不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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六話の番外話、投稿です
この話は別に読まなくても本編に支障はありません


六.五話, 日常-こぼれ話-

「よし、今日はここまでだな」

「終わりですか?」

「あぁ、休憩入れたって言ってもかれこれ一時間振りっぱなしだ。それにお前、今日は何か予定があるんじゃなかったか?」

「そうだった、今日はみんなでイネスに行く予定だった」

「なら、ちゃちゃっと準備してイネスに向かった方が良いだろ、それに今日は俺も予定がある」

「安芸先生とですか?」

「どうして安芸ちゃんとって発想になる」

「違うんですか?」

「違う」

「じゃあ誰なんですか?」

「少なくと、俺個人の用だな」

 

俺の方を見てる八重樫は随分と気になっているようだったが、今回に関してはほんとこいつらには関係ねぇ用事だからなぁ...まぁ時が来たら話せばいいか

 

「ほれ、とっとと帰って準備したほうが良いんじゃないのか?」

「...そうですね、そうします」

 

 

八重樫と別れた俺は、その足でそのまま花屋まで向かう

 

「こんちゃーっす、頼んでた花引き取りに来たんですけど」

「不知火さん、いつも御贔屓にして頂いてありがとうございます」

「ここの花屋は無茶な要望も聞いてくれますからねぇ、ホント頼りにしてます」

「いつでも頼ってくださいな。花は注文の通りでいいんだよね?」

「はい、ありがとうございます」

「それじゃあこれ、いつもの花束が九つね」

 

花屋のおばちゃんから花束を受け取った俺は、その足で瀬戸大橋記念公園...その中にある英霊之碑まで向かう

 

 

 

此処には相変わらず人はおらず閑散とした雰囲気だが、その雰囲気が俺は嫌いじゃなかった

 

「よお、また暇を潰しに来たぜ」

 

誰に対してでもないその言葉に、自分で笑うと一番手前の石碑まで降りて花束を供えていく。そこに書かれている名前は 乃木若葉・上里ひなた・伊予島杏・土居球子・高嶋友奈・郡千景...そして白鳥歌野。どの名前も俺にとっては縁の深い名前だ、それ以外にも赤嶺や弥勒等、関わりのあった人たちの石碑前に花を供えると、若葉たちの名前が書かれている石碑の前に胡坐をかいて座る

 

「今日お前らの所に来たのはいつも通りの近況報告って奴だ...もしかしたらどっかで見てるかも知れねぇが、今代の勇者は小学生が三人だ。後は珍しく護人もいるな」

 

それから俺が彼女たちの前で話したのは、今代の勇者たちの活躍とここ最近俺が何をしていたのか

 

「そういえば、言い忘れてたけど事務所移転したんだよ。長くは持った方で築三百年とか言うバカみたいな間、俺の家兼事務所だったわけだが流石に老朽化で危険だからって移転することになっちまったよ」

 

西暦の勇者だけでなくそこに住む町の人々、若葉たちがバトンを繋いできた人たちとの思い出が詰まった事務所だったが。流石に老朽化の波には逆らえなかったようでだいぶガタが来ていた...住んでいた俺も直し直しであった為、きっと良い機会なのだろう

 

「でも...なんか丸亀を離れる気にならなくてな、やっぱり事務所を構えるなら丸亀じゃないとって事で、今はここら辺に借りてる仮の家を事務所代わりに適度に頑張ってるよ」

 

この場所に来ると、どうにも悲しいというか...何処かやるせない気持ちになっちまうからいけねぇなとか思いつつも、それと同時に懐かしい気持ちになっちまう以上やはりここに定期的には来たくなるのが不思議だ

 

「さてと、近況報告も終わったし俺はそろそろ帰るわ...丁度、お客さんも来たみたいだしな」

 

そう言って俺が階段の方を見ると、巫女服を着た少女が一人立っていた。漆色の髪が特徴のその少女はゆっくりと若葉たちの石碑の前までやってくると花束を置き手を合わせる。その様子を無言で見ていると、手を合わせ終わった少女はゆっくりと俺の方を向く

 

「お久しぶりです、要様」

「様はやめてくれ、ひより。いつも通りさん付けで良い」

「今はお仕事中ですから」

 

そう言って何処か懐かしい笑みを浮かべてくる少女の名は”上里 ひより”...ひなたの子孫であると同時に、上里家の現当主でもある

 

「そうか、それにしても珍しいな。仕事でここに来るなんて」

「ご先祖様には申し訳ないと思いますが、本当に用があるのは要様に対してなんです」

「俺に...用?」

「はい、要様にお伝えしなければならないことがあります」

 

真剣に俺の方を見つめるひよりを見ていると、心がざわつくのを感じる...遠い昔、西暦時代に侵攻が起こった時と同じざわつきだ

 

「...聞かせてくれ」

「巫女の一人が、神樹様から神託を受け取りました...まもなく、勇者様に危機が訪れると」

「危機?...それをあの子達には伝えたのか?」

「いいえ、私を除いた大赦上層部は勇者様たちに不安を与えないようにと、この事実を伏せています」

「またいつもの秘匿体質が出たか...そこは仕方ない。最悪俺の口から勝手に伝えさせてもらう」

「具体的な情報は分かりませんが、上里家当主として、要様の判断を信じます」

「...ほんと、ひなたに似てきたな」

「誉め言葉として受け取っておきますね」

 

ホント、上里家っていうのはどうしてこうもやたら頼もしいのかね、まぁそれはこの際どうでもいい

 

「伝えたいことってのはそれか?」

「はい、今回伝えなければならなかった要件は済みました」

「わかった、神託の件はひとまずこっちで預かって安芸ちゃんと相談してみる」

「よろしくお願いします」

「あぁ、合点承知だ...それじゃ、俺はもう帰る」

「...あの!」

 

来た道を戻り、帰ろうと歩き出した瞬間ひより止められる

 

「まだ何かあるのか」

「これは...これは上里家当主としてではなく、一人の人間、上里ひよりとしてのお願いです」

「......」

「もしもの時は、勇者様たちを...園子ちゃん達の事を助けてあげてください、あの子の悲しむ顔、見たくないですから」

「......それは依頼か?」

「はい、上里ひよりから不知火要さんに依頼します」

「なら、その依頼引き受けた...だが、条件がある」

「...なんですか?」

「俺はあくまであの子達に判断を優先する、それと隠し事はなし。この二つが条件だが、構わないか?」

 

その言葉をきいたひよりは少し考えたような表情をするがすぐに何かを決意した表情で俺の方を向く

 

「構いません」

「分かった、それなら後は任せろ」

 

ひよりからの依頼を受けると、俺は英霊之碑を後にする。あの場所で依頼を受けてしまった以上、どれだけ時間がかかったとしても俺はこの依頼を完遂しなければいけなくなった...これは誰に言われたでもない、たった一人の勝手な誓いだ

 

「とりあえず安芸ちゃんに神託の事話して...後は、最悪に備えて鍛え直しておくか」

 

そういいながら見上げた空は、あの頃から変わることのないクソみてぇな青空だった

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