不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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18話-過去の話-

誕生会会場のように飾り付けられた食堂に俺たち七人は居た

 

「よし!全員コップを持ったみたいだし、若葉!ここはリーダーらしくビシッと決めタマえ!」

「私か!?」

「そりゃそうだろ、リーダーなんだから」

 

「えー、そうだな...」

「無理に考える必要ない、思った事をそのまま口に出せばいい」

 

真面目過ぎる若葉は案の定、悩み始めてしまったため、助言になっているのか分からないが一応その言葉を伝えると若葉は俺達の方を向いてグラスを前に出す

 

「色々あったが、一人も欠けることなくここまでこれた...今日は騒ぐぞ!乾杯!」

「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

堅物から出るとは思えない言葉に少しだけ面食らったが、それだけ心を許して貰えていると考えたら、案外気分は悪くな...と言うより気分が良いまである

 

 

 

 

「そういえば、要さん記憶が戻ったんですよね?」

 

全員が思い思いの事をしていると、杏が俺に記憶の事を聞いてくる

 

「そうだな...細かい部分はぼやけてるが殆ど思い出したって言っても大丈夫だろう...冬吾さんにも残りはちょっとしたきっかけで思い出せるって言われたし」

「それなら教えてくれませんか?要さんのこと」

「あっ、タマも知りたい!」

「確かに興味あるな」

「私も気になります、要さんに今まで何があったのか」

「話しても良いが...そんなに面白いこともないぞ?」

 

「それでも教えてほしいかな、要君のこと」

「私も...少しだけ聞いてみたい...私たちの知らない貴方の事」

 

確かに、勇者の過去は聞く機会はあったが俺の過去は記憶を失っていた時も、記憶が戻ってからも色々あって話すことはなかった...確かに丁度良い機会かも知れない、皆に俺の事を、そして俺の力を知ってもらうには

 

「そうだな...少しだけ長い話になるがいいか?」

「大丈夫だ、今日はみんな時間があるからな、ひなたも大丈夫だろう?」

「はい、今日は特に予定も入れていないので」

 

「そうか、ならゆっくり話しても大丈夫だな」

 

全員の時間が大丈夫だと知ると、俺はゆっくりと話始めた

 

 

 

 

 

 

 

俺の生まれは千葉県の片田舎、確か下の方だった気がする

家族は両親に祖父母、後は兄貴と姉貴が居たな、まぁ二人とも俺とは結構歳離れてたし、特に嫉妬とかされることもなく兄弟仲は良かったしな。仲睦まじい普通の家って感じ...まぁ、一つ他の家と違う所を上げるなら母方の実家が神社だった事だけど、実家自体は母さんの兄、俺の伯父さんが継いだから俺の家族自体は神職とは無縁の生活を送ってたんだ。

そうだ、ここで言っておくが当時の俺に今みたいな力はなかったからな、この力と体質に目覚めたのはバーテックスの襲撃があってからだから、普通に怪我もしたし病気も患った。

 

 

「と言う事は...要は千葉で襲撃にあったのか?」

 

いや、襲撃にあったのは北海道だな

 

「北海道?」

 

あぁ、こっからはバーテックスが襲ってきたときの話になるんだが、奴らが襲ってきたあの日に俺たち家族は北海道旅行に行ってたんだ...まぁ当時の俺は小学生だったけど兄貴は社会人で姉貴は大学生だったから行ったのは俺と両親だけだったけど

北海道に着いた日の夜、家族でホテルに泊まってる時にあいつらは来た...っとここら辺の話は暗くなるから別にしなくても良いだろ、とにかく色々あって生き残った俺は今の力と体質を手に入れたって訳だ...そんで一人彷徨ってる所を雪花...北海道の勇者に拾われてそっから二人でバーテックス倒しながら暫く生活してたんだ

 

「「「「「「北海道の勇者!?」」」」」」

 

うぉッ!そんな驚くことか?

