「それでね、このお店のパフェがまた絶品なんだよ!」
「そうなんだ!是非とも行ってみたいね」
「へ、へぇー」
サングラスをつけた五条暁と四谷みこは無事合流し、みこと一緒にいた百合川ハナと気になるお店があればよったり、買い物をしながら行動している。明るく話題を振るハナに対して暁とみこの間に会話はなかった。
理由としては近くには異形の霊がくっつくように憑いている為、緊迫した状態が続いていた。
「四谷さん…」
「な、なに?」
「さっきはありがとう、お陰であのしつこい連中から抜け出す事ができた」
「ど、どういたしまして。五条さん困ってる顔してたから、気づいたら体が勝手に動いてた。いつも助けてもらってばかりだったから…力になれてよかった」
「そっか(やっぱりあの場から引き離す為の作戦だったのか、よく短時間で行動に移れたな。それにこの霊……昔から存在してる類か…)」
近くにいる特級並みの霊の禍々しい気配を間近で感じた暁は、昔からいる類の霊と判別する。
「(こういうのは中々面倒だ…何とかしてこいつだけでも二人から引き剥がさねぇとな)」
「……うーん」
暁はみこにお礼をいい、異形の霊をどう引き剥がそうかと考えていた一方で二人の会話を聞いていたハナはうーんと唸っていた。
「ハナさん?」
「ハナ?どうかしたの」
「それ!それだよ、二人とも!」
「えっ、俺と四谷さんが何か?」
「どれのことなのハナ?」
ハナが何のことを示しているのかが今一理解出来ていない二人は、今一度ハナが何について話しているのかを訊ねた。
「それだよそれ!その二人の呼び方!」
「呼び方?」
「そう呼び方!私はみこほど暁さんとは長くないけど、見た感じ二人って友達としても1、2ヶ月そこそこあるのに、未だ二人は名字呼びでしょ? 私からしたら二人って結構親睦も深めてるはず!そろそろ名前呼びでもいいんじゃないかな?それに名字呼びだと距離感があるみたいでなんだか嫌だし、暁さんに関しては私の事も呼び捨てでも構わないよ?」
「名前呼び?」
「えっ、その……」
「ほらほら、練習がてら暁さんは私の事ハナって呼んでみて!」
ハナさんは呼び捨てで呼んで欲しいと頼んできた。俺は初対面の相手にはさん付けで呼ぶが、言っていることに一理ある。実際憂太と里香も呼び捨てで呼ぶ仲だしな。
「わかった。じゃあ…ハナ、これでいい?」
「うんうん!私は暁くんと呼ばせてもらうよ!なんだかだいぶ距離が近づいた感じがするよ!ほら、みこにも!」
「ハナ、私は別に…「みこ」……」
下の名前で呼ばれたみこは、呆然と暁を見つめる。
「あー、もしかしてあんま男子に名前で呼ばれるの嫌だったか?嫌なら呼び方、戻すけど…」
「あ、いや!別にそう言う訳じゃ…!(その顔で急に呼ばれたら…)」
「そう?じゃあこれからはみこって呼ばせてもらうよ」
「う、うん」
みこと暁は名前呼びで呼ぶこととなり、ハナはさんから君付け、みこに関しては呼び捨てで呼ばれた事に少し頬が赤かった。家族以外の男子に名前で呼ばれる事に耐性のないみこは恥ずかしくて仕方なかった。暁が名前呼びに抵抗のない様子にみこは不満を持ち…
「……あ、あの」
「ん?」
「今からパワースポット巡りをしようと思うんだけど…“暁”も一緒にどう?」
「………」
暁は名前呼び、しかも呼び捨てで呼ばれ、一瞬動揺したものの、すぐに笑みを浮かべる
「いいよ、一緒に行こうか。そこの霊の事もあるし、俺が絶対になんとかする」
「よかった」
暁はハナに付いている霊に悟られない様に、最後はみこにしか聞こえない声で伝え、みこも理解し、安心する。
そして暁はくるっと二人に背を向けると、みこはある違和感に気づく
「(あれ……耳が)」
髪の毛で隠れていたはずの耳が出ており、誰が見てもわかるほど赤くなっていたのだ。
「(なんだ、恥ずかしいの…私だけじゃなかったんだ…)」
みこは暁にあえて追求はする事はなく、そのままハナと一緒に暁の後を追う、ハナはそれに気づく事はなかった。みこはそのとき霊がいるにも関わらず…気が紛れている事に気づいてはいなかった。
