「……変な感じだな」
辺りは暗い夜。俺は現在ある山の入口に立っており、六眼でじっと山を見ていた。以前ハナが異形の霊に憑かれた時にパワースポット巡りで来た場所だが…彼はハナに憑いた霊を祓うために一時二人から霊を引き離し人のいない森の中で祓い、二人の所に戻ったはいいが何故かみこの顔色が悪かった。結局の所俺は山の中には入らないままパワースポット巡りはせずスイーツ巡りをする事になった。
俺はその山に違和感を持ち、数日後学校帰りに一人で訪れていた。
「(この感じ、結界か?普通の人には入ることのできない仕組みになってるな、生得領域とはまた別物…しかし、霊の気配もすごいな)」
この山には多くの霊のオーラが多数あった。みこの顔色が悪かったのも納得だ。
「(近づかなければ大丈夫だろうけど……機会が有れば調べてみるか、流石に今の状況での裸眼はキツい)」
今は制服をきているためサングラスは身につけていない、俺はそのまま背を向け帰宅する為、瞬間移動でその場から離れる。
『呪術師……』
暁が消えてすぐ入り口前には鈴を身につけている二体の霊と、巨大な霊が立っていた。
「よっと(飛んだ瞬間何か大きな気配がしたが…今は気にしないでおくか)」
瞬間移動で人気のいない場所に移動し、歩道を歩き出す。周りは仕事が終わり帰宅している者や、部活帰りの学生が歩いていた。
「(母さんに買い物頼まれてたからな…さっさと済ませて帰ろう)」
俺は近くのスーパーで買い物を始め、サクッと済ませて帰路に着く。きらしている物もあるため、仕事が忙しい母さんの代わりによく買い出しに出ることもある。帰りが遅い時は基本俺がご飯を作っている。必要な物は朝のうちに頼まれ帰りに、寄り道ついでに買う。
「八時前、さて…何しようか、家に残ってる物を使うとなれば…野菜炒めと味噌汁だな」
今日の献立を考えながら歩いている。瞬間移動で帰るのもありだが、基本俺は普通にバスや歩いて学校を行き来している。俺も学生のうちは学生らしい事もしておきたいしな…プライベートだと多様してるけど。
「(この街は最近おかしい、霊が頻繁に増えてきてる。一級、特級レベルの類が少なからず多くなってる。呪霊の気配は感じないが…何かが確実に起きてる)」
「暁?」
考え事をしながら歩いていると聞き覚えのある声に振り向く。左手に袋を持ち、右手にはスマホ持っていた。
「みこ!どうしたんだこんなところに?帰り道はこことは違うはずだろ?」
「えっと、途中でおばあちゃんを助けてて…」
「あー、成る程、けどそれだけじゃないだろ?間違いじゃなかったらハナと買い物に行ってたでしょ?」
「せ、正解、よくわかったね」
「まだ短い関係だけど、買い物をすると長いってことくらいわかるよ…」
「ふふっ、流石だね」
「………」
みこが笑ってる……すげー可愛い。まただ、この鼓動が早くなる感覚、何故か…不快感が感じないこの鼓動…本当になんなんだ?
