不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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三話 投稿です


三話, 仲良くなろう

「...銀はまた遅刻!」

 

祝勝会をしてから大体一週間後、合同練習の日になったわけだが案の定銀は集合時間に遅れていた。これが一回目ならまだ何かしら理由があるのだろうと須美もなるのだろうが銀は散開に一回のペースで遅刻をしてくる為、真面目な彼女としては見過ごせないのだろう...個人的にはまだ遅刻してでもやってくる分マシだと思うのだが

 

「ごめんごめん、お待たせ!」

 

本日の遅刻時間は八分

このペースならまぁモンぢアハないだろうが、ルールに厳しい須美は見過ごしてくれないだろう

 

「銀、どうして今日は遅れたのかしら」

 

ほら始まった

 

「ええと...や、何を言おうが遅れたのは自分のミスだし...ごめん、気をつけるよ!」

 

すっかり見慣れた光景になったのだが、銀はいつものように理由を言わず謝るだけだ。彼女にも彼女なりの事情があるのだろうと思うが...この後の展開は大体決まってる

 

「勇者としての自覚を、もっと持たないと。私達はこの国を守るべく――」

「はぁ...」

 

遅刻をする銀、小学生とは思えない説教をする須美、そして今回もゴーイングマイウェイな園子。この調子だと訓練が始まるのはもう少し後になるなぁ等と考えながら、須美の説教を見守っていた

 

 

 

 

それから須美の説教も終わり、ついでに訓練も終わった後、銀の次に帰り支度を終えた須美が何かを考えこんでいるようだ

 

「どうかしたのか?」

「徹くん...少しね」

「もしかして、銀のことか?」

「えぇ、銀がどうして時々遅れるのか...これは調査をしないといけないと思って」

「そうか?」

「そうよ!原因があるなら元から絶たないと意味がないわ。よく考えると銀は勇者になる前から、授業に対しても割と遅刻が多かったもの、やはり何か理由があるのよ、それを言ってくれないならこちらから探りに行くまで!そのっちと徹くんも協力してくれる!!」

 

「はぁ...」

「Zzz...すやぁ~」

 

こうなった須美を止めることは骨が折れる...協力した方が楽だろう

 

「分かった、協力する」

「ありがとう、二人とも」

 

返事をした俺と未だに眠っている園子、ほぼ選択肢が一つな気がするけれど考えないでおこう

 

 

 

 

 

休日

俺たち三人は三ノ輪家の前までやって来ていた

 

「何か問題があるようなら、私達が力にならないと...」

「いつの間にか私も協力することになってるけど、頑張る~!」

「あんま気張らず適度にやろう」

 

これなら流れに身を任せるのが一番いい

これも友達の為だ。我が家の家訓の一つにもなっている。自分に近しい人が何かを抱え込んいるようなら全力で力を貸してやれと、これは祖父母の代に世話になった人の言葉らしい...というより祖父母がお世話になったというその人から伝わった教えは今も結構残っているあたり、その人には本当に感謝しているのだろう

 

「見て~、二人とも。あれあれ」

 

俺達の目に飛び込んできたのは赤ん坊をあやしている銀の姿、弟がいると言っていた為あの子が弟さんなのだろう。まだ赤ん坊ならご両親が忙しい時には銀が世話をしているのもう頷ける

 

「弟の世話をしていたのね、銀は」

 

実際の所ここにいる須美と園子は中々に良いところのお嬢様だ、乃木家は大赦のトップだし鷲尾家も大赦ではかなり歴史のある家だったと思う。俺の家である八重樫家は大赦に置いてそこまで格式の高い家ではない。大社のトップである乃木家とは比べるほどではなく、鷲尾家と比べても数段劣る家であるが、それでもそこそこ由緒正しい家柄だと自負している。

逆に三ノ輪家は大赦で発言権はあるが、使用人を雇えるほど家は裕福ではない...と言っても一般家庭よりは裕福であることに変わりないのだが。そんなことを考えていると銀が動きだし始める

 

「今度は家の中のお掃除もしてるよ~、私もああいうのしたことない~。凄いね、あ。今度はお使いに出かけるみたいだよ~」

「働き者だわ...お使いにもついてってみましょう」

「......改めて思うけど、やっぱあの二人とは比べちゃいけねぇわ」

 

特に園子の発言は中々にショッキングだったなどと考えていると置いていかれそうになったので慌てて二人を追う

 

 

 

 

 

 

お使いについていくという名目で銀の尾行をしていた俺達の目に入ったのは、小さなトラブルに次々と遭遇する銀の姿だった。ある時は目の前で自転車に乗った小さい男の子が倒れ、それを助けたと思ったら今度はおばあさんが腰痛だと言って銀の目の前に座り込む

 

