見える子ちゃんと呪術最強の子   作:狼ルプス

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現在三巻目にて突入です!


物の怪

 

「はぁ…」

 

「どうしたの暁、さっきから溜息ばっかりだけど…」

 

「うん、いつも以上に溜息が多いよね?」

 

先日みこから特級の霊に憑かれた新しい担任が来たと相談されたのだが、場所が場所のためどうしようも無く、学校外で探そうにも顔も知らないのでみこから情報がこない限り対処しようがないのだ。

 

今は昼休み、弁当を食べながら俺は無意識に溜息を吐いていたようだ。それを珍しそうに見る憂太と里香、まぁ相談できるような内容じゃないので話さない。二人は見えてるわけじゃないしな。

 

「なんでもない。二人が心配するようなことじゃねぇよ」

 

「そう?ならいいんだけど…何か困り事があったらいつでも聞いてくれ」

 

「うん!いつでも里香と憂太が相談相手になるから!」

 

「相談、か。ならさっそく一つ聞いてくれるか?」

 

「え⁉︎あの暁が私達にマジの相談事⁉︎」

 

「なんでそんなに驚くんだよ?」

 

「いや、珍しいだろ?暁が相談事をするなんて…」

 

「そうだったか?」

 

「うん」

 

そんなに珍しいのか?俺にはよくわからんが…まぁ、せっかくの機会なのでこの二人にしか聞けない相談をしよう。

 

「その、お前ら二人だからこそ聞くが…」

 

「うん?」

 

「なになに?」

 

「えっと、その…実を言うと…好きな人が、できてだな…」

 

「……………」

 

「……………」

 

「「え…??」」

 

突然の事に少し間が空きようやく声にする二人だが、その表情はありえないものを見るような表情だった。

 

「…………」

 

「えっ、と……暁、それ……マジなの?」

 

「マジだよ………」

 

「……ほ、本当の本当の本当にマジなの…暁?」

 

「………二度も言わせんじゃねぇよ」

 

「「…………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「えええええええええッッ!?!?!?」」

 

二人の声が屋上から響き渡る。その声を聞いた他の生徒が屋上の方を見上げていた。

 

 

 

 

 

「あの暁に好きな人ッッ!?」

 

「嘘でしょ⁉︎」

 

「………驚きすぎだろ。俺が冗談でこんなこと言うと思うか?」

 

「い、いや、思わないけど…」

 

「告白はしたの⁉︎」

 

「してねぇよ!ぶっ飛びすぎだ!!自覚したのだってつい最近なんだぞ?」

 

「ほほう!」

 

「暁の好きな相手って、多分前に言ってたみこって言う子でしょ?」

 

「他に誰がいるんだよ?女友達なんて限られてるぞ…」

 

「確かに…」

 

「暁って見た目の割に友達少ないもんね〜」

 

「うるせぇ、ほっとけ」

 

実際友達が少ないのは事実だ。普通に話す事はあるのだが、他の男からは嫉妬の眼差しで見られ邪険にされる事もあるし、女子からしつこく付き纏われたりで大変なのだ。唯一二人は俺を俺としてみてくれるので本当に助かっている。

 

「それで、暁は四谷さんの何処が好きになったの?」

 

「………そうだな、色々あるけど…芯の強くて、優しい性格…かな、あと、時折見せる笑顔が…」

 

「へぇ!」

 

「暁の口からそんな事を聞くなんて…すごいね、四谷さん」

 

暁は照れながらも好きになった理由を二人に打ち明ける。

 

 

「それで…なんかいいアドバイスはないか?二人は付き合ってるからその辺は詳しいと思ったんだが…」

 

「ウーン、暁も知ってるように、僕達は小学生の頃から両思いだったからアドバイスは難しいかな…里香は何かある?」

 

「私?ウーン、私は憂太と関わって一緒に遊んでいるうちに好きになっちゃったから…簡単に言えば自分の気持ちに素直である事かな?」

 

「自分の気持ちに素直に…か、【大人になったら里香と憂太は結婚するの】ってかんじにか?」

 