「暁?どうしたの?」
「……っ、ごめん、なんでもない。それより何かいいことでもあった?」
「うん、そんな所かな…」
人助けもそうかもしれないが、それだけではないのはすぐにわかった。みこからごく僅かな霊の残穢が付着していた。しかし害のない普通の霊が何かしらみこに伝えたのだと推測する。
「そうだ、暁に話しておくことがあったんだ」
「どうしたの?」
「歩きながら話す。ちょっと霊関係での話になるけど」
「…わかった」
みこの表情からして穏やかな内容ではないのはわかっていた。俺たちは一緒にバス停に向かう。
「それで…何かあったのか?」
「何かって言うと、私の学校の他のクラスの子なんだけど」
「みこの学校の他のクラスの子?」
「うん、実は…私たち以外にも見える子がいたの」
「!本当なのか?」
「本当…今日の体育の授業でその子と道具の片付けを手伝った時に…」
みこの話によると、体育の授業中に『二暮堂ユリア』と言う子に道具の片付けを手伝った際にみこが見える子だと気づかれたらしく、その子はみこの事をずっと見ていたらしい。しかも場所は体育倉庫でたまたま霊が集まっていたらしく、やばい霊も途中から現れたが、体育着はまだ半袖のためブレスレットはポケットにしまっていたが、なんとか霊を凌ぐことが出来たようだ。まぁみこになんともないからわかるが…無事でよかった。
「ただ、ちょっと気になることもあって…」
「気になること?」
「ユリアちゃん、小さいおじさんは見えてるのに、やばい霊は見えてない様子で…私が見る限りはその霊は二級、準一級相当だったと思う」
「は?二級、準一級相当の霊が見えていない?」
「すぐ真横にいたのに見えてる様子はなかった。ポケットから数珠を出したんだけどすぐに弾けて…なんかマザーの弟子とかどうとか言ってだけど…」
「マザーの弟子ね。もしかして見える者にも個人差があるのか…」
「個人差?」
「ああ、みこと俺はそのやばい霊は見えてるけどユリアって子は見えていない、例えるとみこはハナから溢れ出てるオーラが見えていないのと同じだよ」
「確かに、暁の呪力は見えるけど、ハナから出てる生命オーラは私には見えていない…」
「そ、もしかするとみこもひょんなことで見えるようになるかもしれないし…ユリアって子も霊に関わるうちにやばい霊も認知出来るかもしれないな」
「私だったらやだな、これ以上怖い思いをするのは…」
そうだよな、みこの場合生まれつきでもなければ、なんも前触れなく突然見えない物が見えるようになって当たり前の日常が崩れ去ってしまった。
俺が祓うところを見るまでは誰にも相談出来ずにいた。今では気を張り詰める様子も少なくなっている。
「確かにみこからしたら嫌だよな。俺は物心つく頃から見えてるから感覚がイカれてしまってるけど…」
「イカれてる、確かに…暁はどんなやばい霊でも冷静だしね。慣れると暁みたいになっちゃうのかな」
「流石に時間がかかると思うぞ?まだ数ヶ月そこらしか経ってないならな…」
「そう、だよね」
「何かあった時はいつでも頼ってくれ、愚痴も含めて聞いてやるさ」
「わっ……」
俺はみこの頭を撫でる。撫でられているみこは嫌がってる様子はなかった。
「(サラサラしてる…この長い髪を毎日手入れしてるんだな)」
改めて伝わるこの感触、触ってるだけでもすごく大切に扱っているのもわかる。
「ちょっ、暁…く、くすぐったい…」
「ああ、ごめん…つい、嫌だったよな」
俺は一言謝りみこの頭から手を離す。しかしどこか残念そうな雰囲気出していた。
「ううん、嫌じゃないよ。さっきはちょっとくすぐったかっただけだから……」
「そうか」
「ありがとう暁、色々話したからスッキリした」
「どういたしまして」
「それに…暁に撫でられるのは落ち着くし」
「ん?なんて?」
「なんでもない…それよりも行こ、このままだとバスに間に合わないよ」
確かにこのままだとバスに間に合わないが…今は八時前、おそらく待ち時間を含め帰り着くのは九時前になるだろ、普通ならな。
「みこ、提案がある…俺が送って行こうか?流石にもう遅いだろうし…」
「え、送るって…」
「俺の呪術、忘れてない?」
「暁の呪術……あっ、もしかして瞬間移動?」
みこは俺のしようとする事に気づき、目を見開いていた。呪術について話していたが、まさか体験するとは思わなかったのだろう。
「そう言うこと…母さん以外の人とは初めてだけど、準備ができたらすぐに飛ぶよ。一瞬だから瞬きする間に景色が変わってるけど…」
「わかった。じゃあ…お願いしようかな」
「OK、周りに人もいないし、ここで飛ぶよ」
みこは暁の差し出した手を握ると、二人はその場から姿を消した。
「はい、到着」
「ほ、本当に一瞬だった」
俺たちは今、みこがいつも乗り降りしているバス停の近くに移動していた。一応人気のない場所に飛んだが、みこはあまりに一瞬のことで驚きを隠せない様子だ。
「一応人のいない場所に飛んだけど…後は大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう暁…」
「平気だよ。流石に女子一人じゃこの時間帯は危ないだろうし」
「ふふっ、意外と心配性なんだね」
「そうか?」
「そうだよ…今日は本当にありがとう。それじゃあ、またね」
「ああ、またな」
みこは手を振り、俺も振り返すと背を向け自宅に向け歩き出す。
「さて、俺も帰るか…」
暁もその場で瞬間移動を使い、その場から離れるのだった。