不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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連載を開始してから今までで一番悩みました


8話-雨降って地固まる-

月の光が照らす月の中、俺は一人千景が若葉に言った事を思い返していた

 

 

 

あの戦いの翌日、目を覚ました俺は友奈の様子を見に行くと既に千景が来ていた

 

「来てたのか」

「えぇ...」

「...すまなかった」

「どうして...貴方が謝るの?」

「俺がフォローしきれていれば、友奈は今より軽傷ですんだかも知れないから」

「それなら、謝る必要はないわ...あの時は全員に余裕がなかったから...それでも、割り切れないものはあるから」

「いや、あの場で千景が言ってくれなかったら、きっと他の誰かが若葉に怒りをぶつけていたと思う」

 

あの場所では千景のやったことが最善だったと思う

それから話すこともなく、二人で友奈の事を見ているとタマと杏の二人もやって来た

 

「二人も来たんだな」

「おう!」

「やっぱり心配ですから」

「早く目を覚ますと良いな」

 

話す事も思いつかず四人で友奈の病室の前にいると残りの二人、ひなたと若葉もやってくる

 

「よう」

「あぁ...友奈の様子は、どうだ?」

「...まだ意識は戻りません」

 

若葉の問いに杏がそう答えると、若葉は目を伏せ俯いた

 

「大丈夫ですよ...この病院には、最良の設備と最高の医師が揃っています。検査でも、命に別状はないということでしたから」

 

ひなたはそういうが、全員の気持ちが明るくなることはない

友奈が死ぬはず無いと信じているが、それでも不安が無いと言ったら嘘になる

 

「どうして...こんなことに...」

「これが...貴方の引き起こした結果よ...」

 

拳を握りしめてそういう若葉に対して、千景は一歩前に出てそういった

この中で友奈と一番仲の良かった千景にとって、今回の原因が若葉であると感じてしまっている以上責めたくなってしまうのだろう

若葉の方も自分の独断専行が原因であることは理解しているだろう

 

「なぜこんなことになっているのか...貴方は分かっているの?」

「分かっている。私の突出と無策がすべての原因だ...」

 

若葉のその言葉を聞いた千景は振り絞るように言葉を発する

 

「違う......!」

「やっぱり貴方はわかっていない...!一番の問題は、戦う理由なのよ...!」

「戦う、理由?」

 

若葉の戦う理由?

 

「あなたはいつも、バーテックスへの復讐のために戦っている!...だから怒りで我を忘れてしまう!自分が周りの人間を危険を晒しても、気づきさえしない!」

 

千景の声が病院の廊下に響く

その言葉はここにいる全員に聞こえていたが誰も若葉を擁護することはできなかった。

 

「あなたに、私達のリーダーとしての資質なんて、ない...!貴方が戦うことで、高嶋さんは傷ついた...高嶋さんだけじゃない、みんな傷ついていく!...きっとそれは、これからも変わらない!...だったら、もう――」

「そこまでだ、千景」

 

これ以上は本当に取り返しがつかなくなる、そう思った俺が千景の事を止めると、杏が声をかけてきた

 

「流石に言い過ぎです、千景さん。若葉さんは今までずっと先頭に立って戦ってきたんですよ。そのやり方が強引でも...すべてを否定するのは間違っています」

「ここで言い争っても友奈が目覚める訳じゃない...頭を冷やそう」

 

千景は踵を返して廊下を戻っていく、もうこの場にいる意味が無いと思った俺も、自分の病室に戻ろうとすると杏が声をかけてきた

 

「要さんは...どう思ってるんですか?」

「俺は若葉の過去を知らない...だからわかったような事を言えない...だが、これからも若葉に背中を預けたいとは思っている」

 

その言葉を最後に俺はその場を後にする

 

 

 

 

あの日の事を思い出しているうちに、どうやら眠ってしまっていたようで気が付くとカーテンの隙間から日が射していた、平日ではあるが教室に行く気が起きなかった俺は杏に今日は休むとメッセージを送ると私服に着替え、部屋を出る。

 

「とりあえず部屋から出たが、何をしよう」

 

適当に宿舎の周りを歩いていると、一台の自転車が目に入る

あの戦いが起きる少し前に大社から支給された軍資金で買ったものである

やることも思いつかないしたまには気ままに自転車を走らせるのも良いかも知れない

そう思った俺は自転車の鍵を開けると自転車に跨った

 

 

適当に自転車を走らせていると、少しだけ気分がマシになってくる

よく考えてみるが俺は若葉の事をほとんど知らない、彼女の過去もほとんど聞くことはなかったし聞こうとも思わなかった

 

「帰ったら少しだけ、話をしてみるか」

 

思い立ったが吉日だと思い、自転車を反転させると見知った顔が目に入る、相手も俺に気が付いたのか目を丸くしていた

 

「要さん?」

「杏と...若葉?」

「こんなところで何をしてるんですか?」

「少しだけ、気晴らしを...そういうそっちは...聞くまでもないか」

 