「ちょっ⁉︎や、やめてよー…今の歳になって自覚すると私ってとんでもない事を…」

 

「僕は嬉しかったよ里香…今でもその台詞はつい最近のように覚えてるよ」

 

「憂太…」

 

憂太の首にはチェーンに通した指輪がかけられていた。約束の証でもあり、里香にとっては愛の形なのだろう。

 

「……事実お前ら確定事項で結婚しそうだからなぁ…招待状は送れよ?」

 

「うん!もちろんだよ!」

 

「暁にも祝って欲しいしね!」

 

こいつら自分の世界に入って俺の相談事を忘れてるな、まあ…いい感じにアドバイスはもらえたからよしとするか、俺は俺のやり方でゆっくりやっていこう。俺達は食事を終え憂太と里香は屋上から退室する。普段昼休みの屋上は俺と憂太と里香しか使わないので滅多に人は来ない、爽快な天気の中でする読書は最高だ。

 

 

♪〜

 

「(メール?みこからか…)」

 

小説を読んでいるとみこからメールが来た。メールを見ると写真を貼り付けて《この人が遠野善先生》との内容だった。おそらくうまく写真を撮ることができたのだろう。

 

「ッ⁉︎」

 

俺は目を見開く、写真を見ると異形の怪物が憑いていたのだ。流石の六眼でも静止してる写真越しじゃどんな気配の流れをしているかはわからないが、これは怨霊の類だ。平安時代じゃ物の怪なんて呼ばれていたらしいが…

 

「(怨霊とくるか…その周りにいるのは…猫か?1匹だけじゃねぇな…やっぱり静止してる写真じゃ六眼も意味ないか…)」

 

映像や肉眼で見る事には六眼も発揮できるが…流石にみこにはリスクがありすぎる、仮に憑いていた霊に何かされて事故なんて起こったらたまったもんじゃない。

 

「(一先ず顔だけわかっただけでもよしとするか…)」

 

 

俺は《ありがとう、無理だけはするなよ?》と送り返し既読マークはすぐにつきみこから返信がくる。

 

《わかった、なんとか頑張る。それと先生に憑いてたヤバい霊、見つめてたせいなのか私の背後に迫って【みるな】って言ってた》

 

 

「(先生を見つめただけで背後に⁉︎思っていた以上にヤバいかもな……みるな、か…もしかして)」

 

ある推測に辿り着いた暁だが、すぐさまみこから連絡が来た。

 

《今日ミセドでキャンペーンやってるらしいけど…放課後暁も一緒にどう?》

 

「(ミセドか…偶にはいいかもな)」

 

俺は《OK、何処集合?》と送ると《ミセド前に来て、ハナとユリアちゃんも一緒だから私達も放課後向かう》と返信がくる。

 

「ふう、今回は思っている以上に厄介かもな…」

 

暁は空を見上げながら呟き、読書に没頭するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇みこside

 

 

「これ3つください!」

 

「胃に対する暴力だよ」

 

私の通っている女子高は現在昼休み中だ。購買部でハナが『チョコチップメロン練乳焼きそばパンBIG』と言うパンを3つ購入した。胃もたれがすごそうな組み合わせ…ハナなら余裕で食べれると思うけど。

 

「なんか朝からお腹空いちゃって」

 

「HRでメロンパン食べてたじゃん」

 

「あれは食べたうちに入らないもん。食欲の秋ってヤツ!」

 

「ハナは食欲の四季でしょ…」

 

 

食べたいものを買ってハナと教室に向かう。現在新しい先生に憑いてる霊に気を抜けないが、暁には既に相談している。まずは情報…せめて写真を撮ることを目的としている。

暁は先生の顔は知らないから対処しようがない。いまのところハナの体調に変化はなくいつも通り食欲も旺盛だ。

 

 

 

 

「それよりまだ思い出せないんだよねあの新しい先生のこと…絶対にどこかで見たことあると思うんだけど…」

 

「他人の空似じゃない?」

 

「そうかなぁ…うーんだめだ。お腹が減って頭が働かない」

 

