クレヨンしんちゃんとFate/stay nightのクロス

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クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ聖杯戦争

「父ちゃんと母ちゃんはまたずれ荘の皆の所に行ってくるから留守番頼むぞ」

 

「すぐに帰って来るけど眠くなったらちゃんと歯磨きして寝るのよ。あんまり夜更かししちゃダメよ!ひまの事お願いね」

 

「ブ、ラジャー!泥船に乗ったつもりでオラに任せてよ!」

 

 

それを言うなら大船だろ……ガクリと肩を落とす。そう言い残しながら二人は家を出ていった。夕食を終えて一家団欒のひとときを過ごしていた野原家に一本の電話が入ってきた。最近世間を賑わせているガス漏れ事件。以前に一家が暮らしていたアパート、またずれ荘でも発生したのだと。幸い死者は無かったとの事だが懇意にしていた住人達が気になり搬送先の病院へ向かう事にしたのだ。

 

 

 

 

 

「ワーッハッハッハッハ!とうちゃんもかあちゃんも居ないからオラは自由だー!アクションビーム!ビビビビビー!」

 

テレビに映るアクション仮面に合わせ同じポーズを取るしんのすけ。辺りにはチョコビやジュース、おもちゃが散乱し正に好き勝手やっているといった状態だ。

 

しかし、時間が経つにつれ騒がしさも鳴りを潜め、しんのすけはまたずれ荘の皆の事を考える。

 

「四郎君に優ちゃん、大家さん。他の皆もお元気にしてるかな」

 

腕を組み、ムムムと数秒程考える素振りを見せる。

 

「よし、オラもお助けに行くゾ」

 

寝室でぐっすり眠るひまわりを確認し、三輪車をキックボードの様に扱い病へ向かうしんのすけ。幸い病院は幼稚園のバスの通り道に在り比較的近くでもあるのでしんのすけの足でも十分に向かえる距離に在る。

 

家を出て10分と経たない内にいつも春日部防衛隊の遊び場になっている公園の前を横切ろうとする。が、中から金属のぶつかり合う音が聴こえ足を止めてしまう。

 

「もー、こんな夜遅くにご近所迷惑だゾ。春日部防衛隊としてみすごせませんな」

 

公園を覗き込むと交差する赤と青の影。影としか捉えられない程の速さ衝突を繰り返す赤と青。その度に甲高く忌避感を覚える音が響き渡る。数度のぶつかり合いの末に密着し停止する影。それは双剣と槍の鍔迫り合いを行う2人の人影であった。

 

「あの青い人。も、もしかしてアクション仮面!きっと悪者と戦ってるんだゾ。……でもアクション仮面あんな武器持ってたっけ?そもそもなんか幸薄そうな感じがす「見られたか!」

 

 

ギロリと音が聞こえそうな程に強烈な視線。それは決してしんのすけが憧れるヒーローのものではない。ひぃっと息を呑み込む。味わったこの無い恐怖。背を向け走り出すと再び響き渡る争いの音。

 

恐ろしくてたまらないので本当は父や母のもとに行きたいが家と病院では断然家の方が近いし、家の中に居ればきっと大丈夫。来た道を戻り家に入りすぐさま鍵を掛けるとそのままへたり込んでしまう。大抵の事では動じないしんのすけも只事では無いのが分かったのだろう。

 

「こ、怖かったゾ」

 

荒い息を整えて廊下を進む。両親の不在は心細くあるが、布団に入り明日目を覚ませばいつも通り。またずれ荘の皆は明日見に行けば良いだろう。そんな風に考え寝室に向かおうとすると背後からバキリと何かが壊れる音。続いてギィと扉の開く音がやけに大きく聞こえる。佇む青い男。手には朱い凶器。

 

「うわぁぁぁ!」

 

ドタドタと奥へと慌てて逃げるしんのすけ。ドテッと転んだ音もする。心底嫌そうな顔をしながら歩いて追う青い男。先の部屋ではひまわりを抱えたしんのすけが押し入れの中に入ろうとしている。中からゴソゴソと聞こえるがやがて静かになる。引戸に手を掛けほんの少し力を込めれば簡単に開く頼りない防壁。ただ、開けた途端になだれ落ちる布団に等の生活用品には少し面くらい2、3歩後ずさる男。その間に庭へ向かうしんのすけ。

 

「嫌な仕事だ」

 

そう呟き庭へ出ると先程までより随分と騒がしくなっている。ひまわりを連れて逃げる事が出来ないと悟ったのか目尻に涙を浮かべ犬小屋の入り口を自身の体で塞ぐように立つしんのすけ。犬小屋からは目が覚めてしまったのかひまわりの泣き声。犬小屋としんのすけの隙間から顔を出し、家族の敵に威嚇し唸り声をあげるシロ。

 

「つくづく嫌な仕事だ」

 

嫌そうにそうこぼしくるりと槍を回し刃先を向ける。とここで感じるある違和感、いやチグハグさ。青い男、ランサーは戦士だ。彼と対峙する者は武器を手にするだろう。だがこの時代、一般的な家庭ではそんな物有るはずも無い。精々調理器具か工具かが関の山。

 

「助けてー、アクション仮面っ!」

 

嗚咽の混じった声で架空のヒーローに助けを求めるが返事は帰ってこない。

 

「助けてー、とおちゃん、かあちゃん!」

 

次に1番頼りになる家族の名を呼ぶが無論返事は無い。

 

ランサーの感じたチグハグさは最もだ。武器など本来持ち得ないこの時代の小さな子供が自分に『刀』を向けているのだから。先程までは持っていなかった。きっと押し入れに隠れた時に持ち出したのだろう。では何故そんな物が野原家に有るのか。

 

「助けてーーーーーー

 

 

 

最後に在らん限りの力で叫んだ。しんのすけの知る最も強い戦士の名前を。手にした刀が野原家に有る原因である魔法と呼べる奇跡が起きたこの場所で。

 

  

            

                 ーーーーーおまたのおじさんッ!」

 

 

 

「7人目のサーヴァントだと!」

 

溢れ出る光の中現れる男の斬撃を防ぐランサー。彼を尻目に現れた男、セイバー、真名井尻又兵衛由俊はしんのすけへと顔を向ける

 

「なんだ、また泣いてるのか。安心しろしんのすけ、今度は俺が助ける番だ」

 

 

 

2度目の奇跡が起こった夜。澄み渡る夜空には雲が浮かんでいた



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