ブラックブレッド--破壊の魔獣--   作:断罪

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続きとなります。誤字、脱字は気にせず雰囲気で読んでやってください。


開幕

聖天使からの依頼内容は極めて単純なものだった。

昨日東京エリアに浸入したガストレアの排除と、そいつがとりこんだと思われるケースの回収。

いたって単純で簡単な依頼。

それだけに高額過ぎる成功報酬額が、全員を動揺させていた。 

陸斗も腕を組みながら悩む。

 

「キナ臭い依頼だな。どうすんだ楓?」 

 

「もちろん受けるよ。お兄さんなら楽勝でしょ」

 

「まあ、そうだが」 

 

ニコニコ顔で答える楓に陸斗はため息をもらす。 

どう考えても裏がある。

たかだかケースの回収依頼に東京エリアのトップ自らが説明するなんて聞いたことがない。

陸斗としてはあまり受けたくない部類の依頼だが、社長がやる気なら仕方ない。

それに

 

「私達はこんな順位で足踏みしていられない。多少の危険なんて覚悟の上、でしょ」 

 

普段はあまり見せない楓の覚悟を決めた貌に、陸斗は右拳に力を込めながら頷いた。  

 

「ああ、当たりまえだ。覚悟なんてガキの頃にできてる」 

 

陸斗も決意の覚悟を持って答える。

そんななか、黒髪の美少女、天童木更が手を上げて聖天使に今回の依頼について問答をしている。

 

コッコッコッコッ

てくてくてくてく

 

僅かに聞こえてくる悲鳴と足音、血の匂い。

なんだ

陸斗は楓の肩を引き寄せ、自身の身体に隠すと、扉に顔を向ける。

 

「お、お兄さん!?」 

 

「黙れ、誰かくる」

 

一瞬、驚いた表情をした楓だか、真剣な陸斗の声におし黙る。

誰だ、この気配は警備員の者じゃない。

近づいてくる嫌な二組の気配。

陸斗は懐にあるデザートイーグルを掴みいつでも抜けるように意識を戦闘モードに切り替え。

楓もスカートの内側に隠して短槍を掴んだ。

 

「「…………」」

 

ゆっくりと扉が開く。

入ってきたのは燕尾服に白い仮面をした男。

そいつはそのまま空席だった席にどっかりと座りこんだ。

気がつかない周りの民警に陸斗はため息をもらす。

 

「楓」

 

「うん、分かってる」

 

いつ仕掛けるべきか、攻撃するタイミングをはかっていると男は大声で笑いだす。

 

『誰です』

 

「私だ」

 

全員の視線が男に集中する。

そんな中で男は体を反らして跳ね起きると、卓の上に土足で踏み上がる。聖天使と相対した。

 

「私は蛭子、蛭子影胤という。端的に言うと私は君たちの敵だ」

 

両手を広げ自己紹介と宣戦布告を宣言する影胤。

知り合い(?)の男、里見蓮太郎と会話した後、さっきからいた子供が手招きされて卓の上に登る。

ウェーブ状の短髪、楓とは逆のフリル付きの真っ黒いワンピース。腰の後ろには二本の小太刀。

 

「蛭子子比奈(こひな)、十歳」

 

「私のイニシエーターにして娘だ」

 

子比奈が眠たげな顔でゆっくりと首を左右に振り、陸斗と目が合う。と、恐怖で貌を引きつかせ影胤の隠れた。

 

「パパ、怖い。化物がいる。アイツ、人間だけど、人間じゃない。」

 

「化物?なにを言っているんだ、まったく。」

 

怯える彼女の背中をさすりながら影胤はため息をつく。

 

「では諸君、ルールの確認をしょうじゃないか!どちらが先に感染源ガストレアを見つけて七星の遺産を手に入れられるかの勝負といこう。七星の遺産はガストレアの体内に巻き込まれているだろうから、手に入れるには感染源ガストレアを殺せばいい。掛け金は君たちの命でいかがかな?」

 

「七星の遺産?」

 

その単語が出た瞬間、聖天使の表情が僅かに歪んだのを陸斗は見逃さなかった。

陸斗は楓に「知ってるか」と、目配せすると、楓は「知らない」と顔をふる。

 

「ーーー黙って聞いていればごちゃごちゃと」

 

バスターソードを手にした男、井熊将監が怒気を撒き散らし、影胤に突撃する。 

思っていたよりも速い速度に、陸斗は感心する中。

 

「ぶった斬れろや!!!」

 

一瞬で懐に潜り込んだ将監は、巨剣を高速で振り回す。

だが、バシン!!という雷鳴音が弾け、将監の巨剣があさっての方向に弾き飛ばされる。

いまのは、斥力か。

一瞬だったが、将監の剣と影胤との間に火花のような燐光がはしった。

 

