攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
電車に乗って一駅進み、そこでまた降りて乗り換える。隣県ルートを走る電車は湖西ルートのそれよりも本数が少ないけれど、それでも日に何本も走るからすぐに乗り込める感じだ。
町中を走る車輌。いわゆる路面電車ってやつで、駅を出てすぐにゆっくりと車道の真ん中、設置されたレールに沿って、信号待ちで並ぶ車のすぐ隣を通り抜けるのが窓から見えた。
「おお、なんともファンタスティック! 町中を走る電車とは、珍しいものを見せていただいていますね!」
「昔はむしろ路面電車こそが主流だったと聞くが、インフラ整備に伴い分離していったのだろうか。いやはや、新鮮な光景で素晴らしいな」
「ハッハッハー、写真撮ろーっと」
この近辺は初めて通るらしい皆様方には大変受けが良いようで、他の乗客さんの迷惑にならない程度にはしゃぎ、エリスさんに至ってはスマホで写真で外の風景を撮ったりしている。
かくいう俺も、そんなに頻繁にこの路線を使用するわけじゃないから新鮮さはあるよね。空いてる席に精霊知能三姉妹と座りつつ、横目で窓から外を見ていく。
「まあ、言ってもすぐに電車用の線路に入るんだけどさ。大通りを車と並走する電車って、なんか面白いよなあ」
「ですねー。帰りもこの路線を使うんですかー?」
「いや、どうだろ? ……大人組が酔い醒ましに、ちょっと歩こうってなるかもだし。そうなるといつものルートになるかもな」
「幹線鉄道か。まあ直帰するとなればそちらのほうが早くはあるな、我々の滞在先の位置関係的にも」
行きはこうしてローカル線でえっちらおっちらなんだけど、帰りについては正直分からん。
未成年な俺ちゃんとか、見た目的にどう考えても飲めないし飲んじゃダメだろう、なリーベにシャーリヒッタはともかくとして、他の方々はみんなお酒を飲むことが予想される。
で、そうなると宴の後はちょっと酔いを覚ましがてら歩くかー、ともなりそうな気もちょっぴりしていて。
比較的近場のローカル線よりちょっと遠回りして、幹線鉄道のほうに行く可能性もあるとは思うのだ。
市場のあたりからそっちの駅までは歩いて概ね一時間くらい。夜ともなれば市内を流れる川に沿って歩くだけだし、涼やかさを求めているうちに辿り着くだろう。
酔いを覚ますにはちょうどいい塩梅だしね。あるいは空間転移でサクッと帰る手もあるけど、それは時間が押してきた場合にしたいところかなー。
「とは言えその辺はやっぱり成り行き次第だろうけどさ。ほら、二次会三次会にもつれ込む可能性もあるんだし」
「いや、それはワタシがさせん。明日からさっそく諸々動き出すのだし、何よりマリアベールがいるのだ。下手に盛り上がられて往年の飲み方を披露されても困るからな」
「急に私を刺してきた!?」
「えぇ……?」
力強く二次会以降を否定するヴァール。その主な理由として挙げられたのは、仕事への障りもあるけどそれ以上にマリーさんの御身体を気遣ってのことみたいだ。
若い頃の暴飲が祟って肝臓が大変なことになっていたマリーさんだが、邪悪なる思念討伐の恩賞とも言うべき形でリーベによる治療を施され、今では寛解という形にまで持ち直されている。
無論、本格的な判断は母国に戻られてからお医者さんの判断を待つ必要があるんだけれど……今でも少量程度の飲酒であれば問題はないと、治療のアシスタントを務めたヴァールさえ太鼓判を押すほどに回復しているのだ。
だからこそ逆に、調子に乗って飲みすぎたりしないかってところを心配しているわけだね、ヴァールは。
以前には数回、ソフィアさんにさえ釘を差されているマリーさんの飲み方は本当にヤバいんだろう。リーベやシャーリヒッタともどもドン引きしつつ視線を向けていると、マリーさんは慌てて弁明を始めた。
「こ、こないだの宴会だって私ゃ節度を守って呑んでましたよ!? ちったぁ信用してほしいもんだね、いい歳こいてんだからこっちも!」
「こと酒絡みについてはお前の言うことは何一つ欠片ほども信用ならん。お前に呼ばれて参加したホームパーティー、ワタシにさえ強引に飲ませに来たことが過去何度あったことか……お前自身は素晴らしい人格を持ち頼りになる戦友だが、酒については話が別だ」
「う……そ、その節は大変なご迷惑を、ファファファ…………えー、まあそれはそれとして今日の酒場はね公平ちゃん! なんでも揚げ物が美味しい店らしいんだよ! ファファファ〜、楽しみだねえ!」
「誤魔化しになってねぇだろそれ、婆さん……」
怖ぁ……人間社会に不慣れなシャーリヒッタも思わずツッコむマリーさんの無理筋な話題転換。
ヴァールに割とガチ目なトーンで釘を差されているので、形勢は明らかに不利なんだから仕方ないよね。というかお前、マリーさんに飲まされたことが何度もあるのか。
自分一人で愉しむならともかく、他人を巻き込むのはそりゃあ言われても仕方ないよ。
俺まだ未成年で良かった。下手に成人してたら過去数限りなく呑み負けてきた人達の一人にカウントされかねないところだった。
しみじみ15歳少年であることを噛み締めていると、さらに続けて彼女が言ってくる。
「い、いつか公平ちゃんが大人になったらそん時にゃ改めて飲みに行こうねえ! ファファファ、私ゃその頃90手前か、生きてたらの話になるけどね、ファファファ〜」
「えぇ……? そこは元気にしといてくださいよ、マリーさん……」
「誤魔化すにしてももう少しとっつきやすい話題にしてくださいよおばーちゃんー……反応しにくいですってー」
たぶんあなたは100歳過ぎてもピンピンしてると思います。
そう思いながらも、なんとも返事に困る話を振られて困る俺とリーベだった。
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