◇みこside
「わっ、動いた!せんせーのお腹の中でうごめいてるよ!」
「あはは!うごめいてるか」
「はな、【蠢く】って表現は違くない?」
「ウネウネしてるーっ!」
「(その表現もなんか違う)…せんせー明日から産休だね…」
「あら、寂しいのみこ?」
「ちょっとね」
「あたしはすっごくさびしいよーっ!」
明日から担任の荒井先生が産休で休む事になる。私はハナと一緒に先生のファイルや書類を持ち付き添いをしている。お腹もすっかり大きく、その中に新たな命が宿っている。
「元気な赤ちゃん産んで早く帰ってきてね!授業中はあたしが抱っこするから!」
「おっ!!たのもしいね。おむつも替えてくれる?」
「それは、ちょっと…」
「なんでよ〜」
「(?…なんだろうあれ…)」
先生の腰あたりに何か…人魂サイズの何かが、するとそこから手のようなものが伸び、先生のお腹に触れる。
「あっ…」
「ん?どした?」
「あ…えっと…なんでもない…(先生のお腹に…どうしよう、伝えたほうが…でも…なんて言えばいいの?)」
「ありがとうみこ、ここでいいよ」
「あ…はい」
「私がいないからって一限目から早弁しないでよハナ」
「しないよ!三限までは我慢する」
「はは!それも早弁と変わりないじゃないか」
「…(伝えても不安にさせるだけかも…ブレスレットで追い返した方が)」
私は袖をまくりブレスレットが見えるようにして先生に近づく。
「せんせーっ!あ…なんていうかその…気をつけて…ね…階段とか…っ(あ、あれ?離れない⁈もしかしてこれ二級以上の⁉︎)」
「んん…?どうしたの急に」
「重いものももっちゃだめっ…とにかくっ…体…一番に…」
ブレスレットを見て離れないとなると手の打ちようがない…ど、どうしよう。
「…ありがとう、今度は大丈夫!」
「?」
「今度は…?」
「実は2人目なの」
「えっ…」
「2人目?」
「うん、生まれてこられなかったんだけど…男の子でね。この子はお兄ちゃんの分までめいっぱい可愛がってやるんだ。不思議だけど…大丈夫だって気がするんだぁ」
すると霊は小さな手を伸ばし、お腹に手を添えている先生の人差し指に触れる。
「……(じゃあ、先生に憑いてるこのれ、いや…この子は、お父さんと同じ)」
「ぜんぜー!やっぱりおむつ替え頑張る!」
「はっはっは、期待してるぞ」
ハナが涙目になりながら先生に抱きつく、もちろんお腹の子に影響を与えないように優しく抱きしめる。
その後は先生とあいさつを済ませ下校する。途中までハナと駅まで一緒に帰り、その後は1人、どう中この辺りで事故があったのか花束が添えられていた。
『タスケテ…タスケテ…』
その電柱にはガラスの破片が刺さっている霊がいた。基本無視すれば何もないのでブレスレットは使わない。
「はぁ…(たまにわからなくなってくる。暁には憑いてる霊は人に影響を与えたり人の性格を表してるって言ってたけど、それはいい意味でも悪い意味でもある。今回先生が憑いてたのはいい意味だろうけど…私に見えてるものはなに…?なんで見えるようになったんだろう…相談相手はいるけど、私自身もちゃんと一人で向き合うべきなのかな…暁やユリアちゃん、数珠のおばあちゃんみたいに…」
暁は呪術師の末裔、ユリアちゃんは前向きに霊と向き合い霊に困っている人を助けようと除霊師を目指しており、最近じゃ隠し事をせずに話せる仲だ。
「(私も…二人みたいに向き合って…)」
するとみこの目の前に自動販売機に吸盤のように吸い付く異形の霊がいた。下半身にはズボンをはいていて、背中には触手が生えており、口からも触手があり自販機に吸い付いている。
「(ちゃんと…向き合う…)」
みこは震えながら暁の作ったブレスレットを取り外し、霊に接近する。
『あったかーい、つめめたーい』
異形の霊はみこの方に振り向き触手からは涎のようなものが垂れ出ていた。一眼見たら誰もが食われると思う状況だがみこは…
「(うん、無理だ。……どう向き合えばいいのコレ…)」
なんの力もないみこには耐えられず、ブレスレットを身につける。霊はブレスレットを見た途端距離を取りそのまま離れていき。みこはいなくなったのを確認してつめたーいおしるこを買うのだった。
「みこ!おはよう!」
「あ、おはようハナ」
翌日いつも通り学校でハナが元気よく挨拶をしてくる。その手に持っているパンは変わらず携帯している。私には見えないけど、生命オーラが低下してるのかな?ハナは引き寄せやすい体質だから色々と心配だけど…霊が憑いていないところを見ると問題はなさそう。
「ねぇ聞いてよみこ!昨日自販機でジュースを買おうとしたら…こんなでっかい蛾がとまってたの!!しかもボタンのとこにだよ!!」
「…まさかそのまま押したの?」
「押すわけないじゃん!ちょっかい出すと顔に飛んできたりするでしょ?触らぬ蛾に祟りなしだよ!」
「…(暁なら無限でなんとかなりそう)」
みこは暁なら無限の壁でそんな事態にならないと想像していた。そんなハナはホームルームが間もなく始まるにもかかわらずメロンパンを食べようとしていた。
予冷がなり先生が教室に入ってきた。
「あ、新しい先生じゃね?」
「……っ⁉︎」
「荒井先生が産休に入られたため、今日から皆さんのクラスの担当になります」
そこにいたのは、暁に出会う前…捨てられた子猫を引き取ってくれる人をSNSで募集していた際、子猫を受け取りに来ていた一人、私が見た中で上位に入るくらいヤバい何かを連れていた、男の人……彼の傍からおぞましい何かが憑いているのだ。
