不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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五話、投稿です



五話, 戦い

 夜も更け、就寝時間が近づいた頃。四人部屋に布団をの中に入り寝る準備は万全と言った所で銀が俺達に話しかけてきた

 

「お前ら、簡単に寝られると思ってる?」

「私はいついかなる時でもすぐ寝られるよ~」

「明日も早いのよ、銀。ほら目を閉じなさい」

「いやだ...というか徹はなんでそんなに離れてんだよ」

「布団をくっつけては抵抗がある」

「なんだそりゃ」

「なんでもいいだろ、俺は寝る」

 

 そう言って布団を被り眠ろうと、していると隣で誰かが立ち上がる音が聞こえてきた

 

「そうだ、好きな人の言い合いっこをしよう!」

 

 立ち上がった誰かがすぐさま布団に戻る音がした...それにしても好きな人の言い合いっこって、女の子ってそういうの好きだなぁってつくづく思う

 

「銀、好きな人って...」

「も・ち・ろ・ん。お父さんとか身内で濁したやつは、勇者剥奪な!」

 

 好きな人を濁したら勇者剥奪は流石に罰が重すぎるだろ

 

「そ、そういう銀はどうなの?」

「どきどき~...」

「うーん、いない!」

「それはずるいよ~」

「私もいないから、おあいこね...そのっちは?」

「ふ、ふ、ふ、私はいるよ~」

 

 マジか、園子にはいるのか、好きな人...誰だ、同じクラスの男子か? 他のクラスか? それとも上級生? 下級生? 純粋に気になる

 

「おおっ! コイバナ来たんじゃない?」

「だ...誰? クラスの人?」

「うん、わっしーとミノさん、それとやえくん」

 

 それは...好きのベクトルが少々違うのでは? 少なくとも二人や俺が求めていたものとは違うんだ

 

「...まぁ、そうよね」

「アタシら揃いも揃っていいのかね、もっとこう燃えるような...」

 

 そういった所で、俺達四人は世界の雰囲気が変わったのを感じる

 

「燃えるような戦い、か...はぁ...こんな時にバーテックスとか勘弁してよ」

「ぼやかないの、隊長、号令を」

「え、ええと出撃~」

「よっしゃ、頑張りますか」

 

 

 樹海化した旅館から飛来した俺達は、いつものように大橋の中心に陣取って敵の襲来を待っていると、そこまで時間が経たないうちに、橋の向こうからやってくる敵の姿を確認する

 

「来たっ、おぉ今度はなんかビジュアル系なルックスしてるねぇ」

「と、尖っていて強そう~」

「攻撃力高そうだな」

「矢で攻撃してみるわ」

 

 須美が気合いを込めて弓を引き絞ると、バーテックスは大橋にその巨体をおろすと四本の角っぽい部分が大橋にめり込んだ

 

「今回こそ...!」

 

 気合いを込めて須美が矢を撃ち込んだ。須美の矢が敵に向かって飛んでいく途中でバーテックスは小刻みに振動を始めた。その振動に呼応するように樹海...いや、世界そのものが振動する

 

「地震、あいつが起こしてるのかッ!?」

 

 銀がバーテックスの起こす振動がこの地震を起こしていることに驚くと同時にぎいん、と鈍い音が樹海中に響き渡る。須美の放った矢はその振動に弾かれ刺さることはなかった

 

「う、また通じないというの...?」

「落ち込んでる暇はないよ、わっしー! この地震を止めないと! 敵に近づくよ!」

「え、ええ」

 

 気持ちを切り替え、四人で敵に近づこうとするとバーテックスは橋から牙を抜き、急上昇を始める

 

「なんだ? 地震は止まったけど...このまま逃げる気か!? 降りて来いコラァー!」

 

 銀がそう言っている間も園子は敵の事をじっくりと観察していたようで、月の光を受けたバーテックスが鈍く光ると、銀と俺に向かって

 

「ミノさん、敵が何か仕掛けてくるよ! 斧で防御して! やえくんも、ミノさんの斧に風くっつけて! ぶわーって!」

「えっ...んなっ!」

「とにかくやってみる!」

 

 園子に言われた通り銀の使っている斧に風を付与しようと念じると、案外簡単にできた。それと同時にバーテックスは光弾の雨を樹海に向かって降らせる

 

「避けたら橋も樹海もヤバい! 上ッ等! 野球は結構好きなんだよね!」

「なら、バッティング勝負と行こうぜ!」

「いいねぇ!」

 

 俺と銀は風を纏わせた斧とチャクラムを使い、銀は次々と光弾をはじき返していく、樹海の方に飛ばすのではなく空中に向かって弾き飛ばせば被害は出ない

 

「銀! 徹くん! 大きいのがくるわよ!」

 

 須美から飛んできた言葉を聞いた俺達はバーテックスの方を向くとレーザーのような光線がこちらに向かってくるのが見えた。咄嗟に俺達は自身の持っている武器を交差させることでなんとか防御する。俺達の武器に纏わせていた風のお陰で多少は負担が軽減されている気がするが、それでも長持ちはしないと思う

 

「んぐぐぐ! ...こ、これは、キツい」

「キッツ...!」

 

「ミノさん、やえくん、その光線どれくらい受け止められる~?」

 

