「(やばい、やばいやばいやばいやばい)」
私は今、ヤバイ霊と一緒に買い物をしている。ハナに憑いてきた霊は、その後も見かけた霊を捕食し続け、その禍々しさを増していた。私は買い物をしながらなんとか見えることに気づかれずにいるが、いつバレるか時間の問題だ。
捕食し続ける霊は体から顔や目が増え、遂には体積は倍ほどに増え、足は8本くらいに増え、おぞましく恐ろしい姿だ。ここまでの霊は私も見たことが無い。
「(五条さん…早くきて)」」
五条さんには連絡をしているがまだ来ていない。未だ人が多いから瞬間移動で私達の前に現れるのも問題がある。既に近くにいて私達を探してるのか…確かに今日は休日で人が多いから私達を見つけるのも難しいが、五条さんも見えるからこいつを見たらすぐに気付くはず。
この人目がある場所では祓ってもらおうにも場所が悪い。出来るだけ人気のない場所に行きたいが、霊に不自然に思われるわけにもいかない。なので買い物を続けながら移動する。
そして近くで異形の霊が他の霊をぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ごくんと捕食している音を発していた。
「(……また、何か食べてる。嫌、聞きたくない……けど、耳を塞いだら見えることがバレる。頑張れ…私!)」
なんとか気を強く保つが、しかし霊はお構いなしにどんどん大きくおぞましく進化していき、ハナに近寄ってきた霊を捕食し続けている。どんどん気配も変わっていく。このままだと関係ない人達に憑いたらどうなるかわからない。
「(五条さん……)」
霊の対処は元から五条さんに頼るしかない。御札も一応霊を祓うこともできるらしいが、彼には私が祓う行為をするとリスクがあるからしないようにと念を押されている。
元々私は見えるだけで五条さんのような力もない、だから今は五条さんに頼る。もうそれ以外思いつかない。
「ハナ、せっかくだし、買い物が終わったらパワースポット巡りでもしてみない?」
「パワースポット?何か楽しそう!いいよー!みこがそんな事言うなんて珍しいね!」
まずは人気のない場所に行くパワースポット巡りと称して、ハナを誘導する。買い物を終わらせ、バス停に移動するが、誰も彼も近くに異形の霊が存在するなんて思いもよらないだろう。実際かなりヤバイ見た目をしているのに、私以外は何も見えていない。見える私と五条さんが異様なだけなのだろう。
そしてバス停に着き、目的地に向かうバスに乗車した。
「さすが休日、混んでるねぇ」
「そうだね…」
『*#@¥$€%÷』
「(なんか言ってる、すごい何か言ってる…)」
後ろから感じる禍々しい気配を、当たり前の雑談をすることによって意識しないよう努めるみこ、霊から発する気配によって張り詰めたような緊張が走り、1分が何十分にも感じられる。
みこは極度の緊張によって時間感覚も麻痺し、関係ない事を考えながらやり過ごす。
【次は〜○○〜、○○です】
「ハナ、ここで降りるよ」
「はーい」
何時間にも感じられた緊張しっぱなしの道のりは終わりを告げた。ここから歩きだが、まだ油断なんてできない。いつ私が見えることに気づかれるかわからない状態、なんとか見えることに気づかれないようにしないと…
『*#@¥$€%÷』
「ハナー、こっちだよ」
みこは恐怖を無理矢理に心の奥底に押し込むように息を吸う。まだ道の途中だ。気を緩めてはいけないと自身を鼓舞する。
「うん、わかった」
晴れた顔の笑顔の親友を見て思う。ハナを傷つける事なんて、絶対にさせない。そう思いながら歩みを始めたその時だった。
「ねぇ、みこ…あそこ、妙に人が集まってない?」
「ん……?」
「ねぇお兄さん、よかったら一緒にお出かけしませんか!」
「君!今は私がこの子をスカウトしているんだ!邪魔はしないでもらいたい」
