今回の章はこれまでの章とは異なり暗い内容になります
また、それに伴いグロ描写なども存在するので苦手な方はお気を付けください
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それと、本編の雰囲気が好きだと言う方もブラウザバックをして頂いて構いません
PrologueーThe scenery is helplessly monochromeー
天の神との戦い──西暦から続いた勇者の戦いは幕を閉じ、四国のみが生存圏となっていた世界は本来あるべき姿を取り戻した。人智を脅かす驚異の失われた世界から勇者の力は失われ……同時に人類は神の恵みを失った
「……今は、大体京都くらいか?」
まさか使うことになると思っていなかった俺は、西暦の時代の荷物を引っ張り出して四国を出た。元々俺はあの地方の人間ではないし……この身体も人と言うには異常過ぎる、今まで俺の出会ってきた人々がいい人達ばかりだっただけで、普通の人間から見えれば俺は不老不死の化け物以外の何物でもない
何よりも──
「世界を取り戻したあの場所に……俺の居場所はない」
その言葉を発した瞬間、僅かに熱くなった腕輪を見る。若葉たちの想い──これまで俺が関わってきた人たちの想いが詰まったこの腕輪は、どうやら俺の発した言葉を否定したいらしい、けど
「別に気は使わなくていいよ、化け物だと思われるのには慣れてる」
長く生きている中で、化け物扱いされたことは一度や二度じゃない。それこそ西暦の時代は反勇者派といった奴等だって存在した、勇者の事を恨み……天の神を崇める。そう言う奴等だって今まで見てきた……そして、見てきたからこそ俺はあの場所にいるべきじゃない、そう思ったんだ
「それに、一人でいた方が忘れずに済む」
今までは、天の神を倒すという思い……悪く言えばこんな世界にした奴等に対する復讐心を持つことで忘れずに済んだ、けれど天の神を倒した今……俺にはあの場所は暖かすぎる。あの暖かさに包まれていると、忘れてしまう。俺が背負うべき人達の想いを、そして────
────俺が今まで奪って来た、人々の命を……その十字架を
⇌ 神世紀 71年
天の神との戦いが集結し、西暦は神世紀という新たな時代を迎えてから、早いもので七十二年の月日が流れた。そして俺は一人……進んでいく時間の中に取り残されたまま、立ち止まっていた
「死ねない老けないってのも……考え物だな」
雪花を失って以降、こんな気持ちになることはなかったからもう大丈夫だと無意識的に思っていた……けれどそんなことはなかった、若葉も、ひなたも、タマも杏も友奈も千景も……みんな俺と違って自分の時間を進んでいる。老いていく……俺の事を、置き去りにしている
「ははっ、ひっでェ面だな」
鏡に映る俺の姿はまるで幽霊か悪鬼か……そう思わせるほどに酷い顔だった。時刻は夜の二十二時──今日も、仕事の時間だ
「今日の標的は白神教の研究施設──確か違法な研究をしてるとか大赦で掴んでる場所だったな」
闇夜に同化するように黒い外套に身を包み、手に持った端末を確認するとそこに映っていたのは白神教という宗教団体が所有している研究施設の見取り図……そして、俺が始末する必要のある対象の顔写真
「元大赦所属の役員が二人か、いちいち手を煩わせやがって」
どれだけの期間があるのかは知らないが折角若葉たちが勝ち取った猶予期間……天の神をぶっ殺す手段を確立させればいいものを奴等は天の神を崇め、人類の破滅を目論んでいる。本当に──反吐が出るほどに何の感情も湧いてこない
「それじゃあ、始めるか」
親指の皮膚を嚙み切って出血をさせ、浮遊する血の塊を手で弄びながら施設に向かって降下していく、今回の仕事はあくまでもこの施設の壊滅──ご丁寧に武装をしたうえで呑気に欠伸をしている警備員の前に降り立ち──
「な、何だお前ッ!」
「悪いな」
──警備員を昏倒させる。別に殺しても問題はないのだが殺しは必要最低限で済ませる方がいい、気配を消して施設の中を進みながら俺は自分がどうしてこんなことをしているのかを思い返す
事の発端は些細なことだった、神世紀も大体三十年くらいに差し掛かった頃。相も変わらず俺の事務所を訪ねて来ていた杏とタマの姿を見て──俺は自分だけが止まった時計の上にいることを思い知らされた。見知った人が老いていく光景、俺たちの間にある繋がりは何も変わっていない筈なのに……俺はどうしようもなく怖かった、もう一度大切な人たちの死に際を看取らないといけないのかと、もし看取ってしまった場合──俺は自分を保っていることが出来るのかと
だから俺は丸亀を離れて……若葉たちの目が届かない場所、象頭町へと引っ越した。何も言わずに引っ越したことでみんなからメールやら連絡は来たがそれには謝罪の言葉だけを返してそれ以来連絡は取っていない
そして、象頭町で生活を始めてから少し経った頃に天の神を信仰する白神教の存在を知り……俺は自分の中にある恐怖を紛らわすという意味でも大赦の持ってくる白神教壊滅の依頼を請け負うことにしたのだ……その過程で、もう若葉たちに合わせる顔がない程に全身が血で汚れちまったがもう俺から会いに行くことはないから別にどうでもいいだろう
そんな感傷に浸りながら目的の場所までやってきた俺は目の前にある扉を蹴りで破壊して中に入ると。驚いたような顔をした役員連中が俺の方を見てくる
「き、貴様は──ッ!?」
「ようご老人、歓談中の所邪魔しちまってわりぃな」
その言葉と共に片方の役員の首を狙いナイフを投擲する。うまい軌道で役員の首に突き刺さったナイフの隙間から血が噴き出し一人目の始末が完了する
「そ、そうか……お前が大赦お抱えの暗殺者かっ!」
「暗殺者? んな御大層なもんじゃねぇよ……俺は只の殺人鬼さ」
親指から流れ出ている血液を操作してハルバードを生成すると、俺は残ったもう一人に向けて刃を向ける
「それじゃあ、残りにもさっさと死んでもらおう──ッ!」
早急に殺そうとしたところで、殺した筈の一人目が立ち上がりこっちに刺突攻撃を仕掛けてきた。よく見ると刺さっていたはずのナイフが落下して傷跡は白い皮膚で再生が始まっている。腕も餓鬼とかそこら辺を思わせる化け物になってる辺り……成る程、こいつらもか
「どうだ暗殺者! 我々は人の姿を超越した存在になったのだ!
