誤字、脱字は気にせず雰囲気で読んでください。
昼下がり。
春とは思えない日差しが天から降り注いでは、海の照り返しで蒸し焼きなりそうな炎天気の下。ごっつい顔をした警察官が青年を睨みつけていた。
「お前が「民警」?冗談じゃない、穴の青いガキじゃねーか!」
毎回やらなきゃいけないのかこのやり取り、と。
ガンつけてくる警察官の態度に辟易しながらも青年ーー藤田陸斗は一応答える。
「ああ、俺が応援に呼ばれた民警だ。拳銃も携帯してるしライセンスもある。」
懐にしまってある拳銃を見せると、警察官は舌うちをする。
厳つい貌をしたまま陸斗を回りをぐるりと一周。
「その制服、学生かお前?」
「そうだが、何か問題があるのか。」
「で、それがお前のイニシエーターか?」
陸斗の隣に立つ少女を指差す。
「はい、葛城雫(かつらぎしずく)と言います。」
礼儀正しくペコリと少女が頭を下げた。
可愛い少女だ。
長い腰ほどまである漆黒のような黒髪を大きなリボンで頭の後ろで纏めた、いわゆるポニーテールの髪形。
フリルがふんだんに飾られた真っ白いワンピースに白い手袋。真っ白いな服装。
満面の笑みを浮かべ、ニコニコと微笑みでいる。
故に、彼女が両方の手で持っている自身の身長ほどある黒く長い機械式のガンソードは異質を放っていた。
警察官は二人の回りをじろじろと見つめ、
「こんな奴等に頼らなきゃいけねとはな、自分たちが情けなくなるよ。」
片をすくめて盛大なため息をつく。
民警が警察からよく思われてないことは知っている。だか慣れてはいるからといっても頭にはくる。
「文句があるなら俺たちは帰るぞ。こっちは社長に言われて来ただけなんだからな。」
「ったく、口だけは一人前だな。ライセンス見せろ」
陸斗が懐から出したライセンスを警察官は引ったくるように奪いとり眼をとおしていく。
写真うつり悪すぎだろ別人じゃねーか、と写真と陸斗の顔を交互に見て大き声で笑う。
「落ち着けよ、雫。」
ぎゅっと少女の手を強く握りしめる。
ニコニコと愛想笑いこそしていたが、今にも飛びかかりな怒気を放っていることに陸斗気づいていた。
「でも陸斗、あうっ。」
「いいから。」
警察官との間に体を割り込ませ、反対の手で雫の柔らかい髪をやさしい撫でていく。
「いいんだよ。写真映りが悪いのは事実だし、笑われるのは慣れっこだ。」
「……………はい。 」
渋々だが納得してくれた雫に、陸斗は感謝の思いを込めてさらに頭を撫でまわす。
「髪が乱れてしまいます」
と、口では文句を言いながらも、撫でられることじたいは嫌でないのか雫は体を陸斗に預けてくる。
「変わってるなお前ら。」
二人のやりとりを見ていた警察官は、ジト眼をしながは感想を漏らした。
「俺が視てきた多くの民警はイニシエーターを道具として扱っていた。あくまでもガストレアを倒す為だけにな。そこに互いにを思いやる気持ちなんてものはない。壊れたら捨てる、使い捨ての道具。」
「…………………。」
警察官の言いたい事はわかる。
陸斗も仕事で居合わせた同業者を何度もみたが、酷いものだった。少しの失敗で殴る蹴るのは当たり前、最悪なのは相方だけでガストレアと戦わせ、後ろから銃で撃ち抜く外道もいた。
「お前らは何でそんな風になれるんだ?」
警察官の質問に陸斗と雫はしばし、見つめあい。
「家族だからな。」
「家族だからです。」
陸斗と雫は同じタイミング、同じ答えをハッキリと口にした。
「同じ家に住んで、同じ釜の飯を食って、互いが互いを守りたい。そう思えたらもう家族だろ。」
陸斗は膝を折りまげ背丈を雫に合わせるとを、肩に手を回して引き寄せた。
そんな彼に雫も笑顔で頷く。
「本当に変わった奴だな、お前はら。」
濁りのない真っ直ぐな瞳をした二人に、警察官は顔を逸らしながら内心思う。
こんな民警もいるのか、と。
風間(かざま)だ、と名乗った警察官はライセンスを投げ返した。
「『天津風』民警会社警備会社ね。聞いたことのねぇ名前だな。」
「最近開業したばっかりだからな、知らないのは無理もない。で、場所はここで間違いないのか?」
陸斗は雫を離して立ち上がると、目の前に建つ倉庫を見上げた。海の潮風の影響で壁には腐食、破損、ひび割れこそ目立つが至って普通、何処にでもある倉庫である。
「ここに本当にガストレアがいるのか?」