 

「驚くなと言う方が無理だろう!」

「そうですよ!北海道にも勇者がいたなんて...」

 

まぁ、話を続けるぞ?

そっからここに来るまでは二人で北海道で戦ってたんだが、少しずつ限界が近づいてきてな、あっちはここみたいにバックアップしてくれる組織もないから大変だった。生傷が増えても自分で治療してたし切り札ガンガン使うから精神的には疲れまくるし...でも不思議と雪花だけはあの時も信じられたんだよな。

多分、ここに来るまでずっと一緒にいたからこいつだけは裏切らないって思ってたのかも知れない...けど終わりってのは唐突に来るもんで雪花が急に”要は四国に行け”とか訳の分からんことを言い出してな。そっからあーだこーだ言い合った挙句喧嘩別れみたいな形でこっちに来ちまったから、そう考えると割と後悔ばっかしてきてるなって思うよ、ホント

 

「そんなことが...」

 

まぁ今にして思えば雪花にも考えがあってそういう事言ったんだろうな...まぁそこらへんも今は置いとくとして、次は俺の使ってる力の話でもするか

俺の力はなんでも一族由来の力らしいんだよな

 

「一族由来ってことは...お兄さんたちも使えたんですか?」

 

いや、兄貴と姉貴はおろか父さんも母さんも爺ちゃん婆ちゃんもこんな力使ってなかった。聞いた...と言うか読んだ話だと母方のご先祖が使ってた力っぽいんだよな、こういうの何て言うんだっけ?

 

「先祖返りではないか?」

 

それだ、先祖返り...力の方も似たようなもんだけど、問題は体質の方なんだよな。こっちは神様から貰った呪いらしいんだが厄介なことに一族の血にじゃなくて血を操る力に紐づけられてるみたいなんだよな

 

「じゃあ要君の傷の治りが異常に早いのって」

 

呪いの所為だな、まぁこの呪いは今の俺にとってはプラスだし...この力があるからお前らに出会えたみたいな所もあるから気にしちゃいないんだけど...そんじゃ詳細から話していくと一族由来の力は見たまんまだな、血を操る力

実家の文献だと”操血術”とか書かれてたけど、言いずらいしなんか変にすかした感じになんのが嫌だから今まで通りこの名前は使わない方針で行く、ご先祖たちは一つの武器を極めて使ってたから、今の俺みたいに偶に別の武器に帰るとかはしなかったらしい。読んだ文献だと刀を使ってる人が多いって聞いたな

 

「刀か...要は使えないのか?」

 

普通に使えるけど?と言うより俺が使ってた武器元々刀...と言うか片手剣だったし

 

「そうなのか!?」

 

あぁ、今俺が使ってる槍は元々雪花の使ってた槍が元になってるし、戦い方とか我流がちょこちょこ入ってるけど根本は雪花の戦い方だからなぁ...正直記憶を思い出したからこそ言えるけど槍も良いが偶には刀...と言うか剣を使いたくなる

 

「そうか...それならどうだ!たまには手合わせなど」

「若葉ちゃん、今は要さんの話を聞くのが優先です、まだ大事な事を聞けてませんから」

 

呪いのことか?

 

「はい、教えてください...要さんのご先祖様に何があって呪いを受けたのか」

 

そうだな、詳しいことは俺も覚えてないんだが、神様に生贄として捧げられる予定だった巫女を横から攫って行ったらしい。それを怒った神様が俺の一族...と言うよりも当時の不知火家当主に呪いをかけたらしい

 

「成る程...それならどうして呪いは要さんの代になって急に呪いが現れたのですか?」

 

さっきは当時の当主に呪いをかけたって言ったけど巫女を横から攫って行った件も癪に障ったみたいだが、それ以上に神が許せなかったのは偶然とは言え人が人である以上の力を得てしまった事、神から与えられた加護もなしに人以上の力を得てしまった俺の一族を神は許さずに呪いをかけた...死ねずに苦しめって想いと一緒にな

 

「それじゃあ要さんも...」

 

寿命は分からんが、少なくとも外的要因で死ぬことはないな、後これに関しては微妙だがこの体質になってから風邪とかも全然患わなくなったからそういうウィルスとか病気でも死ぬことはないな...まぁご先祖が書いた文献だと年は取ったみたいだから寿命では死ねるんじゃないか?神が指定し、限られた生の中で懸命に生きるのが人間だからな

俺の話しはこれで終了、何か質問はあるか?

