World Witches:Adventure -Revision- 作:天羽々矢
天が言った「咲輝なら追いかけられる」発言に困惑していた芳佳とひかりであったが、その理由は直ぐに分かった。
ロングビーチのマリーナに停泊しているヨットやクルーザーに紛れ停まっている1機の飛行艇がその答えである。
カフェラウンジを出てすぐにもう1度店の看板を見てみれば、Fleur de sorcièreの看板の他にもう1枚、突出し看板が取り付けられておりその看板にはこう表記されている。
“
それは咲輝のファミリーネームが入っている航空会社の名前である。
最も、経営しているのは咲輝の父親の弟…つまり叔父なのだが、その人物も経営者であると同時にパイロットである為に世界を飛び回っており不在である事が多い。
……説明すれば長くなる故、解説は別の機会にするとしよう。
停泊している飛行艇はその航空会社、
コックピットの計器類は基本的にはアナログ計器だが、高度計や速度計等の補助計器類は液晶ディスプレイ化している。
後部側面銃座の内装も一新、爆弾倉や銃座スペースも撤去されテーブルやソファの他、調理場やトイレも設置済み。当然前部銃座も取り払って滑らかにしている。
エンジンも元々の空冷レシプロエンジン2基から約1,600馬力のTPE-331 14GRターボプロップエンジン2基に換装し、4枚プロペラを2重反転で回す8枚プロペラに変更したりと至れり尽くせりである。
そして目を引くのは垂直尾翼に描かれているマーク。
リボルバー銃を銜え背中に翼を生やしたキンイロジャッカル、芳佳達の世界にて咲輝が使用していたパーソナルマークだ。
閑話休題
クルトがボストンバッグとスーツケースを持って飛行艇に向かう中、飛行艇のエンジンが始動し2重反転式8枚プロペラが回り出す。回転が上がり安定してアイドリング状態になる中、その飛行艇の操縦席に腰を下ろす青年、咲輝の姿が。
「計器チェック、異常なし。燃料も満タン。エンジン音も問題なし。OK、今日もご機嫌だな?」
計器パネルを軽く叩きながら飛行艇に呼びかける咲輝。
計器と燃料チェックを終えるも、そこでクルトが中々乗ってこない事に気づき1度操縦席を離れ接舷している右側の搭乗口を開ける。
「どうしたんだよクルト?早く乗れって」
「僕、旅はあんまり好きじゃないんだけど…」
咲輝の問いにクルトは消沈しながらも答える。どうやら気乗りしないらしい。
それにしびれを切らしたか、咲輝が搭乗口から出てきてクルトの荷物をひったくり機内へ放り込む。
「ったく、グズグズしてるとレパードに先を越されちまうぞ?」
「待ってくださ~い!」
咲輝がクルトを機内へ引きずり込もうとしている時だ。
咲輝達の背後辺りから咲輝にとって聞きなれた声が聞こえてくる。見ればひかり、芳佳、天が何やらバスケットを持って来ている。
「3人ともどうした、そのバスケット?」
咲輝が3人が持つバスケットを指差しながら問うと、天がバスケットを開けて中身を見せる。
その中身は、握り飯やサンドイッチ等の軽食である。
「ハナからよ、
咲輝の問いに天が答える中、天の言葉に引っ掛かりを覚え再度咲輝は問う。
「・・・私たちって、お前らもついてくる気か!?」
「えっと・・・私たちもついていったら迷惑ですか・・・?」
いつものひかりらしからぬほっそりとした声と縋るような視線で咲輝を見つめる。芳佳も同じような雰囲気だ。
だかその心境も当然であろう、知り合いが自分達以外に誰もいないこの世界でその知り合いまでもいなくなっては心細くもなるだろう。
それを察したか咲輝は苦笑いしながら頭をかくも、2人に飛行艇に乗るよう促す。
「何かあったらそん時はコキ使うからな?」
『!!・・・はいッ!!』
その返答に芳佳とひかりが笑みを浮かべて力強く返事した。
芳佳、ひかり、天の3人が飛行艇に乗り込み、咲輝も機内に戻ろうとした時、
「咲輝」
またしても咲輝を呼び止める声が。
声のした方を向くと、そこにはハナがいた。
まだ何かあるのかと問おうとした時にハナが口を開いた。
「姫様の事、お願いね」
その言葉だけで何を意味するか知っている咲輝はハナに笑みを浮かべると、
「任しとけ」
右親指を立ててサムズアップ。
それだけをハナに言うと飛行艇の機内に戻り操縦席へ。
「それじゃ、出発!」
『おぉ~!!』
咲輝の掛け声に乗り気でないクルト以外の全員が返答し、咲輝は操縦室天井のスロットルレバーをゆっくりと押し込む。