「ああ、間違いない。昼休みが終わった従業員が見たらしい、デカイ犬のような生物が死体を中に引きずられていくのをな。それから誰も外に出ていないらしい。」
「なるほどね。」
風間の言葉に聞いた陸斗と雫は倉庫まで歩き出した。
「あんたはそこで待ってくれ、すぐに終わらせる」
「ああ、手早く頼むぞ」
「できればな」
倉庫の扉にたどり着くと、陸斗は雫にたずねる。
「中に何匹いるかわかるか?」
「任せてください。今、調べます」
陸斗の問いに雫は倉庫の扉に触れる。
瞳を閉じ、集中。数秒後、一瞬だけ彼女の周囲の空気が弾ける。
「二匹います。奥に一匹、手前左側コンテナの隅に一匹隠れています。」
「流石だな。なら、雫は出前の奴を殺れ、俺は奥にいる奴を殺す。」
「わかりました。」
頷いた雫は突撃槍を構え。
陸斗は懐から拳銃ーーデザートイーグルを抜くと、マガジンに弾が入っているか確認。
大きく深呼吸を数回繰り返して頭の中をクリアにする。
「いけるか?」
「はい、いつでも」
雫は黒色の瞳が真っ赤に染める。
さあ、狩り時間だ。
陸斗が手を上げて合図を送る。
「いくぞ!!!」
「はい!!」
掛け声と同時に、陸斗は右拳、雫は蹴りで扉を突き破る。
金属と木製のコンテナが山のように積まれている室内の奥、赤い瞳が輝く。
犬の因子のガストレアだ。ライオンほどの体格はあるガストレアがに座り込んでいた。
陸斗たちの侵入にガストレアは戦闘体勢をとり、牙を剥き出しにして唸り声をあげた。
陸斗は奥のガストレアに向かって疾走する。
「ガアッ!!」
途中、雫の言葉通りコンテナの影からもう一匹の犬型のガストレアが飛び出してきた。
唸り声をあげて大きな牙と爪で、陸斗に襲いかかる。
「やらせません」
黒線がはしった。
陸斗に迫ったガストレアの二本の前手が宙にまう。
割って入った雫の剣戟が横を一閃、切断した。
甲高い悲鳴をあげるガストレアに。
「うるさいです」
と、雫は吐き捨てながら、腹部に回し蹴りを叩き込む。
洗練された動きだ。
加速で得た運動エネルギーのすべてを一点に集中させた一撃。
轟音と共にガストレアの体が地面と水平に吹き飛ばされコンテナに衝突を繰り返し、壁の壁画とかしたのだ。
「やるようになったな」
「あなたのパートナーですから」
突撃槍を構えなし、トドメを刺す為に疾走する雫。その背を横目で見ながら、陸斗は感心した。
修業のおかげか動きに無駄がなくなり、雫はますます強くなっていく。
相棒の前でカッコ悪い姿は見せられないなーー陸斗は自身に言い聞かせ、もう一匹のガストレアに狙いを定め左手で引き金をひく。回避された。
四足歩行の犬型のガストレアだけあった動きは俊敏だ。
続けて発砲するが、三次元的な動きに翻弄され狙いが定まらない。
「チッ!!」
六発撃ったところで弾が切れる。
すかさず弾を込めようとするが、敵もそれを待っていたのかスピードをあげて肉薄する。
無数の鋭い牙がはやした口が大きく開かれ、陸斗の喉元に噛みつく。より速く、右拳がガストレアの顔面にめり込んだ。
陸斗は今だせる全力の力で殴り飛ばす。
ガストレアは何度もバウンドして壁に衝突してようやく止まる。
回復しない痛みに地面をのたうち回るガストレア、その頭部を足で踏みつける。
「死ね。」
動けないガストレアに向かって引き金をひく。
弾丸が肉を抉り、骨を砕き、内臓を破壊していく。はじめは凄い力で暴れていたが、次第に力は弱くなっていき、手足から力が抜けた。
死んだのだ。
「雫そっちはどうだ。」
ガストレアを蹴飛ばして、確実に死んだ事を確認しながら後ろを振り返る。
「こちらも終了(おわ)りました。」
肩に槍を担いだ雫がゆっくり歩いてくる。彼女の後ろには原形が分からないほどに破壊されたガストレアの亡骸。
陸斗は雫の上から下まで怪我がないのか確認してから、彼女の頭にそっと手をおいた。
「ようやくやってくれたな。えらいえらい。」
「あ、ありがとうございます。」
よしよしと頭を優しく撫でられた彼女は顔を真っ赤に染める。もし彼女に尻尾ついていれば切れてしまうかと心配する程に動いていただろう。
風間はじゃれあう二人に歩みよる。
陸斗は携帯で時間を確認すると、風間に敬礼をする。雫も慌てて敬礼した。