「あ、あと十秒っ...気合いを出せば、じゅっ...十二秒ぐ、ら、い、は...」

「俺も...それくらい...それ以上は...流石にっ」

 

「なら、私とわっしーで、上空の敵を叩くよ~! 行こう、わっしー」

 

 俺達に対して園子はそう言うと、須美と共バーテックスの方に向かっていく、上の様子をはっきりと目視することは出来ないがそれでも二人を信じて...この場を守る

 それから程なくして、バーテックス~放たれていた光線が止み、俺達が上を見ると、園子の槍によってダメージを受けたバーテックスが空から下に降りてくるのが見えた、須美も園子をサポートするようにバーテックスに弓を撃ち込み続ける、俺達が走って二人の場所に向かっていく間もバーテックスは徐々に後退を続け、回復した体でよろよろと壁の外に消えていった

 

「須美ー! 園子ー!」

「二人ともー!」

「ミノさん、やえくん」

「二人とも、大丈夫なの?」

「ちょっと腰に来てるけど、問題なし!」

「そういえば、バーテックスは?」

「壁の外に逃げていったよ~」

「もう少し待って、もし戻ってきたら...射る」

 

 そんなことを話していると樹海が再び光に包まれ、俺達は大橋の見える公園の芝生に倒れていた。

 

 

「あーっ! それにしても、腰にくる戦いだった...上空から来るビームを防ぎ続けるとか、地味すぎるし...」

「それを言うなら俺も同じだよ、光弾弾いて光線受け止めて...腰が痛い」

「でも、二人がああして攻撃を受け止めてくれたから、私達は攻めに出られたんだよ~」

「そのっちは...あの短時間でよく決断できたわね、攻め込もうって」

「だってミノさんとやえくんが十秒持つって言ったんだから、十秒は持つと思って。それだけあればなんとかなるな~って。火力がある敵なら長引かせるのは危険そうだったから」

 

 その言葉を聞いた須美は、園子に何かを感じ取った表情をすると、頬を少し赤らめていた

 

「そのっち...凄いわね。貴方こそ、隊長よ。本当に」

「ね、ここぞって時にやってくれる」

「やっぱ咄嗟の判断力なら園子が一番だわ...」

 

 俺たちがそんな事を話していると、芝生を踏む音が聞こえてくる。いくら勇者のお役目だとしても俺達はまだ小学生...もしおまわりさんとかだったら怒られるだろうなぁって考えていると、俺達の目に入ったのは予想外の人だった

 

「おっ、ここに居たか...頑張ったみたいだな」

「不知火先生...どうして?」

「どうしてって...そりゃ、あれだ。部屋に様子を見に行ったらお前らいなくなってたから、もしかしたら勇者のお役目ってやつかなと思って探し回ってたんだよ」

 

 それにしては、少し見つけるのが早すぎる気がする

 

「よくここだってわかりましたね」

「西暦の資料とか見てると、樹海化の後勇者たちは祠の近くに転移するってあったからな。そんで事前に安芸ちゃんから聞いてた何処から敵が来るのかって情報を照らし合わせれば...大体の場所は絞れる」

「先生すごいね~」

「昔取った杵柄ってやつだ。これでも本業は何でも屋だからな、迷子のペットから迷子のご老人まで。人探しはお手のものだ...っと、一応安芸ちゃんにも連絡しとかねぇと」

 

 そういうと不知火先生は、携帯電話を取り出して連絡を取り始めた...それにしても少し妙な気がする、樹海化した段階で勇者以外の時間は止まる、なら俺たちがここに出てきたんなら先生たちが来るのはもう少し後になるんじゃないか...と。その小さいけれど確かにそこにある違和感がさっきまで晴れ渡っていた心に少し靄を残した

 

 

 

 

 

 それからは何事もなく合宿最終日、帰り支度を終えバスの前までやってきた俺たちの前に不知火先生がやってきた

 

「お疲れさん、合格には程遠いがここ三日でだいぶ連携もうまくなって、ほんとによくやったと思うよ」

 

 そういいながら先生は俺たちに一本ずつラムネを渡してくる

 

「わ~ラムネだ~」

「先生、これ貰っていいの!?」

「当たり前だろ? 俺からお前らに頑張ったご褒美だ」

「ありがとうございます」

「ほれ、八重樫も」

「...ありがとうございます」

 

 ラムネを受け取った俺は、改めて不知火先生の方を見る...やっぱりこうしてると普通の人なんだよなぁなどと考えながらラムネを開けて飲んでいると、不知火先生が話始めた

 

「あぁそれと、これからお前達の訓練。俺も安芸ちゃんと一緒に見ることになったから」

「「「「へ?」」」」

「全員揃って驚いた顔してんな...まぁアレだ、大赦の上の方から正式に勇者たちの訓練に指導役として参加しろってお言葉を貰ってな。他の要求なら突っぱねてる所だが、その話なら大歓迎ってことで受けることにしたんだよ」

「...そ、そうなんですか」

「そうなんです」

 

 そういうと不知火先生はどこか気の抜けた...というか優しそうな笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちにとって新しい先生が一人増えました、名前は不知火 要

 掴みどころのない人で少し適当そうな雰囲気を感じさせる人です...多分俺たちに隠してることは山ほどあると思うけど。たぶんいい先生なのだと思います

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