杏の横にいた若葉の表情は昨日までとは異なり晴れやかなものに変わっていた

 

「振り切れたみたいだな、若葉」

「あぁ、心配をかけてすまなかった」

「謝る必要はない」

「そ・れ・で、要さんは学校をサボってまで気晴らししたんですから、意味はあったんですよね」

「あぁ、俺も俺なりに整理はつけた、ひとまず若葉の事を教えてほしい...安心して背中を任せる為にも」

「わかった」

 

俺の言葉に答えた若葉の姿は思い詰めたものではなく、自然なものに戻っていた

 

「それじゃあ、そろそろ丸亀城に戻りますか?」

「あぁ、球子あたりが心配してそうだからな」

「要さんはどうしますか?」

「俺も帰るよ、元々戻ろうと思っていたからな」

 

二人の方を向きながらそういうと、後ろから迫っている影を見て少しだけ笑みがこぼれる、それを見た二人は不思議そうな顔をしたが、その直後に後ろからタマが二人の肩を組む形で抱き着いた

 

「タマがどうしたって?」

「タマっち先輩!?どうしてここに...」

「二人が深刻そうな顔で出て行ったからな、ケンカでもするのかと思って探してたんだ...と言うか要!お前何でここにいるんだ!」

「気晴らしだ」

「一人だけサイクリングとかズルいぞ!今度はタマも誘え!」

「わかった...それで、電柱の陰に隠れてる奴は呼ばなくても良いのか?」

「そうだった...お前も隠れてないでいい加減でてこいよ!」

 

タマがそう言うと、おずおずと電柱の陰から千景が出てきた

あれだけ大喧嘩...喧嘩と言っていいのか微妙な線だがまぁ良いか、とにかく千景も若葉が心配だったのに違いないらしい

 

「千景...」

「私は無理やり土居さんに連れてこられただけよ」

「その割には、やけにこっちを気にしていたみたいだが?」

「黙りなさい、サボり魔」

 

それを言われてしまうとこちらは何も言えなくなってしまう

すると若葉が俺たちの方を振り返ると、頭を下げてきた

 

「千景、それにみんな...すまなかった」

 

「私は思いあがっていた、自分だけで戦っているつもりになって、過去に囚われて周りに目を向けようとしなかった。それだけじゃなく怒りで我を忘れることもあった...これはすべて、私の心の弱さが招いた事だ」

 

俺たちへと向けられた若葉の謝罪は、その言葉一つ一つから彼女の気持ちが伝わってくる

それは俺以外のみんなも感じていたようで、若葉の言葉を黙って聞いている

 

「これからはもう、一人で戦っているなどと思い上がったりしない。今生きる人々の為に、私は戦う...だから、私と共に戦ってほしい」

 

「もちろん、若葉さんはリーダーです」

「当然だ、タマに任せタマえ!」

「そこはタマたちにの方が良くないか?...俺の背中は元々お前達に預けてある、それは今も変わらない」

「言葉では何とでも言える...だから、ちゃんと行動で示して...そばで、見ているから」

「あぁ、心しておく」

 

俺たちが返した言葉に対して、若葉は凛とした表情を見せた

 

 

 

 

 

翌日の教室で俺たちは目が覚めた友奈にもしっかりと謝罪をしたうえで一緒に戦って欲しいと告げたことを若葉から聞いた

彼女は笑顔でそれを了承してくれたと笑顔で言っていたのが忘れられない

 

「ようやく元通りって感じだな」

「そうですね、一時はどうなることかと思いましたけど」

「まぁ、タマは最初からこうなるってわかってたけどな!」

「本当にすまなかった」

「もう謝罪はいいって」

 

千景は友奈のお見舞いに行き、ひなたは大社からの呼び出しで不在

残った俺たちは教室で少しだけ雑談に興じていた

 

「それにしてもビックリしましたよ、要さんまで様子がおかしかったから」

「あの時の俺も少し焦っていたのかも知れない」

「今はもう大丈夫なんだろ?」

「あぁ、適当に走らせて街を見て、ようやく守っているものが何なのか実感したところだ」

「なら、もう心配ないな!」

 

助けられてから今に至るまで、俺はしっかりと守るべき世界の姿を見ていなかったのだと改めて実感した

これじゃあ若葉の事を言えないなと、自分自身に呆れているとタマが話始めた

 

「これで、タマたちは本当の意味でチームになったって事だな!」

「今までは違ったのか?」

「今まではほら、アレだどことなく距離があったからな」

「うっ...」

「あぁ別に責めてるわけじゃない!いい加減しゃきっとしタマえ!」

 

 

雨降って地固まるというのは今のような状況の事を言うのだろうと、彼女たちの話を聞きながら思う

あの戦いで崩れかけた俺たちだったが、若葉は自身の弱さに気づき、俺は守るべきものが何なのかを実感できた

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