「姉ちゃんが変?」
「うん」
初めましての人は紹介するけど、オレは四谷恭介…普通の小学生高学年だ。最近姉ちゃんの様子が変で、突然顔色を悪くするときもよくあり、最近じゃ上の空があったりと絶対何かあったのかと思い、学校の友達に相談している。
「変ってどんな風に?」
「ため息が多くなったりぼーっとしてる時があったり…あと寝言でだめだめ…ってうなされてたり…」
「なるほど!さっぱりだな!」
「お前に聞いたオレがバカだった」
聞いておいて即答かよ。こいつに話したオレが間違いだった。
「カレシね」
「は?」
恭介に話しかけたのは同じクラスの女子だ。その発言に恭介は目を見開く。
「ウチの姉ちゃんもカレシできた時そんな感じだったもん。乙女って好きな人に身も心も捧げちゃうんだから!わかる?」
カレシ……あのねえちゃんにカレシ?そういえば前起こしに行った時五条さんとか寝言で言ってたけど関係してるのか?
「(学校帰り、姉ちゃんの後をつけよう)」
今の恭介には女子の話は聞こえておらず、尾行を決行する事を考えていた。
◇
「うーん、あんまり役に立たなそう。やっぱり五条さんに聞いた方が良かったかな…」
姉のみこは書店により『超常現象怪異UMA』という本を手に取り立ち読みしていた。霊の事について少しでも知識に入れておこうと寄ったが、役には立つ内容はなかった。
「(五条さんからは相談、呪術について、心霊スポットやいわくつきの建物には近づくなって聞いたくらいだったから…霊の一定の行動パターンとか聞いておけば良かった。あの人いると本当に敵なしだったから…)」
みこは暁といる事で安心感を持つ様になったが、霊についてや、行動パターンも聞いていないので知識はなかったのだ。
その一方で、本棚端には一人の少年がみこを見守っていた。
「(姉ちゃんにカレシが…なんでオレに隠してるんだ?まさか、悪い男に騙されて……野郎ォ…許さねぇ!!姉ちゃんはオレが守る…!!)」
彼の中に勘違いが起こってしまい、恭介は姉を守ると誓うが、既に国宝級イケメンの最強の呪術師に守られている事はまだ知らなかった。
「今日五条さんに聞いてみるか…」
「四谷さん?」
みこは本を本棚に戻した途端覚えのある声に振り向くと彼がいた。
「五条さん!どうしてここに?」
片手に本を持っている暁がいたのだ。制服姿でサングラスを身につけていない為、本屋にいる女性からは視線が集まってしまう。
「どうしてって…新作の漫画が今日発売日だったから買いに来たんだけど……そしたら偶々君がいただけだよ」
「そ、そうなんだ……」
「なんだよ、その意外そうっていう顔は?」
「えっと、ごめん…本当に意外だったから」
「俺をなんだと思ってるの?」
「えっと、完璧超人?」
「なんで疑問系?俺だってゲームもするし、漫画だって読むわ」
みこは暁がそう言った娯楽にも興味があるのは意外だったらしく、知らない一面もあるとわかると、みこは笑う。
「ふふっ、五条さんもそういうところもあるんだ」
「そういったものに手は出してないと思った?」
「うん」
「まぁ、学校の友人を除いて、実際周りのやつも同じこと思ってんだろうな」
「五条さん、友達いたんだ」
「俺がボッチとでも思ったの?地味に傷つくんだけど」
「ご、ごめん」
実際俺の事をわかっているのは友人である憂太と里香だけだ。まぁ女子からしつこく何か誘われたりこそこそ何か言われたりされるから毎日が大変だ。実際過去にストーカーをされた事もあるからちょっとした事件にもなった事もある。
「それで、なんで四谷さんは心霊関係の本を読んでたわけ?」
「えっと、私最近見えるようになって悩みと五条さんの呪術しか聞いていないと思って、霊の知識がなかったから…それで本を探していたんだけど、役には立ちそうなのはなくって五条さんに今日聞こうと思ったら…」
「俺が丁度来たってわけか…」
「うん」
「なるほどね、ちょうど近くにカフェもあるしそこで話をしようか」
「わかった」
暁は取り敢えず漫画を購入し、外で待っていたみこと一緒に近くにあるカフェへと向かった。
しかしそれを見守っていた人物は空いた口が塞がらずただ黙って見守るしかなかったが。
「(だ、誰だあの超イケメンな兄ちゃんはぁぁーー!!)」
内心でかなりテンパっており、動揺していた。まさかあれだけのイケメンが姉のカレシとは思ってもいなかったのだ。
「(って!それどころじゃねぇ、話し声は聞こえなかったけど、なんの本読んでたんだ?)」
取り敢えずこれ以上尾行を続ければバレると判断し、恭介は尾行を諦めたが、先程みこがいた場所の本棚の前に立ち、姉が読んでいたらしき本を手に取る、内容は『恋人を喜ばせる99の方法』と書いてあり、その本を読むと、ワナワナと体を震わせた。
◇
その夜、みこは暁とのカフェで話を済ませ、家に帰宅し、夕食を済ませお風呂で湯船に浸かっていた。