「(ハナには見えてないから印象が薄いのかも…ハナの体調に今の所異変はないけど…注意しておかないと)」

 

「あっ!!」

 

「!ど、どうしたの?」

 

「食後のおやつパン買うの忘れてた!!」

 

「正気を疑う発言なんだけど」

 

あんな胃に暴力的なパンを三つ買った上おやつのパンの買い忘れって…その栄養は一体どこに運ばれてるんだろう…

 

「ごめんみこ!先に戻ってて!!すぐに追いつく!」

 

「ちょ…」

 

ハナはすぐさま購買部へ引き返す。戻るまでとりあえずここで待つことにする。

 

「はぁ…(ハナが思い出すと色々厄介なことになりそうだし…気をひく話題を用意しておかなきゃ)」

 

スマホのホーム画面を開き何かしらの話題を探す。ハナは食べ物には目がない為食べ物中心に調べる。

 

「(うーん、特にこれと言って話題のものは無さそう。偶には思い出話しでもいいかな…)」

 

ネットから写真のアプリを開く、アルバムには中学の時の写真や家族と撮った写真、景色など様々だが…見えるようになってからは霊が映り込んでしまっているのも少なからずある。

 

「あ…」

 

画面をスライドしている暁の寝顔の写真が出た。この写真は以前トンネルの時の帰りのバスで私に寄りかかって眠ってしまった時に撮った写真だった。

 

「ふふっ(こうやってみると、年相応な顔してるなぁ…)」

 

暁は背が大きくて大人っぽい雰囲気があるが、私と同い年の高校生だ。見た目は誰もが二度振り向いてしまうほどのイケメンだ。 

 

優しくて頼もしい、そしているだけでもとても安心感を与えてくれる。

そしてすごい力を持ちながらも善行にしかその力を使わない。暁の力は下手をすれば他人の命を奪いかねない力でもあるけど…私はその力で害のある霊から助けてもらっている。

 

「(私も頑張らなきゃ…)」

 

トンネルの一件でハナに言われた事をきっかけに彼女は恋をしている。暁はモテる為難易度は高いと思っている反面、二人は両思いをしていることにはまだ気づいてはおらず、両片思い中だ。

 

 

「あ…(先生、これってチャンスなんじゃ…)」

 

ふと窓の先を見ると、廊下には善が歩いていた。これをチャンスと思いみこはすぐにスマホを構える。すると背後には禍々しい霊が現れ、窓にバンバン!と音を立て、周りには猫らしきものも姿を確認できた。

 

「ッ⁉︎」

 

その光景にゾッとしたみこはすぐさまシャッターをきりそのまま逃げるように女子トイレに入る。

 

 

「はっ…はっ、はぁ…はぁ(と、撮れたよね?)」

 

みこは息を少し荒立ていたがすぐに落ち着かせ写真を確認する。写真は上手く撮れており、異形の霊もしっかり写っていた。

 

「(よかった…撮れてる。後で暁におく…)」

 

………

 

「うわっ(あっ、ヤバっ…声出たっ。しかもデカっ⁉︎)」

 

鏡を見ると首は長くお腹には口のある化け物の霊がおり、みこは思わず声に出してしまう

 

ん?

 

「(と、とりあえず誤魔化して…)」

 

みこはなんとか誤魔化しながら髪を後ろに束ねるようにしてブレスレットを見せる。

 

んっ⁉︎んぃぃぃっ⁉︎

 

ブレスレットを見た瞬間霊は怯えながらトイレから逃げるようにいなくなった。

 

「はぁー(よかった。二級以下だったみたい。気を抜くとこれだからなぁ…)」

 

涙目になりながらなんとか危機を脱したみこは膝をつく。

 

「ちょっ、みこ…どうしたのよ?」

 

「え…」

 

振り向くと弁当箱を持った二暮堂ユリアがいたのだった。口元にはご飯粒が付いているのを見ると、トイレでお弁当を食べていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このパン、なんか思ってたのとなんかちがう…」

 

「3個目で言うそれ…」

 

