不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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21話投稿になります

あとがきに書くのが嫌なのでここに書いときます
活動報告にお礼文と短編のリクエスト募集を掲載しておきます

短編は私がシリアスの息抜きに書きたいので、気軽にどうぞ


21話-誓い-

 あの戦いから、早くも数か月の時が流れた

 現在についてを話す前に少しだけあの後の事を書き留めておく

 

 あの戦い、俺たちの力を合わせて超巨大バーテックスを退けた後、持てる力を使い切った俺たちは丸亀城の敷地内で倒れているところをひなたが発見し、大社の人達によって病院へと運び込まれ、三日間意識が戻らなかったらしい。

 あの戦いに関しては状況によっては全滅もあり得た以上全員が五体満足で帰ってこれたのは奇跡なのだと、俺は思う

 

 

 

 

 

「何を書いているんですか?」

「ひなたか...いや、偶には日記でも書いてみようかと思ってな」

「日記ですか、そういえば大社の指示で若葉ちゃんも似たようなものを書いていたような」

 

 日記を閉じながらひなたの言葉に返事をしつつ日記帳代わりに使っていた学習ノートを閉じると、改めてひなたに要件を聞く

 

「それで、わざわざ部屋に来たってことは何か用があったんじゃないのか?」

「そうでした、実は若葉ちゃんの壁外調査についていくことになったんです」

「壁外調査?」

 

 ひなたが言うには、結界が強化された後から壁の外で何かしらの事象が起こっているらしい、若葉がその事象を調査するように言われたのを知ったひなたは自分もそれについていくと言ったらしい

 

「それで、それが俺の部屋に来るのと何の関係があるんだ?」

「じゃい、大社から要さんも同行させるようにと、大社から言伝を預かって来たんです」

「はぁ? なんでひなたがそれを伝えんだよ、あいつらが直接言いにくればいいだろ」

「大社側も要さんからはあまり好意的に思われていない事を分かっていたようで...断られる可能性があるなら私から言えば多少了承される可能性が上がるからと...」

「確かに大社の事は好いちゃいねぇが恩義は感じてる。恩義を感じてる相手の頼みを真正面から突っぱねるなんてこたぁしねぇよ。ビビりすぎだ」

「私もそう言ったんですが...」

 

 ひなたが苦笑いしながらそういってくる。だが相手の気持ちも分からなくはないこっちは大社に所属しているわけではない一般人である以上、いつ寝首を搔かれてもおかしくないと考えているわけだ。もうそんな事しねぇよ

 

「まぁいいや。壁外調査の件は了解した...そういえば、調査に行くのは俺たち三人だけなのか? タマ達は?」

「有事に備えて待機だそうです」

「了解、いつ頃行くんだ?」

「2日後ですね」

「あいよっと...そういやもう一つ聞いて良いか?」

「何ですか?」

「タマ達は待機なのに俺だけ同行しろってのはどうしてだ?」

「確か、要さんのご先祖様が神から受けた呪いに関係しているとか言っていたような」

 

 俺の血に関わる事か、それを聞いて少しだけ合点が言った。確かに刻み込まれた呪いと外で起きている事象が何かしらの関連を見せるのなら事象そのものを解決する手がかりになるかもしれない

 それから一通りのことを俺が伝え終えるとひなたは軽く頭を下げて部屋から出て行った

 

「それにしても...壁の外の未知の事象ねぇ」

 

 今から考えこんでも仕方ないと割り切って、俺は机の上に置かれていた本を読み始める

 

 

 

 

 

 

 何事もなく迎えた二日後、俺と若葉、ひなたの三人は壁の上にやって来ていた

 

「本当に一緒に来てよかったのか? 壁の外は危ないぞ」

「覚悟はできています」

「気持ちは分からなくないが、やっぱリ若葉はひなたに対して少し過保護だな」

「なッ...私は純粋に心配して!」

「わかってるわかってる」

 

 若葉は気合いを入れ直すと、俺たち三人は壁の外に足を踏み出し。外に広がる光景に言葉を失った

 壁の外に俺たちの知っている世界は既になく、目に移るのは焼き尽くされ火の海となった世界だけだった

 

「なんだ...これ」

「世界が、壊された?」

 

 余りの光景に理解が追い付かなかった俺たちだったが、若葉の言葉に対して、何とか頭が回るようになったひなたが答えた

 

「いえ...破壊なんてものじゃありません。世界の理そのものが書き換えられたんです...もう世界に残っているのは四国(ここ)だけでしょう」

 

 これが俺たちの戦っていた相手の力だと思うと、流石に吐き気がしてくる

 

「帰りましょう」、この光景を中の人に伝えるんです

「...あぁ」

「そうだな...他のみんなにも伝えて本格的に対策練った方が良さそうだ」

 

 壁の中に戻った俺たちは大社に外で起こっていたことを報告し終えると、丸亀城に戻りタマたちにも外で見たものを伝える

 

「...それ、本当なの?」

「あぁ」

「そんな...」

「じゃあ、タマ達がやって来たことは無駄だったって事かッ!?」

「壁の中で人類が生存している以上、やって来たことがすべて無駄だったわけじゃない」

 

 今までの想像を越える事態になり、全員どうすればいいのかわからなくなっていたが、若葉が俺たちに声をかける

 