「人智を超越した? 化け物になったの間違いだろう」
よく見ると最初に殺した一人だけじゃない、残りも身体の面積が肥大化しその姿を完全な化け物へと変化させている
「死ねぇ! 暗殺者!」
振り下ろされる巨腕をバックステップで避けると背後に回り込んでいたらしいもう一人がラリアットを仕掛けてくる。まぁ腕がデカい分足場にもなるから有難い──と言うことでその腕を利用して天井まで飛び上がりハルバードを突き刺してそのまま安全な場所まで移動する
「成る程な、パワー特化型って事か。見た感じ皮膚も厚そうだし厄介だな」
厄介そうだが──楽しめそうだ
俺のその言葉を聞いたらしい二体の
「ハ、ハハハッ! どうだ暗殺者! この肉体は!」
片方に集中しすぎたな、救い上げるように合間を縫って攻撃をしてきた二人目の拳は俺の身体に当たり衝撃が全身を襲い掛かる。あぁ、これアレだな、肋骨ぶっ壊れた……けど、不思議と痛みは感じないそのまま地面を転がって動くことの出来ない俺の近くに、三体の怪物が近寄って来る
「大赦お抱えの暗殺者と言えど……人智を超越した我らの敵ではなかったようだな!」
「どうする? この暗殺者はかなり上質な素材だ」
「殺したうえで死体に細胞を植え付ければ最強の兵士として我々の駒となる。ヤツを使えばあの忌まわしき”勇者ども”を殺すことも可能だろう」
「それもそうだな! ハッハッハッハッ!!」
何とも三下のやられ役らしい会話だな……それにしてもこいつら何て言った? 勇者を殺すだと? それ以前に──俺を殺すだと?
「ははっ、そりゃあいい……殺せるなら殺してくれよ」
「ほう、それなら貴様の願い通りにしてやろ────う?」
手元に呼び戻したハルバードを使って一体目の腕を切断する
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ────何故だッ!? 何故再生しない!?」
「なぁ、俺を殺すって言ったよな? それなら殺してくれよ──俺を、俺をこの止まっちまった時計の針から解放してくれよ?」
なぁ? 解放出来るもんなら解放してくれよ────────
そこからは流れ作業だった、腕を落とされて動揺していた一体目の首を落として始末し。逃げ出そうとした残りの一体は後ろからハルバードで突き刺して内側から全身穴だらけにしてやった
「こ……の……」
どうやらここまでやっても多少息があるらしい、大した生命力だ
「この…………化け物…………め────」
最後の一言を聞き終えた俺はもう一人の頭を踏みつぶして完全にその生命を終わらせる……それにしても──
「化け物……か、ははっ──」
────そうだよな、きっと今の俺はこいつらよりも…………化け物だ
大赦の奴らに連絡してから見上げた夜空は──俺の瞳にはどうしようもなくモノクロに映った
― 紹 介 ―
不知火要〘神世紀71年〙
西暦の戦いや、不知火之日常での交流を続け神世紀30年を迎えた頃に実感してしまった仲間たちと自分に存在する時間のずれ。そしてそれによって自分一人が取り残されているような孤独感に襲われた状態になってしまっている
少しでも恐怖から逃れる為に丸亀から象頭町へと移り住み、ひっそりと過ごしていたが天の神を信仰する宗教団体”白神教”の存在を知った所で大赦から接触され、白神教壊滅の依頼を引き受けた
白神教を壊滅させる段階で天の神を信仰し大赦を裏切った者達の暗殺や研究施設の壊滅させるために多くの人を殺し、それによって自身の手が血で汚れていること……そして今の自分には若葉たちに会う資格はないと考えるようになっている
当時感じていた恐怖は既に諦観に代わってしまい、現在では死に場所を求めて白神教との戦いに身を投じている
若葉たちと戦っていたころには辛うじてあった目の輝きは完全に失われており、とても冷たい目をしている他にも目に映る光景はモノクロにしか見えず、味覚も鈍くなってしまっている。その為仕事以外は寝て過ごし、食事はゼリー飲料で済ませている