不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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22話の投稿になります

これから予定を知りたい方は昨日の物とは別にまとめたものを活動報告に上げておくのでそちらをご覧ください


22話-未来へのバトン-

 奉火祭が行われてから、数か月の時が流れた

 いつも通り流れていくと思っていた日常は変わり、一時の平穏を取り戻した俺たちはそれぞれの道を進んでいた...と言っても、本格的に動き始めるのはもう少し先の話になる

 

 現状で一番変わったことと言えば、大社の内部改革が行われたことだ

 神に赦された者としての自覚を表すために名前を”大赦”と改めたらしい...若葉曰く屈辱的な名前らしいがそれに関してはまぁ横に置いていくとする

 

 さて、ここからはそれぞれの進む道となるわけだが...まずは若葉か

 

 若葉は大赦の内部改革に協力するらしい

 民衆の心を安定させる事が自分の使命だと言っていたが、それはあくまで表向きの話だ...実際は勇者システムの基礎戦闘力の強化をはじめとした、天の神に対抗する為に尽力するらしい

 

 ひなたは、若葉と同じ内部改革に協力...と言うよりも大赦の内部改革は彼女が主導で行うことになっている、現状の情報管理及び統制がお粗末な大社を改革しより秘密をしっかりと隠せる組織を作ることが目的だと彼女は言っていた

 

 タマと友奈の二人は表立った内部改革には協力せず、後任の育成に尽力すると言っていた

 頭を使ったり策謀を巡らせるのは苦手だと本人も語っていたし、それがあっているのだと思う

 

 続けて杏だが、彼女は主にひなたのサポート...ひなたの手が回らなくなった部分のサポートをするって感じになるらしい。まぁそこらへんは俺の知らぬ部分だし、あっちに任せることにする。

 

 

 最後に千景、彼女は大赦から離れることに決めたと言っていた。正直以外だったがもう戦う必要がない以上、自分に出来る事はあまりないらしく、自分のしがらみを全部振り切って好きな事をするらしい。退職金は大量に貰うと言っていたし今の彼女なら変に心配する必要もないだろう

 

 

 

 さて、勇者はそれぞれの道を進み始めたわけだが一切会えなくなるわけではないし若葉も意見を貰うために定例会は開くと言っていたし、これから先もこの絆は消えることはないだろうと考えている

 

 

 

 

「何してんだ?」

「荷物を纏めるがてら、全員のこれからをノートに書いてたんだよ」

「成る程なぁ、それにしても...いつか来るかと思ったけど、案外早く来たなぁ」

 

 珍しく感慨深そうに言っているタマを見て少し笑いそうになるが、それを抑えながら彼女に聞く

 

「なにがだ?」

「いやな、タマたちがバーテックスと戦い始めてから結構経つけど...個人的にはもう少しだけここでの生活を続けたかったなぁって」

「今生の別れって訳でもないし、俺と千景以外は新しい宿舎に移動するだけだろ?」

「そうだけどさ...」

 

 タマは俺の方を見て、言葉を詰まらせているのを見て流石に限界だった、耐えていた笑いをタマの前で思い切り噴き出す

 

「なッ! ...なに笑ってんだ! タマは」

「いや、悪い。流石に可笑しくてな」

「何が可笑しいんだよ」

 

 少しすねたような顔をしていたタマの頭の上に手を置き、彼女の頭を雑に撫でながら言葉を紡ぐ

 

「何度も言ってんだろ、一生会えなくなるわけじゃない...会おうと思えばいつでも会える...それに、お前らが呼べば俺は何処にだって行ってやる」

「そっか...そうだよな!」

「あぁ、それじゃ...みんなのところに行くか」

「おう!」

 

 

 段ボールひと箱程度の荷物を纏め、俺は宿舎の部屋を出る

 ここに足を運ぶのも、今日で最後になるかも知れない...手に持った段ボールをそのままに俺は宿舎の方を振り向くと頭を下げ、タマと共にみんなの元に向かう

 

 

 

 

 

 

「そういえば要」

「どうした?」

「いや、要には聞いてなかったからさ、これからどうすんだ」

「そうだな...試しに何でも屋でもやろうかと思ってる」

「何でも屋?」

「おう、なんかカッコいいだろ?」

「そうかぁ?」

 

 そんなことを話しながら歩いていると、丸亀城の前に立っている若葉たちの姿が目に入る

 

「二人とも、遅いぞ」

「すまない...少し用事を済ませてた」

「要が日記みたいなの書いててな、それで少し遅くなった」

 

「日記って...あの時書いていたものですか?」

「あぁ、ここで書けるのも最後になるからな」

「そうですね」

 

「それにしても、色々あったね」

「そうね...本当に色々あった...」

「けど、どれも私たちにとってかけがえのないものです」

 

 全員で丸亀城の前に並び、城の方を見る

 僅かな時間だがここで生活した俺と、長い間この場所で生活を送っていた彼女たち...長さは違ってもどちらも大切な思い出には違いない

 

「全員並んだな...ふぅ、ありがとうございました!」

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」

 

 俺たち全員で今まで世話になった学び舎であり帰る場所だった所に礼を言うと、門の前で立ち止まる

 

「ここからは、全員別の道だな...」

「そうですね、私達はこちらの道に」

 

「俺と千景は反対か」

「そうね...」

 

 俺と千景の二人でみんなの方を向くと、軽く手を上げる

 

「それじゃあ、またな」

「また...明日」

 

「おう! またな!」

「またね、ぐんちゃん! 要くん!」

「明日会えますけど、お元気で」

「何かあったら、すぐに言ってくださいね」

「これからも会う機会はあるが...達者でな」

 

 

 

 

 四人に別れた俺と千景は二人は、分かれ道まで並んで歩く

 

「それにしても、千景は本当に良かったのか?」

「...なにが?」

「俺もそうだが、新しい宿舎...と言うかアパートに行くことも出来たんだ、友奈たちもいるしそっちの方が良いんじゃないのか?」

「...確かに、少し前の私ならその方がよかったかもね」

「なら」

「話は最後まで聞いて...確かに少し前の私ならそうしていた...けど、あなた達が私に教えてくれた...どれだけ離れていても、すれ違っても消えない(モノ)があることを...だから、私は大丈夫」

「確かに、そうだな」

 

 晴れやかな表情を見ながら、俺も軽く笑う

 それから一言二言、言葉を交わしているうちに分かれ道に着く

 

「またね...要君」

「あぁ、またな」

 

 その言葉を最後に、俺と千景も別れ一人で新しい道を歩き始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神世紀――元年

 六人の勇者と一人の異物による、天の神との戦いは...人類と神の和平と言う結果で幕を閉じた

 これは人類にとっての勝利ではなく、敗北である...だが、これから先、何年、何十年、何百年かかったとしても俺たちは...人類は神に打ち勝つことが出来る可能性があると信じている

 

 だからこそ、俺たちは今を全力で生きる

 俺が一人の勇者からバトンを託されたように

 彼女たちが諏訪を守った彼女たちからバトンを受け取ったように

 

 俺たちの渡す希望と言う名のバトンが...未来の勇者に繋がることを願って

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