったんですか? 時の政府に挨拶したりとか」

「ハッハッハー。するわけないじゃん、このエリスさんが。《不老》のこともあり表には出られないんだし、S級認定だってソフィアさん経由でひっそりと証だけもらったよ」

「あー……そう言えば、都市伝説も同然の、実在しないとされる幻のS級探査者でしたもんね師匠ってば。わざわざそんなことするはずないですもんね」

「エリスの場合は年齢や出身等、個人情報の類をいろいろと弄った上で証明書を交付しているからな。実のところ、存在そのものがWSOにとってあまり都合の良くない部分であるため、表に出るのは極力控えてもらっているのだ」

 

 なるほど……たしかに年を取らない以上、迂闊に人前に出るわけにはいかないもんな。

 そもそもそのせいでエリスさん、長い年月を裏社会で孤独に、一人ぼっちで過ごしてきたわけだし。

 

 本来ならばS級認定さえいらなかったんだろうけどそこはそれ、能力者犯罪捜査官としての仕事で必要だったみたいだからね。

 ずいぶん情報を改竄しているみたいだし、そこはWSOもそれなりに危ない橋を渡っているのかもしれない。

 まあ、すでに100歳オーバーの妖怪とまで言われている統括理事さんが、普通に各地で活動している時点で気にし過ぎなところはあるかもしれないんだけれど、センシティブな部分であることには間違いなかった。

 

「今回のような盛大な式は、俺も行った覚えはないな。ベナウィはどうだったか」

「大統領への挨拶くらいはしましたねえ。ただ国を挙げてのセレモニーなどとはなかなか……されたところで面倒なだけですしね」

「私も特にそういうのはなかったねえ。ああ、ただあれだ、60過ぎでいっぺん、王族方に招待されて祝していただいたことはあったか。マリアベール・フランソワ探査者歴50周年記念つってさ、ありゃさすがに光栄の極みだったねえ。ファファファ!」

 

 この場の他のS級さん達もそれぞれ、自分達のことを振り返って話す。

 サウダーデさんはともかくベナウィさん、マリーさんは香苗さん同様、国の偉い人達に招かれる経験はあるみたいだ。

 

 特にマリーさんの場合はS級になったタイミングではなく、探査者としての活動歴が50年を迎えられたことによる記念式典みたいだけどそれもそれで相当凄いよ。

 御本人もその式典を誇らしげに感じていらっしゃるようだし、なんていうか英雄的だよねこの人、やっぱり。

 俺にとってもいくつもの場面で助けてくださっている偉大な先輩の、伝説の一端に触れた心地がしてなんだか身が引き締まる思いだよ。

 

 さておき話を聞くにやはり、今回のようにS級になるってだけで国が全力でセレモニーを行うなんてのはなかなかない話らしい。

 ヴァールも苦笑いをこぼしつつ、香苗さんへと話しかけていた。

 

「この国はお前を除いて10人、S級探査者がいるがどれも風来坊気質のようで、なかなか問題児なのだそうだ。そこに来て比較的優等生気質な者がS級になるのだから、日本政府としても期待するところが大きいのだろう」

「風来坊……かもしれませんね。私も何人かの先達とお会いしたことがありますが、すさまじい実力を誇りつつもどこか社会と距離を置いた印象のある方々ばかりでした」

「S級ともなるとね、どうしたって浮いちまうところはあるんだよ香苗ちゃん。何しろ単純に強すぎて社会にそぐわないほどの存在感を醸し出しちまうわけだからさ」

 

 しみじみ語るマリーさん。S級として永らく活躍してきた彼女からしても、その立場は常に孤独と孤立、孤高がつきまとうものだったみたいだ。

 強すぎて社会にそぐわなくなる……実のところ俺も他人事じゃないっていうか、そもそも正体からして社会から半身、外側の領域に出ちゃってるところはあるからなあ。

 

 そのうち俺も孤独や孤立を抱えて厭世的になるのだろうか? いやでもボッチ気質は生まれつきだったしなあーと考えていると、もっとも、とマリーさんは続けて俺を見、柔らかく笑った。

 

「香苗ちゃんとか、絶対に遠からずS級になるだろう公平ちゃんなんかは元からして存在感がすさまじいし……たぶんそのへんの影響はないだろうさ」

「救世の光の信仰対象と伝道師って時点で存在感しかないからね、ハッハッハー。そぐわないって話ならすでにそぐわないよ、うん」

「そこはご心配なく。そぐわなければ馴染ませるだけですので。そう、遍く世に信仰の光を満ちさせることによってですね!」

「怖ぁ……」

 

 そういうところだよ。当然のように俺まで巻き込まれてるし!

 強気に笑う香苗さんは頼り甲斐があるけれど、これ本当に頼っていいんだろうかと一抹の不安もある俺ちゃんでした。




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