「遠野善です。みんなよろしくね」
「結構いい感じ」
「えーマジ?」
「さわやかじゃん」
「優しそうでよかったー」
「アリっちゃアリ」
他の同級生は新しい先生に好評だが、私はそんなことを思ってる余裕はない。暁に会うまではわからなかったけど、空気が少し張り付くこの感じ、絶対特級案件だ…ハナが憑いてた時と同じ感覚だ。
「…(さ、暁に相談しないと)」
「あれ?あの人何処かで…」
ーみこsideend
◇暁side
「ふぅ…こんなもんか」
俺はいつも通り課題を済ませ背伸びする。最近は大きな出来事はなく至って平和だ。最近みこからも問題なく過ごせていると連絡がきたから今のところは大丈夫そうだ。最近じゃ二暮堂と仲良くしてるとのことだ。同じ学校に隠し事をせずに話せる相手がいるだけでもだいぶ違うからな。
「さて、そろそろ母さんも帰ってくる頃だし…夕食の準備するか」
帰宅して時間も経っており、夕食の準備のため立ち上がる。
「えーと、ある材料は……よし、今日はオムライスでもするか」
そして始まった調理、暁は鶏肉、野菜などを捌き、ライス用のソースを作りその手際に無駄がなく、どんどん出来上がっていく。
「ただいまー」
後はオムレツを作るだけのところで母の静江が帰宅した。
「お帰り母さん、夕食は後ちょっとでできるから少しだけ待ってて」
「うん、わかったわ」
母さんは荷物を置き、上着をハンガーにかけ、洗面台に向かう。手洗いうがいは大事。
「いい匂い、今日はオムライスかしら?」
「ああ、今回はオムレツに手を凝ってるから一味違うぞ?」
「あら、それは楽しみね」
母さんは出来上がるまでテレビをつける時間を潰す。
「よし、完成!今回のオムレツは一味違うぞ」
「わぁ、凄いじゃない!」
出来上がったオムライスは店で出されるような出来映えのものだった。
「「いただきます」」
オムライスを口にする。
「ん〜、このオムレツのトロトロ加減、ライスも卵に合わせて味付け…美味しい〜」
「よかった。上手くできてて」
静江には好評であり、これには暁も満足そうな顔をしていた。するとテレビの画面を見ているとちょうどCMが流れていた。
『ユルサナイ』
『かえして』
『なんでオマエが』
『しね』
『オマエさえいなければ』
『呪ってやる』
「…………」
CMに出ている女優にいくつもの霊が憑いていた。コレの場合は中身の性格が表れてる証拠だ。
「この女優さん、一体何をしたのかしらね?」
「さぁ、俺にもわかんねぇよ」
夕食を終え、食器を洗ってお風呂を済ませ後はゆっくりするだけ。今回はゲームでもしようと思う。
♪〜♪〜
「ん?誰からだ?」
メールではなく誰かが直接連絡しているのだ。俺の知る人は限られる為、絞ることは出来る。
「みこ?珍しいな…直接電話なんて」
相手はみこだった。今までメールのやり取りがほとんどだった為電話をするのは珍しかった。
「もしもし?」
《あ、暁…今、大丈夫かな?》
「ああ、大丈夫だ。それにしても珍しいな、みこが直接電話してくるなんて」
《うん、ちょっとね。暁の声も聞きたかったのもあるけど…それより、ちょっと緊急事態》
「………詳しく聞かせてくれ」
声からしてあまり穏やかなことではないのは確かだった。みこは冗談でそんな事は言わない子だ。緊急事態となると害を及ぼす霊関係だろう。みこによると、前の担任の先生が産休に入り、新しい担任の遠野善先生が来たのだが、その先生に憑いているものに問題があった。みこ曰く、俺と会う前に遭遇していたらしく…その霊は特級レベルとの事。しかし、その霊を祓うにも問題がある。
「みこの新しい担任に特級レベルの霊が…しかし、場所がなぁ…」
《うん、暁も知ってるだろうけど…私の学校女子校だがら》
そう、祓うにも取り憑かれている遠野善さんは女子校の教師だ。俺はその学校には立ち入る事はできないしましてや問題だらけだ。
「みこ、ハナは大丈夫なのか?」
《今の所問題はないかな…今回はHR以外関わる事はなかったからいつも通り変わらないよ》
「そうか、だけど彼女の事も気にしておいてくれ、もしかすると今後ハナの体調に異変が起きる可能性も危惧しておいた方がいい。はっきり言って今回はブレスレットの効果も意味ないかもしれないが…対策はたてる。辛いかもしれないけど…絶対になんとかする」
《……わかった、こっちも何かわかったら連絡する。頼りにしてるよ…最強の呪術師さん…》
「ああ、任せろ」
通話を終えて俺は早速、遠野善さんに憑いている霊の対処法を考える。
「(…今回は長引くのはよくなさそうだ。まずは情報が欲しいな…祓うならその人が学校外の場所じゃないとな……それに)」
ーー暁の声も聞きたかったのもあるけど
「………」
彼の頬は赤く染め上がっていた。
「(あらあらぁ……)」
ちょうど扉の隙間から見ていた静江がその様子を微笑ましく見守っていた。
「……〜〜〜っ!!?」
一方四谷家の一室では自身の頬が見る見るうちに赤く染まっておりベッドでジタバタしていた。
「(わ、私……さらっととんでもない事言ってた気が…)」
トンネルの一件で親友に言われたことをキッカケに、自身の気持ちに自覚した彼女は先程の通話の後から自分がさらっととんでもない事を言っていたのを思い出し、頭から蒸気が出るほど顔を真っ赤にしてた。