「ユリアちゃん食べる?」

 

「…いい」

 

食後のおやつパンを買い終わったハナと合流し、三人は校舎内の広場に設置されたベンチでお昼ご飯を食べていた。ユリアは既に食べ終わったので会話のみである。

 

「(先生に憑いてるだけじゃない、この学校内もヤバいのが多く潜んでる。暁のブレスレットがあるからって気は抜けない…今の所特級はあの先生に憑いてるヤバいのだけ)」

 

みこの学校にも見た目のヤバい霊は多く潜んでいる。大抵は暁のブレスレットのおかげで逃げていったりして難は逃れているが、気を抜くと先程のように、いつのまにか目の前にいるなんてことも何度もあった。

 

「ユリアちゃん、もしかしていつもあそこで食べてるの?」

 

「……別にっ…いいでしょ。どこで食べようと私の勝手でしょ」

 

「だめだよ。もうあんな所で食べないで」

 

「………じゃ…じゃあドコで食べろっていうのよっ」

 

「?そんなのあたしたちと一緒に食べればいいじゃん」

 

ハナはユリアにクリームパンを差し出す。ユリアは黙ったまま、ハナの差し出したクリームパンを受け取る。

 

「(別に…別にっ)」

 

「(よかったね、ユリアちゃん)」

 

みこはユリアが内心で喜んでいるのを感じ取れた。その姿にみこも少し笑みを浮かべた。

 

 

「っ…(まさかあの人が教師でうちのクラスの担任になるなんて…)」

 

2階の廊下に遠野善が歩いていた。今はヤバい霊の姿はなく、みこは善を見据える。

 

「(ユリアちゃんは見えて無さそうだけど、皆が危険な目にあわないように、私にヤバい霊をなんとかする力はないけど…私は私にしかできない事を… 『みるな』っ⁉︎」

 

背後にとてつもないのおぞましい何かがみこに呟き、一言言うとその姿は一瞬にして消えた。

 

 

「んー!やっぱシンプルが一番だね〜…えっ」

 

クリームパンを食べ終えたハナがみこを見ると瞳から涙を流していた。

 

「みこ…どしたのっ」

 

「…目に、カナブンが入った…」

 

「ヤバいじゃん!!」

 

「(……ナニかいたのかしら?私には見えないヤバいヤツが…)」

 

ユリアはみこの反応を見てただ事でない事を察した。みこは涙を抑え気持ちを落ち着かせた。

 

 

「そうだみこ!今日ミセドでキャンペーンやってるらしいの!放課後一緒にいかない?ユリアちゃんも!」

 

「う、うん、行こっか」

 

「わ、私も?」

 

「もちろん!」

 

ハナは二人をミセドに誘い、みこはスマホを開き先程撮った写真を文と一緒に送る。

 

「(とりあえず情報は送れた。後はどんな反応をするか)」

 

一分すると暁からの返信はすぐきた。《ありがとう、無理だけはするなよ?》との事だった。

 

「ふふ…(心配症なんだから)」

 

みこはすぐに先生に憑いてたヤバい霊が背後に迫り、【みるな】と言っていた事を伝える。

 

「みこ、もしかして暁くんと連絡してるの?」

 

「えっ、う、うん…そう」

 

「ヘェ〜、相変わらず仲いいんだね〜。そうだ!折角だし暁くんも誘う?」

 

「暁も?」

 

「うん!人数が多い方が楽しいし!」

 

「…わかった。聞いてみる」

 

みこは暁を誘うとOKと、連絡が来て、ミセド前で放課後に待ち合わせ場所を伝えた。

 

「ハナ、暁も大丈夫だって…」

 

「やった!それで、最近暁くんとはどうなのみこ?何か進展あった?」

 

「ど、どうって…別に変わらないけど」

 

「えーほんとに?」

 

「ほ、ホントだよ」

 

最近ハナはみこの恋愛方面にグイグイ質問してくるようになってしまって、この話になると簡単には引き下がってくれない。

 

「チューはしたの?」

 

「出来るわけないでしょ⁉︎」


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