「(なんで俺……ドキッとしたんだ?わからねぇ、なんでこんなに顔が熱いんだ?とにかく今はみこの提案にのって人気のない場所に移動してタイミングを見てこいつから二人を引き離す)」
耳と顔を真っ赤にさせながら、二人の前を歩きら何か言われる前に気持ちを落ち着かせ、移動を再開する。
「ねぇ、暁くんはおしり大福は食べたことある?」
「もちろんあるよ。モチモチふわふわで超美味しいよね」
「わかる!あのおしりの様な食感が堪らないんだよね〜!」
「だよな!みこはどう思う?」
「う、うん…私も好きだよ」
『*#@¥$€%÷』
「(なんか言ってるな。言葉がわからない奴、いるんだよな。前の武者の霊の時もそうだったが……)」
サングラス越しに見えることを悟られない様に異形の霊を見る。
「………」
そして隣ではみこが震えていた。ハナはその様子には気づいておらず、顔色はなんとか健康体を保っているが常に異形の霊が憑いてきているため、怖いのだろう。
「(震えてる、この様子だとここまで禍々しい類は見たことがなさそうだな……)」
尋常じゃないほど震えているみこに更に近づき、暁はみこの手を握る。
「っ!さ、暁?」
「大丈夫?ずっと気を張り詰めてるけど…」
「う、うん…大丈夫」
俺が手を握っただけで驚くくらい張り詰めていた様だ。一応人気のない場所までは俺の無限もみこに付与させておく。万が一見える事に気づかれて何かされた場合は届かない様にしておく。ハナの場合はあの生命オーラで守られているから問題はないが…少なくなった時は彼女にも付与させておく。
「あー!二人とも手繋いでる!私も繋いでいい?」
「うん、いいよ」
「やった!じゃあ私はみこの手を繋ぐね!」
「は、ハナ⁉︎」
ハナはみこの空いている手を繋ぐ。最初は驚いていたが、みこの表情はだんだん柔らかくなっていき肩の力が抜けていく。
「(なんでだろう、この世とは思えないくらいのヤバい霊がいるのに……とても安心する)」
みこは二人の温もりに恐怖心が和らいでいた。3人は会話をしながらみこの提案したパワースポットの目的地に向かう。
そして周りには人気はなくなり、暁は表情を変える。
「二人ともごめん… 手洗いに行っていいかな?」
「え?暁くんトイレ?」
「ごめん、二人は先に行ってて、すぐに戻ってくるから」
俺はみこに視線を向けると、彼女は俺のアイコンタクトだけで理解し、頷く。
「わかった。ハナ…行こう」
「はーい!」
「あ!それとこれお願いしてもいいかな…」
俺は片手に持っていたテイクアウトで頼んだケーキをハナに手渡す。
「わかりました!しっかり預かっておくね!」
「一応言っておくけど、食べないでよ?」
「ヒドイ⁉︎私は他人の物を食べるほど食いしん坊じゃないもん!!」
「ごめんって、それじゃあ行ってくるよ」
暁はそのまま二人から離れ、みことハナは暁の姿が見えなくなるとそのまま目的地に向かう。霊もそのまま二人の後ろをついて行こうとすると
「悪いけど、お前は俺と一緒に来てもらおうか?」
瞬間移動で異形の霊の腕を握り、そのまま一緒に異形の霊と暁は消えた。
「………」
「あれ?今真後ろから暁くんの声がした様な…?」
「気のせいだよ。それよりも私達は行こ」
「はーい」
「(暁、気をつけて…)」
みこは暁の無事を祈ることしか出来なかったら。
◇
『*#@¥$€%÷』
「ここなら遠慮なくやれるけど…一応保険を掛けておこうか」
どこか人の来ない森の広い場所に移動し、霊を投げ飛ばし距離を取った暁は懐から大杭を取り出して地面に刺して踏みつけ、印を結ぶ。
「──闇よりいでて闇より黒く…その穢れを禊ぎ祓え…」
詠唱を終えると、空に黒い幕みたいなのが現れ、黒い幕が広い範囲に覆い終わると、景色が夜に変わっていた。
「さてと、これなら遠慮なくお前を祓える」
『オマエ、ミエテルノカ……』
「へぇー、喋れるんだ。まぁ別にどうでもいいけど…」
『ミエテル、ミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルゥ!!!!……』