「ふぅ…(五条さんの話、やっぱり分かりやすかったな。お守りがあるとはいえ、今後も霊には見える事を悟られないようにしないと、それに) あー…家の中で寛げるの、最高!」
みこは手足を伸ばしながら存分に湯船で寛いでいた。暁からもらった霊避けの御札のおかげで、家にいる霊は父以外見ることはなくなった。
「(霊の共通点、見えるものには襲いかかってくる……か)」
みこはカフェでの会話を思い返していた。
「なにを頼む?」
「えっと、私は紅茶とチーズケーキを…」
「じゃあ俺もチーズケーキと、飲み物はココアで…」
私は紅茶とチーズケーキを頼み、五条さんは同じチーズケーキと、飲み物はココアを注文した。
「五条さん、霊についてだけど……何か似たような共通点はなかったりしない?」
「共通点?」
「うん、例えばお化けは夜に活発に動いたりとか…そんな感じの」
私は例えを五条さんに伝えると考える仕草を取る。
「共通点…か、霊の特徴は各それぞれだし共通点って言われると……っ!四谷さん、今まで遭遇した霊に、《お前、見えてる?》とか言われたりされなかったか?」
「っ!うん、言われてる」
「その共通点は…認識したら襲ってくる。認識するまで襲ってこない。つまり、分からないふりをすれば襲ってこない。四谷さん、俺が君と初めて会った時、君に憑いていた霊が俺が見えてる事に気づいた途端、襲ってきたのがいい証拠だ」
「た、確かに…も、もし、私が見えることがバレていたら…」
「恐らく物理的には問題はないだろうが、何かしら影響が起こる可能性はあるな…ただ、俺もどうなるかわからないからあくまで推測だ。一応ブレスレットもあるとはいえ、見えないふりは継続していた方がいい」
「う、うん」
「後、小さい霊、小さいおっさんのような霊を見ることがあると思うけど、基本その近くに大きめの霊もいるから注意してて」
「わかった」
その後は普通に会話をしながらケーキと飲み物を飲み、その日は途中まで一緒に帰り解散した。
◇
「(小さい霊の近くに、大きい霊もいる…か)」
私は五条さんから教えてもらったことを頭の中で整理する。改めてどんな存在か共通点も分かっただけでも少しはマシになってきた。
「(五条さんのブレスレットのおかげで近づかなくなったとはいえ、それでも怖い事には変わらないけど)」
「姉ちゃん!たまには一緒に……」
突如風呂場の扉が開きバシャン、と音がなるほどみこは驚き湯船に一瞬沈んだ。
「きょ、恭介、ビックリさせないでよ!(心臓に悪い!)」
「あ、ごめん(よかった…キスマークは無いっ…ってかオレってついこないだまでいっしょにはいってたのに……あれっ、急にはずくなってきた…)やっぱ…オレあとで…」
「いいよ、もう入ってきてしまったんだから…背中くらい流してあげる」
「え、うん…ありがとう」
もう恭介は入ってきてしまったので取り敢えず姉弟水入らずで背中を流す事にする。
「…姉ちゃんカレシ出来たの?」
「…何?急に…」
突然どうしたんだろう、カレシの事を聞くなんて…
「やっぱ出来たんだ…」
「いや、いないけど…」
「別に隠さないでいいよ」
「隠してないよ」
「ふーん…(言えないほどの関係までいってるのか?五条ってやつと)」
「(彼氏…か)」
——それに俺、四谷さんみたいな女の子……結構好きだよ
「っ!(まただ、あの言葉と五条さんの姿が、なんで浮かぶの?)」
みこは頬を赤くし気を紛らわせるように弟の背中を流すのだった。
「ハックシュッ!!なんだ?」
一方その頃、人のいない何処かで彼はクシャミをしていた。そして目の前には武者のような異形の存在がいた。
『*#@¥$€%÷!!』
「ずず、何言ってるかわからねぇよ……喋るならちゃんと言葉で喋れよ雑魚」
霊は凄まじい殺気と黒いオーラを放出し、暁に目掛けて音の速さで武器投げ攻撃をしてくる。
しかし、暁に向けて投げた武器が、暁の前で静止した。
霊は暁へ突っ込むが、攻撃を当てることは叶わなかった。暁は霊を蹴って吹き飛ばし、
「まだまだ!」
『$€%÷⁉︎』
霊の背後に瞬間移動して、更に蹴り飛ばす。霊はバウンドしながら転がり、勢いが収まると、武者の霊は顔をあげ殺意を剥き出しにして呪詛を唱えるように暁を睨む。
「さてと、大した事ないし、そろそろ終わりにさせてもらうよ。最後にいい事を教えてやるよ」
そして暁は人差し指を向けると、赤黒いオーラが集まっていた。
「無限とは至る所にある。俺の呪術はそれを持ってくるだけ。収束、発散…この虚空に触れたらどうなると思う?」
それを見た瞬間霊はその場から逃げ出そうとするが既に遅かった…
「術式反転・赫」
呟いた途端、人差し指の先に集まっていた小さな赤黒いオーラが強く光を放った瞬間、大きな爆発音と共に武者の霊をのみ込んだ。
「うーん、加減してもこれか…周りは取り敢えず大丈夫…みたいだな、今回は全く人のいない場所だし。大丈夫だろう」
暁は両手を組み、瞬間移動でその場から離れるのだった。