「こ、これはいわゆるトラブル体質~?」

「遅刻の理由が判明したわね...」

「なんでもいいが、手伝いに行ってやろうぜ」

「そうね...銀!」

「大丈夫かー!」

「うおっ、須美!徹!」

「園子もいるんだぜ~」

「園子まで!」

 

四人で腰痛のおばあさんを家に送り届けた後の帰り道、俺達が今までやっていたことを銀に話した

 

「じゃあ三人とも家の前から見てたっての?うわぁ、なんか恥ずいなぁソレ」

「恥ずかしくなんかないよ、偉いよ~」

「そうだな、誰かの為に進んで行動するのは良い事だ。とウチの曽爺ちゃんも言っていたらしい」

「遅れるには、いつもこういう理由があったわけね」

「まぁ...ね」

「だったら言ってくれればいいのに~」

「それは、なんか弟や道行くおばあさんの所為にしてるみたいで...何があろうと自分の責任な訳だし」

 

そうだ、予定があるのなら人によっては無視して素通りをする人もいる。それをしないのは銀の良いところだと思う。困っている人を率先して助けるなんて大人でも簡単には出来ない

 

「そうね、どんな理由があろうと、遅れていいわけがないわ」

「トホホ...はい」

「ミノさんはトラブルに巻き込まれやすい体質なんだね~」

「昔っからね、ついてない事がないんだ。ビンゴとか当たったことないもん...」

「これからきっと良い事が...ん!?」

 

話をしていた俺達は、世界に起こった異変に気付く

 

「これ...時間とまってるよね~?私の感覚がいきなり鋭くなったわけじゃないよね~」

「えぇ、それはないわ。敵よそのっち」

「そういえば、須美って園子の事あだ名で呼んでるのな」

「今!?...まぁ、本人がそっちの方が良いって言っていたし」

「徹くんも呼んでもいいんだぜ~」

「遠慮しとくよ」

「おいでなすったぁ!休日台無し!」

 

銀の言葉を最後に俺達は樹海化の光に飲みこまれた

 

 

 

 

 

 

 

前回と同じように大橋の真ん中に陣取った俺達が見たのは左右に秤を付けた化け物の姿

 

「何、あのフォルムは...天秤?」

「天秤が...空に浮いてるね~」

「なんというか、かなりシュールな光景」

 

少し困惑をしているが神樹様に向かってきている以上敵には変わりないだろうと思い、俺が両手に持ったチャクラムを構える

 

「全く、どういう生き物なんだか。ウィルスの中で生まれただけで、あんな形になるもんかね」

「さぁな...でも、俺らは撃退するだけだからな。パパっと終わらせるか」

「作戦通りに動くわ、分かってるわね銀、徹くん」

「そうだった、敵を見るとつい突撃したくなる。須美よろしく」

「そういえば作戦あったな...忘れてた」

 

「そもそもどこが顔なんだろ~」

 

俺達がそんなことを言っている間も園子は敵の観察を続けていたらしい。とはいえまずは作戦だ、手始めにロングレンジの須美が弓矢で敵に攻撃を仕掛ける

 

「向こう側へ戻りなさい!」

 

その言葉と共に放たれた須美は複数の矢を同時に放つが磁石に引き寄せられるかのように天秤バーテックスの分銅部分に吸い寄せられる。吸い寄せられた部分は相当硬いらしく敵にダメージを与えられていなかった

 

「!もう一度..射かける!」

 

その後も須美の放った矢はすべて不自然な軌道で分銅の部分に吸い寄せられダメージを与えることはできていなかった。悔し気に唇を噛んでいた須美に一度目を向けた後、再びバーテックスに目線を向けると、奴は何の感情もなく前進してくるだけだった

 

「ミノさん、やえくん。あの敵、体と体の繋がっている部分が細くてもろいかも~」

「接続部を狙って攻撃ね、了解!...徹!」

「分かってるよ、サポートはお任せ!」

 

俺と銀、園子の三人で攻撃を仕掛けようとするがバーテックスが急に回転を始める、そうして巻き起こる竜巻のような防御壁が邪魔をして近づくことが出来ない

 

「くっ、この、近づけない...!」

 

尚も回天を続けるバーテックスはそのまま須美の放った弓矢を撃ち返してくる

 

「矢をそんな風に返すなんて...」

 

須美を狙った攻撃は狙いが散漫だったため、避けることはできていたが須美を狙っていなかった矢の何本かは樹海に向かっていった。

 

「落とせるか?...いや、落とす!」

 

その言葉と共に俺は両手に持ったチャクラムを投げて、須美の矢に当てる。この前の戦いでは使わなかったがチャクラムに装着されているワイヤーを使う事である程向きをコントロールすることが出来る。矢をすべて弾くとワイヤを巻き戻してチャクラムを手元に帰還させる