「下がれ将監!!」 

 

三ケ島の声に反応した将監は意図を汲み取り、後方に下がる。

瞬間、集まっていたプロモーター全員が自衛用の銃を抜き、一斉に引き金を引きまくる。

何十発もの弾が放たれ、耳につく発砲音。 

再びの雷鳴音と共に、今度は先ほどよりはっきりとした燐光が見えたと同時に、陸斗は楓を床に押し倒し覆い被さる。   

 

「お、お兄さん!」 

 

「大丈夫!」

 

斥力のシールドが弾丸をあさっての方向に弾き返す。周囲にある調度品が破壊され、運悪く跳弾に当たった人間がうめき声をあげる。

陸斗の背中にも数発が命中したが、この程度なら問答にはならない。

影胤は自慢気に自身の力である斥力フィールドと、自身がガストレア戦争が生んだ対ガストレア用特殊部隊である事を宣言した。 

軽い足取りで銃を構えたまま固まっている里見蓮太郎に近くと、プレゼント箱を卓の上に置いた。  

そのまま何事もなかったかのように、影胤と子比奈は窓まで歩いていく。

 

「逃がすか!」

 

床が陥没する。

弾丸のような速度で陸斗が影胤に突撃する。間合いを瞬時に殺して影胤に肉薄、右拳を斥力フィールドに叩き込む。 

 

バチン!!!!

 

右拳が斥力フィールドに衝突し甲高い音を鳴らす。

先ほどの男の剣と同様、陸斗の右拳はフィールドに拒まれ影胤には届いていない。

 

「何度言えばわかるんだい。君達程度の攻撃では私にはー」

 

影胤の言葉が続かない。

なぜなら、陸斗の拳はフィールドに弾かれることなく耐えていた。

 

「舐めんなよ!」

 

バキバキバキバキ!! 

右拳は傷つき血吹雪きが舞う中、少しずつではあるが、右拳は斥力フィールドにめり込み、影胤に迫っていく。

 

「パパから離れろーーーー!!」

 

隣にいた子比奈が凄まじい速度で刀を振るう。

 

「ちっ!」

 

迫りくる斬撃を右腕を戻して防ぐ。刃が肉と骨を切断しーーない。 

右腕の中間ほどで停止し、切断には至らない。

 

「痛いだろうが邪魔すんじゃねえよ!!」

 

陸斗は右腕を引き寄せると、小比奈は前のめりに体勢を崩す。体勢を戻そうとする子比奈の胴体に蹴りを叩き込む。

 

メキメキメキメキ!!

 

あばら骨をへし折られ、子比奈は口から血を吐き出す。イニシエーターの回復は人間とは段違いに速い。だが、一瞬ですべてのダメージを回復できるわけではない。 

あまりの威力に窓を吹き飛ぶ小比奈を影胤が受け止めた。 

さすがにもう追撃は間に合わないな。

互いに睨み付けながら、影胤は問いかける。

 

「…………なんだ、君は」 

 

「民警だよ。テロリスト」 

 

「………いいだろう。君だけは敵だと認めよう。」

 

影胤と子比奈は窓から飛び降りて、その姿を消した。

誰もが声を出せない静寂に包まれる室内を、半狂乱の男性が飛び込んでくる。

どうにも自身の会社の社長が殺され、頭部がどこにも見つからないと喚き散らかす。

まさかと、陸斗は先ほど影胤が置いていったプレゼント箱を視線を移すと。

里見蓮太郎はプレゼント箱のゆっくりと蓋を開け。

中身を確認して数秒、またゆっくりと蓋を下ろし、怒りの声をあげた。 

 

「静粛に!」

 

聖天使の澄んだ声に、陸斗はモニターに顔を向ける。

改めて依頼の達成条件を付け加える聖天使に、天童木更は説明を求め、

 

「いいでしょう。ケースの中に入っているのはーー」

 

七星の遺産に、東京エリアの大絶滅。

突然の告発に全員が動揺する中、楓はモニターに向かって宣言する。

 

「心配ありません聖天使様。あの二人組は私達が、いえ、お兄さんが必ず捕まえ、ケースを回収します。ねっ」

 

「ああっ、可能なぎり早くな」

 

いきなりこっちに話題をふるなよビックリするわ。

 

「………あなたは?」

 

「天津風楓と申します」 

 

楓の名字を聞いた聖天使は僅かに表情を崩した。 

 

「期待しています」

 

「はい。お任せください」

 

楓は陸斗の右腕に抱きつき、引きづりながら歩き出す。まるで傷のない右腕を隠すかのように。

そんな姿を眺めた聖天使は

 

「亡霊ですね」

 

誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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