それに応えるようにプロペラの回転数も上がり、伴って水面を滑走する速度も上がる。
やがて一定の速度に達すると飛行艇の機首が持ち上がり、胴体が水面から離れる。
ハーバーで手を振って見送るハナを後目に、飛行艇は左右のフロートを両翼端に跳ね上げ、速度を上げながら上昇していく。
・・・目指すはメキシコだ。
ロングビーチのハーバーを発ちメキシコを目指し悠々と空を行く飛行艇を操縦する咲輝。そしてその右隣の副長席でタオルケットを被って仮眠を取るクルト。そして機体後部の
1946年から来た2人からすれば21世紀現在の光景は想像も出来なかった事だろう。
・・・途中でクルトが飛行機酔いで気分を害していなければ、さぞ優雅な飛行機旅だった事だろうに。
そんな酔ったクルトに機長である咲輝はもちろん芳佳、ひかり、天も慌て、芳佳と天が丁度機内に用意してあった手近なバケツと紙袋とで拵えた即席のエチケット容器をクルトに渡し、何をとまでは言えないがその袋の中にぶちまけるという・・・
多少のごたつきもあったものの、航空そのものには特にトラブルも起きず。飛行艇はメキシコ・ユカタン州メリダへ。
「どうだ?」
「もうすぐだと思うけど・・・」
操縦桿を握る咲輝の右隣でスマートフォンの地図アプリで確認するクルト。
やがて雲の上を超えると、目の前に市街地が見えてきた。当然その街並みも1946年では見られない発展した街並みだ。
『わぁ~・・・!』
「あそこだ!メリダの街!」
芳佳とひかりが目を輝かせ、咲輝も目的地に着いた事を素直に喜んでいる。
副長席に座るクルトも顔を綻ばせる。
「紀元前から16世紀初頭にかけて、この辺り一帯にマヤの文明が栄えていたんだそうだ」
ここでクルトが顔を綻ばせつつ、かつてメリダ一帯にて繁栄していた文明の解説をする。
芳佳とひかりはもちろん、咲輝も天も考古学者ではない為さっぱり分からない。故に芳佳がクルトに問った。
「えっと・・・そんなに凄いんですか、そのマヤって?」
芳佳の問いにクルトが力強く頷く。
「もちろん凄いさ!伝説ではマヤ人は宇宙人と交信していて、ロケットまで作っていたんじゃないかって言われてる位だからね」
『ロケット!?宇宙人!?』
クルトの解説に芳佳とひかりが驚く一方、
「本当なの、それ?」
「言っとくけどよクルト、
天と咲輝はクルトの、延いては一般に出回っている学説にやや懐疑的である。
そして咲輝が再度メリダの市街地を見た時だ。
「・・・ん?アレは・・・?」
パイロット故に視力も良い咲輝が何かを発見した。
メリダの街中を1台の車が走っている。
キャンディーパープルの派手な塗装にクロームのトリムや外装パーツが煌めいているそれは“1962年式 キャデラック・ドゥビル 2ドア コンバーチブル”。
咲輝が発見したそれを、今度はクルトが双眼鏡で確認してみる。
運転席には緑のシャツを着た長身の男、助手席には紫のシャツを着た巨漢。・・・若干シートに収まっておらず右腕が車の外に出ているようだが。
そして後部席に乗るは、長い金髪に翡翠のような碧眼。黒いレオタードに腰履きの白いプリーツスカート、裏地が赤の黒マントに黒い手袋にブーツ、赤と白のドミノマスクを付けた少女・・・。
「・・・レパードだ!」
「何!?」『えぇ!?』
双眼鏡で確認したクルトの言葉に咲輝と芳佳達も驚いた。まさか街について早々に見つけられるとは。
更に双眼鏡に映るレパードは右手にクルト達から奪ったマヤ文明の黄金のメダルを持ち、それを左手に持つハンカチで拭いている。
「あぁ、メダルだよメダル!」
「だったら猶更!天羽さんすぐに取り返さないと!」
クルトの言葉に慌て、ひかりは咲輝に催促するが咲輝はまだ冷静だった。
「あのな、俺達は飛行機で相手は車で街中を走ってる。街ごとぶっ潰せっての?」
「でも・・・」
咲輝の反論に言いよどむひかり。それに咲輝の言い分に賛成なのは彼自身だけではない。
「咲輝の言う通りよ、追いかけるにしてもまずは降りてからね」
「そういうこった」
咲輝の意見に賛同した天の後押しもあり、一行はまず街に降りてから追跡の事を考える事にした。
ED:エルドラド/THE ALFEE
キャスト
天羽 咲輝:斉藤 壮馬
クルト・フラッハフェルト:花江 夏樹
天:潘 めぐみ
ハナ:橘田 いずみ
宮藤 芳佳:福圓 美里
雁淵 ひかり:加隈亜衣