 

「大丈夫か、須美」

「えぇ...ありがとう」

「気にすんな」

 

「くぅ!ちょっと不味いかなコレ」

「どうすれば、どうすれば...」

「多少はましになったと思ったが、須美。少し落ち着け」

 

俺たちは攻めあぐねている上、今回の敵は須美と相性が最悪...そのことが焦りに繋がったのか須美は軽いパニックを起こしていた

 

「ぴっかーんと閃いた!」

「何か思いついたか!?」

 

ベストタイミングだ、園子のアイデアはこの状況を打開するきっかけになることが多い

 

「うん!台風の目ってあるよね。この回転も、周囲に強くても...頭上はお留守かもしれない!」

「そっか!上から飛び込めばいいんだ!園子ナイスアイデア!」

「よっしゃ、じゃあ踏み台は任せろ!高くぶっ飛ばしてやっから」

「頼りにしてる!」

「でも竜巻に飛び込んでいくようなものだから、相当危ないわけで...」

「やってみなくちゃ分からない!須美、フォローお願い!」

「銀ちょっと待って...」

 

「徹!頼んだ!」

「信じるからな!」

 

その言葉と共に俺はチャクラムを踏み台のように構えるとその上に銀が飛び乗ってくる

 

「ぶっ飛べぇぇぇぇ!」

 

持てる力のすべてを使って銀を高く上げると銀は隕石のようにバーテックスに向かって降下し、一瞬見えなくなった直後にドスンと言う音がなりバーテックスの動きが止まる

 

「今だ!!」

「よし!突っ込む!!」

 

須美が一瞬だけ遅れたがそれでもすぐに追いつきバーテックスに攻撃をしかける、勇者たちの装備に比べると劣る俺の武器も神の力を持っている武器に変わりない。風を纏ったチャクラムで銀とは反対の方向からバーテックスを切り刻んでいく

それからしばらく、俺達四人の攻撃を受けていたバーテックスは少しずつ後退していき、橋から完全に撤退する。それを見た俺達は完全に気力を使い切りぐでっと倒れこむ

 

「銀...傷は、大丈夫?」

「何度目の質問よそれ、戦闘中に割と回復してたし深い傷はなかったし、平気だって」

「そう...ごめんなさい。矢が通じなくて、結果、銀に突っ込ませてしまって」

「そんなの相性もあるし、気にするなって。だいたいアタシとか徹は武器的に突っ込むのが仕事なんだしさ」

「メインアタッカーはそれでも銀だけどな」

「徹、少し拗ねてる?」

「べっつに~、アタッカーとしての仕事ないなぁとか思ってねぇから」

「やっぱり拗ねてるじゃん!」

 

俺達がそんなことを言い合っていると、黙っていた須美が口を開く

 

「突っ込むのが仕事...か。もしかしたら私達って、あまり仲良くならない方がいいのかな...」

「え、ど、どうしたのわっしー」

「な、なんだよいきなり...」

 

「......だ、だって。銀が竜巻の中に飛び込んだ時、心配で...心配で...動きが鈍くなっちゃったから...」

 

気が付くと須美が泣いていることに気付く、きっと敵が去ったことを切っ掛けに色々なものがあふれ出してしまったのだろう。園子が慌てて慰めているようだが泣き止む様子はない

 

「心配をするのは、その人が好きな証だ...ってひい爺ちゃんが言ってたんだ。恩人の言葉らしいけど詳しく俺にはわかんねけどさ、須美が心配するのは当たり前だ!仲間なら心配するし、心配される...けど、それも全部ひっくるめて相手の為に頑張るのが仲間だと思う」

「徹の言う通りだぞ、須美。アタシの勇者システムは近接専用にタフに仕上がってるんだから大丈夫だ...まぁでも、時々練習に遅れてりゃ、そりゃ本番で不安がられるか」

 

そう言うと銀は須美の頭を撫でながら、明るい口調で言う

 

「よし!アタシ家を出る時間を早くする、そうすればトラブルがあっても間に合うだろうしさ」

「銀...」

「だから、もっと仲良くなろうよ、須美。アタシ須美から仲良くならない方が良いって言われた時、グサッときちゃった。そっちの方が敵の攻撃より堪えたって」

「うんうん、私もだよわっしー」

「確かに、俺なんざ幼馴染だぜ?せっかく元通りになって来たのに今度はそっちから距離を置かれるのはキツい」

「ごめん、ごめんね...」

 

泣いている須美を銀は抱きしめていた。それこそ泣き止むまでの間ずっと...戦いは始まったばっかで不安なこともいっぱいあるかもしれないけど、これからもっと仲良くなっていけばきっと何とかなる。俺達四人なら...きっと

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