「二〇三一年、四月二十八日一六〇〇、イニシエーター葛城雫とプロモーター藤田陸斗。ガストレアを排除した。」
「しました。」
「ご苦労民警の諸君。」
現場の最高責任者として風間も敬礼、礼を返した。
その時、懐に入れてあった携帯が震える。
取り出した携帯のディスプレイに表示された名前を見て、陸斗は苦笑いかこぼした。
風間に携帯に出ていいか?とジェスチャーをすると、どうぞと返され、通話ボタンを押す。
『お兄さん仕事は終わった。まさかとは思うけど他所に盗られたわけじゃないよね?』
電話から聞こえてくる凛とした女性の声ーー社長の天津風楓(あまつかぜ かえで)だ。
いきなり疑われ、陸斗はため息をつく。
「んなことねぇよ。仕事なら今終わって、これから帰るところだ。」
『うんうん、流石だね。ならもう少しぐらい働けるよね。』
「はっ?」
放たれた楓の言葉に陸斗は間の抜けた声をあげる。
『仕事だよお兄さん。場所は『グランド・タナカ』のマンション、そこからなら二〇分ぐらいでつける筈だから頑張って』
「はあっ、ちょっと待ってくれよ楓。今日はもう三件目だぞ。今日はもういいじゃないか?」
『?何言ってるのお兄さん。働かない者食べるべからすだよ。』
電話越しにもわかる。可愛らしく、あざとく首を傾げる楓の姿を陸斗は幻視(げんし)する。
『それに楓ちゃんはやる気マンマンじゃない?』
「まさかー」
と思いつつ、隣を見てギョッとする。
雫が指を凄いスピードで動かして携帯を操作していた。
ディスプレイには東京の地図が写され、検索には「グランド・タナカ」と表示されている。
真剣な表情、マジでやる気マンマンだ。
『お願いできるかな、お兄さん?』
「……………了解。今から向かう」
通話を切ると同時に盛大にため息をつく陸斗に、風間はニヤニヤといやらしく笑う。
「なんだ?もう仕事が入ったのか。大変だな。 」
「まあな、ったく貧乏暇なしだよ」
頭を掻きながら陸斗は風間に手を伸ばす。
「報酬。次が控えてるんでね」
「わかった、わかった」
風間が出した茶色の封筒を陸斗は受けとる。
中身を確認。陸斗は乗ってきた自転車に跨がり、雫が荷台に座る。
「じゃあな民警、次もこきつかってやるから覚悟しとけよ。」
「まあ、お手柔らかにな」
「さようなら、刑事さん」
風間のセリフに苦笑いを浮かべながら陸斗は手を振り、雫は頭を下げた。
脚に力を入れてペダルを回す。発進した自転車のスピードはぐんぐん上がる。
刑事の姿が小さくなり声が届かない距離になると、雫はおもむろに立ち上がり陸斗の耳に口を寄せる。
「ダメですよ、安易に右腕を使っては。秘密がばれてしまいます」
「まさか、あの程度でばれないだろ。一発殴っただけだぜ」
「それがダメなんです。調べられたらイチコロなんですから、わかっているんですか?」
「はいはい、わかってるわかってるよ。」
手をあげ、気のない返事をする陸斗に、雫は頬を膨らませる。
ポカリと、雫は陸斗の背中に殴りつけた。
グラリと揺れる自転車を陸斗は必死に制御しながら、次の現場に向かった。
蛇行しながらも楽しそうな二人を見ながら、風間は強い違和感を感じていた。
強い。
陸斗と雫が倉庫に突入して僅か一分。
たった一分で二体のガストレアを倒した。最近開業した民警ができる芸当じゃない。
いや、それ以上に疑問なところがあった。
「何者なんだかな」
懐からタバコを出すと、火をつける。
通常、人間の力だけではガストレアには勝てない。
だからこそ強大な戦闘能力を「呪われた子供たち」、イニシエーターを前に出してプロモーターは後ろから援護する。
だが、あの小僧は違う。
自らが前にでてガストレアを殴りつけ、ガストレアを殴り飛ばしたのだ。
とても人間の力とは思えない光景だった。
「?なんだ」
風間は眉をひそめる。
遠ざかる二人。
本当に一瞬、陸斗の影が変化したように見えた。
眼を擦り、風間は目を細めて遠ざかる陸斗の影をもう一度確認する。
「…………気のせいか」
変わったところなどない、普通の人間の影。
「疲れてんのかね」
タバコを地面に落とし、靴底で火を消す。
頭を掻きながら風間は警察署に向かって歩き出す。見間違い。
そう、そうに決まっている。
風間は自身に言い聞かせた。
だって
あれは
あの影は
まるで
悪魔
次は今年中にできるかな?まあ、暇をみて書いてみます。