 

 

 

 

 

「そういえば、さっきから要さんの話に出てる文献って持ってきてないんですか?凄い興味あるんですけど」

 

話を終えた俺に対して杏が文献の所在について聞いてくる、確か文献は必要だから持って来ていた筈だ

 

「多分俺が壁に着いた時の荷物の中に入って...あぁぁぁぁぁ!!!」

「急にどうした!?」

「俺の荷物...壁の上に置きっぱなしだ」

 

忘れてた、壁に着いた時に文献とか入ってる荷物が濡れるのは流石にまずいと思って荷物壁の上に置きっぱなしで来てたんだった

 

「すまない、今から急いで取りに行ってくる...話すだけ話して途中抜けするようで悪いが2,3日空けるここを留守にするから」

「待ってください!」

 

そういって急いで荷物を取りに行こうとしたら杏が俺の事を引き留めてくる

 

「それなら私も一緒に行きます、古くから伝わる文献...この目で状態を確認しておきたいので!」

「杏が行くならタマも行く!」

 

 

 

 

 

 

 

その後、他のメンバーも行くと言い始めたが流石に全員で行くわけにはいかないという事で、俺と杏、タマの三人で荷物を取りに行くことになった

 

「それにしても、随分と雪花ってやつの事を大事にしてるんだな。要は」

「そんなだったか?」

「はい、昔の事...と言うよりも雪花さんって人の事を話している時の要さん、いままで見た事ないくらい優しい顔してました」

「そうだったのか...」

 

言われてみて自分がそんなだったのかと自覚し、少しだけ恥ずかしくなってくる

 

「要がそいつの事を大切に思ってるってのは伝わってくるけど、やっぱり少し微妙な気持ちだ」

「私達の知らない要さんがいるって...当たり前のことですけどやっぱり複雑です」

「...すまなかった、皆への配慮が不足していた」

「いや、元々はタマ達が勝手にナーバスになってるだけだ」

「それに...要さんはきっと雪花さんから渡されたバトンだと思うんです」

「バトン?」

「はい、雪花さんって人がどういう人だったのか私達は知りません...でも、その人が四国に行けって言ったのは、要さんに生きていて欲しかったからだと思うんです。それに結果論ですけど、要さんのお陰で四国と諏訪以外にも生存者がいるって希望を持つことが出来た。諏訪だけじゃなくて雪花さんから渡されたバトンは要さんのお陰でしっかり繋がったんです」

 

杏の言葉を聞いて、少しだけあの時の雪花の気持ちが理解出来た。互いに大切だったから、四国に行けって言ったのか...生きていて欲しいから。けど、それなら俺はお前mにも一緒に来てほしかったよ。後悔が多いとは言ったが...出来る事なら俺はもう一度会いたい。あって今度はしっかりと謝りたい

 

「要...泣いてるのか?」

「大丈夫ですか?」

 

自分でも気が付かないうちに流れていた涙を俺は袖で拭うと、二人に笑顔を向ける

 

「あぁ...もう、大丈夫だ!」

 

そういうと俺は二人と共に忘れた荷物を取りに壁まで向かった

 

 

今は無理でも、戦いが終わった時...もう一度雪花に会いに行こう、会いに行って真正面から謝ろう

 

それがたとえ、どんな形になろうとも...いつの日か、絶対に

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