霊の問いを返すと、異形の霊は更に禍々しいオーラを放ち姿を変える。
「気配が増したね。それがどうしたのって話だけど」
『タベタイ、タベタイタベタイィ!!』
「俺は食われるのは御免だよ。御託はいいからかかって来いよ?お前じゃ俺に触れる事すら出来ないから」
人差し指を上に突き上げ、挑発を込めた一言と共に突き上げた人差し指を縦に振った。異形の霊は簡単に挑発に乗り、口から鞭の様な舌を俺に向け放った。
しかしその攻撃は俺の前で制止する。
「これ、当たるとどうなるわけ?俺何か起こっちゃうの?」
気の抜ける様な暁の発言に、異形の霊は暁へと接近しながら直接攻撃を当てようするが…一瞬で暁の視界から霊が消えた。
異形の霊がいるのは結界内の空の上だった。そして上空には、ポケットに手を突っ込んで仁王立ちしている暁がいた。
「へぇー、宙まで浮けるんだ。まぁ霊だからそれくらいは出来るか」
煽り口調でそう言うと霊から殺気とオーラが増した。みこだったら気を失うか倒れてもおかしくない物だ。
凄まじい殺気とオーラを冷静に感じていると、異形の霊が飛び出し、口の中から黒い何かを暁に目掛けて吐き出した。
暁は吐き出された黒い何かに直撃する。異形の霊は勝ち誇ったかのような反応をするが、すぐにそれはなくなる。
「煙たっ…お前さ、学習しろよ。お前じゃ俺に触れる事すらも出来ねぇし、当てる事もできねぇよ」
その中から煙を払うように、何事もなかったように暁の姿が現れた。
その姿を見た霊は動き出した。
『アアアアアアアアアア!!!』
身体から何かを噴き出しながら俺に突っ込むが、攻撃を当てることは当然叶わない。取り敢えず霊を蹴り飛ばし吹き飛ばして、俺が貼った帳にぶつかり跳ね返った。
「まだまだぁ!」
俺はそのまま霊の手を掴み、連続の張り手を食らわせ、回し蹴りを食らわせ吹き飛ばす。
『アアアアアアアアアア!!!』
叫びを上げながら吹き飛ぶ霊の背後に移動した俺はそのまま踵落としを食らわせ地面に叩きつける。
地面に叩きつけられた霊は、俺に殺意を剥き出しにして睨んでいた。
「お前、弱いな。見た目の割に強くないし、そろそろ終わりにしようか」
『*#@¥$€%÷アアアアアアアアアア!!!』
「せっかくだから最後に見せてやるよ、呪術の真髄をな」
俺はサングラスを外し、空色の青い瞳が顕となり、右手の人差し指と中指をクロスさせ、手印を構える。
「────領域展開」
呪術を極めた者が到達するその真髄、その名は
「無量空処」
その瞬間、俺と異形の霊に黒い膜の様なものが包み込んだ。その瞬間即座に霊の動きが止まった。
領域内は宇宙のような空間になったと思えば絵の具を溢したかのような白が広がっていく。
「ここは無下限の内側、領域展開は領域によるステータスのアップ、領域の付与された術式は……必ず当たる」
『………』
「そして俺の領域展開は対象に"知覚"、"伝達"、生きるという行為に無限回の作業を…強制する」
『…………』
しかしその情報が無限に注がれ続け、情報が完結しない。故に…何も出来ないのである。
「悪いけど…俺が言うのはこれまで…とっとと祓わせてもらうよ」
俺は呪力を込めた腕で異形の霊の頭に触れ、首から少しずつミチミチと音が鳴り、頭から………引き千切った
ブシャァァァァッ!!と黒い体液を撒き散らし、それと同時に領域が閉じられ、周囲が元の景色に戻る
頭を喪った霊の体は消滅していき、暁が掴んでいた異形の霊の頭も消滅した。
「これにて一件落着……かな」
俺はサングラスを身につけて、帳を解除し、みことハナの元に向かうが…合流したら何故か顔色を悪くしたみこがおり、パワースポット巡りはやめ、スイーツ巡りをする事になった。
「みこ、因みに聞くけど、ハナが取り憑かれた理由ってわかる?」
「……呪いビル」
「は?」
「待ち合わせしてた際、ハナが犬を助けるために呪いビルに寄ったらしくて…」
「何故に呪いビルにっ⁉︎(アイツそこにいた霊だったのかよ!)」