攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いろんな意味で表沙汰にできない初代聖女様(96)

 無事に香苗さんや葵さんとも合流を果たすことができた俺達。頃合いもちょうどピッタシなので、そのまま件の店に入ることとなった。

 今回、予約を入れてくださったいわゆる幹事であるところの、葵さんが先頭に立って入っていく。

 

「ごめんくださーい。17時に予約入れてる、早瀬ですけどー」

「いらっしゃいませー! ……はい、早瀬様ですねお待ちしておりました、どうぞこちらへ!」

 

 入るなり割烹着の店員さんがすぐに対応してくれて、そのままスムーズに案内してもらえる。一階はカウンター席と座敷の席があるみたいだけど、俺達はそもそも階段を登って二階に連れて行かれた。

 そして個室の、掘りごたつ式の和室に通されたのである。一同靴を脱いで部屋に入り、順番に席について一息つける。

 

 柔らかくも温かみのあるクリーム色の光に照らされた室内は落ち着きがあり、店内には小さくBGMが流れていてそれもなんだろ、ヒーリング的って感じだ。

 こういうお店、初めてだからなんだか緊張するなあ。格式高いって感じがして。でも葵さん的にはまたちょっと違うみたいで、にこやかな笑顔とともに俺達へと言ってきた。

 

「一見さんお断りな日本料亭、みたいなところだと皆さん逆に落ち着かないかも? と思いまして。いわゆるチェーン店的な居酒屋よりかはお固い感じかもですけど、このくらいの塩梅がベストかなーって考えて予約してみました。どうです?」

「ハッハッハー、ここでも高級だなーってびっくりするレベルだよ……なんかさ。前から思ってたけど葵って意外とそういうお店詳しいよね」

「はっはっはー! 能力者犯罪捜査官としてはいろんな国のいろんな施設を利用したりしますから、飲食店に関しての情報収拾なんてのも基本中の基本ですよ師匠? たぶん師匠は例外中の例外ってことで、いろいろ免除されてるんだと思いますけど」

「えっ……そ、そうなんですかヴァールさん、マリー」

 

 基準というか物差しの違いと言うか……俺からしてみれば結構お高そうなお店って感じなんだけど、葵さんからするとまあそこそこってくらいのポジションらしい。

 日本料亭とは、たしかにそんなところにご案内されたら俺、ごはんどころじゃなくなっちゃいそうだ。パンピーにはあまりにレベルが高すぎて絶対落ち着かなかったと思うし、葵さんのご判断には敬服するしかない。

 

 ただ、それと同時に明かされた思わぬ事実にエリスさんが固まっちゃってるね。

 能力者犯罪捜査官っていう、世界を股にかけて犯罪能力者を追いかけるエージェントさんなんだからそういう情報や知識を持っておくなんて当たり前なんだろうけど、エリスさんだけはいろいろ免除されているのかもしれないのか。

 

 実年齢96歳。実力で言えば世界トップクラスでしかもダンジョン聖教が崇める初代聖女のS級探査者ってことで、特別扱いされているところがあったりするんだろう。

 ただ本人はまるで無頓着だったみたいでオロオロとヴァールやマリーさんを見ている。2人は当然、と言わんばかりの頷きが返ってきた。

 

「お前の場合は事情を知る者達の間で共通認識が持たれている──エリス・モリガナは捜査官にして捜査官にあらず。真に対処せねばならない犯罪に対してのみ行使される、一種の決戦装置たるべし、とな」

「先輩はそもそも身の上からして表沙汰にはしづらいですしねえ。普段は葵ちゃんとタッグで自由に動きつつ、有事の際にはWSOや国際探査裁判所における最大戦力として運用する、なんて方針で考えてるところはありますよ」

「さ、最大戦力って」

「実際、WSOが自由に動かせる中での最強戦力は紛れもなくお前だからな」

 

 シレッと言ってのけるヴァールに、初耳ですけどとエリスさんが唖然としている。マリーさんも苦笑いしつつも、なんなら速攻知らんぷりで弟子とメニューを吟味しだしていた。

 

 捜査官にして捜査官にあらず、真に対処すべき犯罪に対してのみ投入すべき、WSOの切札──それがエリスさんに期待されている本来の役割だなんて、もうちょっとドラマチックなタイミングで明かしても良いんじゃないかと思うんだよね。

 少なくとも上品ながら居酒屋でさあ今から宴会だ! って時にいきなり聞かされる話でもない気がするの。ほらエリスさん、情緒が破壊されてますみたいな奇妙な顔になってるし。

 

「し、ししし知らなかった……葵は? ねえ葵は知ってたのこれ?」

「いえー全然? でもまあ私が完全に補助者みたいになってますから、うっすらは分かってましたねー」

「うむ。葵はお前の弟子であることからも、そのへんに関しての補佐、サポート、支援役を期待されているな。まあお前達自身にはあまり関係のない話ゆえ、話すことでもなかったが」

「そ、そうなんですかー、ハッハッハー」

「はっはっはー! まあ知ってても知らなくても大して変化もないですしねー!」

 

 いろいろ発覚する新事実に、盛大に顔をひきつらせるエリスさん。

 まあ、実は自分に大きな役割が期待されていたとか、そのために上役がお膳立てまでしていたとか……俺自身がアドミニストレータだった経験からもすごく共感できるけど、なにそれ怖ぁってなるよね。

 

 葵さんが朗らかに笑って師匠の肩をバシバシ叩く。それに対してやがて苦笑いを浮かべ、エリスさんは今日は飲もうかなー、とつぶやくのだった。




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