「おじさんは黙ってて!ねぇねぇ、私達と一緒に楽しい事しない?」
「いや、あの……俺、急いでいるんだ(しくった。急いでたからサングラスをかけるの忘れてた)」
「そんな事より、君…芸能界に興味は…」
「これっぽっちもないです」
「即答⁉︎」
「あの、私最近上京したばかりで…この辺り全然知らなくて、お兄さん詳しい人だよね?案内してほしいなぁ…」
「ナビアプリを使えば簡単にいけますよ…俺もこの辺りは詳しくはなくて」←大嘘
どっかのハリウッドスターばりに女子、そして芸能関係者までスカウトされて、囲まれている暁だった。彼はサングラスは身に付けていなかった。
「五条さん⁉︎」
「暁さんだ!ていうか凄いねぇ〜、流石イケメンだよ。モテモテだ〜」
「(いや、五条さん、すっごい困ってる顔してる)」
みこは暁の表情を見てすぐに心情を察していた。暁がサングラスをかけるのは近づきにくい印象を出す為と、目の疲労を抑える為に身につけていると話されていた為だ。何故サングラスを身につけていなかったのかはみこはだいたい察した。
「どうするのみこ?」
「どうするって……(五条さんと合流しないとこいつをどうにかすることもできない、…やるしかない!)」
「あっ!ちょっとみこー!」
みこはそのまま人溜りに向かい歩き出し、ハナは慌ててみこの後を追う。
◇
どうも、五条暁だ。スイーツを食べている途中、四谷さんから特級案件の霊がハナさんに憑いていると連絡があり、すぐに食べ終えて、テイクアウト用のケーキを片手に持ち、四谷さんと合流するため霊の痕跡を追いながら探していたが、現在急に女性から話しかけられたり、芸能関係者からスカウトされており鬱陶しい。急いでたからサングラスをつける事を忘れていた。俺の失態だ。
「ねぇお兄さん、よかったら一緒にお出かけしませんか!」
「君!今は私がこの子をスカウトしているんだ!邪魔はしないでもらいたい」
「おじさんは黙ってて!ねぇねぇ、私達と一緒に楽しい事しない?」
「いや、あの……俺、急いでいるんだ(しくった。急いでたからサングラスをかけるの忘れてた)」
今更かけてももう遅い為意味がない。四谷さんとハナさんの気配を近くに感じる。おそらく遠くない場所にいるが、もう一つ禍々しい気配を感じる、間違いなく特級並みの霊だ。それに気配がいくつか混じってる。他の霊を捕食したのか?このまま放っておいたら間違いなく危険だ。
「そんな事より、君…芸能界に興味は…」
「これっぽっちもないです」
「即答⁉︎」
「あの、私最近上京したばかりで…この辺り全然知らなくて、お兄さん詳しい人だよね?案内してほしいなぁ…」
「ナビアプリを使えば簡単にいけますよ…俺もこの辺りは詳しくはなくて」
「君、こっちのモデルをやってみないか?あっ、私…こういう者ですが…」
名刺なんて誰が受け取るか、まず興味自体ねぇよ……そろそろウザくなってきた…
「あんたら、いい加減に…」
ドスの効いた声でいい加減にしろ、というはずが突如暁の服の袖を引っ張られる。誰が引っ張っているのか顔を向ける……
「………」
「よ、四谷さ「さ、暁くん」……へ」
「い、いつまで経っても来なかったから…し、心配…したんだよ(は、恥ずかしい)」
「………」
えっと……どういう状況…情報が完結しないんだけど。急に袖を引っ張られたと思ったら四谷さんだった。は、いいんだけど…今、暁くんって言った?なんで頬真っ赤にしながらそんなこと言ってんの?何か、俺まで恥ずかしくなってきた…
「ご…ごめん」
つい謝ってしまう暁であった。
「みこー!暁さーん!」
「い、行くよ暁くん」
「あ、ああ……」
暁はそのままみこに引っ張られながらその場を後にした。逆ナンしてきた女性と芸能界の関係者の人は、その様子をポカーンとしながら様子を見ることしかできなかった。