「今ここで、下を向いていても何も解決しない...それならどうするのが一番いいかを考えよう」

「そうだよ! 今までだってそうやって頑張って来たんだからッ!」

 

「けどなぁ、タマ達六人じゃどうしようもないぞ?」

「...今回は土居さんの言う通りね...何かするにも私達だけじゃ人手不足」

 

 何となく今この場で話していても仕方ない気がする

 

「今この場で話してても結論出そうにないし、とりあえず各々で適当に案を考えてきて明日話し合った方がいい気がするんだが」

「そうだな、今日はみんなへの報告だけのつもりだったからな、そうした方がいいかもしれないな」

「私の方も、改めて大社の方に何か打開策がないか聞いてみます」

 

 今日はそこで解散になり、明日各々が案を持ち寄ってそれを議論するという形に落ち着いた

 

 

 

 

 

 

 それから数日の間、俺たちは外の敵への対処方を話し合いながらいつものように過ごしていた

 ある日、訓練の時間になり集まった俺たちにひなたが告げたのは俺たちにとって予想外の一言だった

 

「戦う必要が...なくなった?」

「それ、どういうことだよ!」

 

「言葉通りです。もう皆さんは戦わなくてよくなりました」

 

「どうしてそういう結論になったのか、教えてもらっていいか?」

 

 外の様子を考えると、以前よりも絶対に状況は悪くなっている筈だ...それなら、今までよりも更に戦いが激化することはあれど、俺たちが戦わなくてよくなる理由はない筈だ

 

「そうですね...今は強化された結界で星屑たちも四国には入ってきませんが、神樹様の力が尽きた時、私たちは炎の海にのまれ...すべてが終わる。もはや人類の根絶は完了したと言えます」

「それは何か? 俺たちに諦めてゆっくり滅びを待てって言ってるのか?」

 

 俺の言葉に対してひなたは首を横に振ると、再び話始める

 

「いいえ...確かに状況は絶望的です。けれどそこに活路はあったんです」

「...活路?」

 

 俺だけでなく、ひなたの言葉を聞いた俺たちは首をかしげた。

 

「奉火祭」

 

 その言葉は、俺の先祖の遺した文献の中にも残っていた...ご先祖が助けた巫女、彼女が生贄となる筈だった儀式の名前

 

「神代の時。土地神の王が天の神に自らの住み処から出ないことを代償に、その地を不可侵として赦して欲しいと願った神話『国譲り』...それを模した儀式を代々執り行ってきた一族が居た。ですよね、要さん」

「...あぁ、俺のご先祖が助けた巫女の居た村、奴らは自らの村が飢饉で苦しむ事を恐れ、毎年巫女一人を生贄として選び、生きたまま炎でその身を焼く、登る煙を神への遣いと見立て村の豊穣を願った...贄に火を燈し 神に奉げる。その村はその儀式を豊穣を願う祭り...奉火祭と言う名前で行っていた」

 

 どうやら大社のやろうとしていることは俺の知っている奉火祭で間違いないらしい

 

「大社は、その故事と要さんの持ってきた文献に乗っていた儀式を基にした儀式...地に棲まう者が天の神への願いを伝えたんです」

「神に伝える...そんなの、どうやって...?」

「まさか...」

 

 ひなたの言葉を聞いていた杏は何か思い当たったようでひなたを見ると、彼女は首を縦に振る

 

「巫女を火の海に身投げさせた...か」

「はい、六人の巫女が選ばれました」

「薄々そんな気はしてた...あの糞みたいな儀式を模してる時点でな」

「...儀式は、成功したのか」

「神託が来ました、勇者の力を放棄すれば、もう攻められることはない...と。彼らからすれば、人が神の力を使うことは禁忌...と言う事でしょう」

「もう戦うなって事か...じゃあ俺はどうなる?」

「要さんの力はあくまで人の身で宿した力...勇者の力とは違う」

「俺みたいな異分子が一人いた所で、神様は問題にしないって事か」

 

 そういい終わると、俺は踵を返して訓練所を後にする

 

「お、おい! 要! どこ行くんだよ!」

「要さんッ! 待ってください!」

「今は若葉とひなたの二人にしてやれ...俺たちがいると気を使って吐き出せるもんも吐き出せないだろ」

 

「ぐんちゃん...私たちも」

「そうね...」

 

 

 若葉とひなたの二人を残し俺たちは先に戻ろうとして、足を止める

 

「悪い...少し飲み物でも買ってくる」

「それならタマも」

「タマっち先輩...」

「...そうだな、先行ってるぞ」

「あぁ、すまないな」

 

 

 

 

 一人で自販機の前まで行くと、耐え切れなくなった俺は思い切り壁をぶん殴る

 

「結局...なんもできてねぇじゃねぇか、俺は」

 

 人には限界がある、守れるものは精々自分の両手が届く範囲だ

 拾えるのは両手で持てるもので精いっぱいだ...けれど、それがどうしようもなく、やるせない

 

 どうしようもなくて顔を上げた俺は地平線の向こうに広がる壁を睨みつけ、拳を突き出す

 

「...絶対に、取り戻す――アイツの居た場所を、俺たちにバトンを繋げた、あの人たちが守った世界を」

 

 これは、自分に対する誓い...神に己を呪われた一人の人間の、ちっぽけな誓い

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