「夏だ!」
「プールだ!」
「「そして水着だ!」」
「貴方たち浮かれすぎじゃない...?」
「...熱い」
晴れ渡る空、照り付ける太陽、耳に聞こえてくるセミの声...熱い
「いーじゃんか、せっかく遊びに来てるんだし。須美こそいつまで準備体操してるのさ」
「準備体操は大事よ、水の事故って怖いんだから」
「それで...徹はどうした」
「実は俺、熱いのダメなんだ」
「そうなんだ...」
一人で地面で伸びていると、園子が俺達に話しかけてきた
「ねぇねぇ、もし今敵が来たら私たちって水着で戦うの?」
「それは嫌だよなぁ、まぁイレギュラーなんてそうそう起こらないだろうけど」
「ちょっと銀! 一体目だって早く来たのだから気を緩めちゃ駄目よ」
「へいへい...っていうかさ、須美って実は高校生くらいじゃね?」
「もっといってるね~、大学生くらいかも」
この二人が須美の何処を言っているのかは触れないで置いて。俺は一人でのろのろと日影に退散している間に銀と須美の二人はバカみたいな速度で競争していた...俺が癒えた義理じゃないんだが、この後オリエンテーションの準備があるのに、大丈夫か?
結果から言うと、ダメでした
四人で椅子を並べて座っている銀は現在机の上でぐでっとしている、やはりプールで遊びまくったのが原因だろう、一方の須美は意外に疲れた様子はない。遊んでいたといってもある程度セーブはしていたのだろう、そこらへんは流石須美と言ったところか
「当日は楽しみだねぇ」
「...ありがとう、みんなのお陰で最高のオリエンテーションになるわ」
とりあえず明日のオリエンテーションで行う出し物の準備は出来た、少し不安だが子供たちは喜んでくれるだろう
オリエンテーション当日、とりあえず俺は音響担当と言う事でラジカセ片手に待機をする、内容は確認済みだし俺はひたすらカセットを再生するだけだ
「大変だ! 海の向こうから悪い怪獣が攻めてくるぞ! 君ならどうする!?」
とりあえず、通常のBGMを流す
「逃げる~...」
「それだと怪獣にここを取られちゃうよ?」
「えっと、たたかう!」
「そう! アタシたちには神樹様がついてる! 勇気を出して戦いましょう!」
会場のボルテージが良い感じにあったまってきたところで銀が入口の方に手を向ける、そこに見えたのは二人の人影...そう、彼女たちの名は!
「国防仮面と一緒に!」
「国を護れと人が呼ぶ...愛を護れと叫んでる」
「「国防仮面、見参!」」
教室の中に入ってきたのは、須美と園子...ではなく国防仮面一号と二号、子供たちの声援が聞こえる以上やっぱりヒーローショーって人気なんだな
「さぁみんな!」
「声を揃えて――」
「「富国強兵~!!」」
「すばらしいわ、もう一度!」
これで本当に良いのか? なんて考えてたら、やっぱダメだった見たいですね、安芸先生の姿が見えた段階で諦めた...一応何か救いは無いかとあたりを見回すと不知火先生の姿が見えたから視線で助けを求めるけど首を横に振られる、やっぱダメかぁ
それから数日の時が流れいよいよ遠足が近づいた昼休み、給食を食べ終わった俺達三人の元に須美がクソ分厚いプリントの束を渡してくる
「三人には、これを渡しておきたくて」
「......須美さん、ナンすかこれ」
「...銀、そりゃしおりだろ...そう書いてある」
「その通り、私達の班の遠足のしおりよ、銀。データ版は今、二人の端末に送っておいたわ」
相変わらず、楽しみなことに対する熱意は半端じゃない、それが鷲尾須美だった事を最近はすっかり忘れていた
「オフゥ。これ、わざわざ作ったんか須美さん」
「遠足......楽しんでいいと思うと、少し張り切って夜更かししてしまって。予定よりずいぶん量が増えてしまったわ」
「わっしーは凝り性さんというか、のめり込むタイプだよね~」
「...将来、須美の旦那になるやつは苦労するだろうなぁ」
「それなら心配ないだろ、最有力候補がここに居るし」
「そうだね~」
「なっ!! 二人ともッ! きゅ、急に何をッ!!」
「急にどうした?」
「なんでもないわ!!!」
「そ、そう...?」
今日の須美は今まで以上に感情のふり幅が激しい気がする、まぁ寝不足みたいだし仕方ないかなどと考えていると銀が俺の方を呆れた目で見ていた
「どうした?」
「いや別に」
よく分かんないなぁほんと
「と、とにかく。これを活用して準備を済ませておきましょ...遅れたら、お灸よ」
「そういうの何処に売ってるの...?」
「そりゃ、イネスだろ...」
「そうね、イネスよ」
「ナイスイネス!」
あそこ基本何でも売ってからなぁ、お灸専門店とかあっても不思議じゃないか
そして迎えた遠足の日、俺達が訪れたのは街から少し離れた所にある公園。国内最大級の庭園や裏山にあるアスレチック等が目玉のスポットだ、流石観光地と言う事もあり俺も何度か来たことはあるがやはりテンションは上がるな
俺達四人がやって来たのはアスレチックコース、先陣を切った銀が軽やかな足取りでアスレチックを制覇していく
「銀ちゃんすごーい!」
「ありがとう」
「たまにはこういうのも面白いわね」
「そうだな」
「やっぱ勇者としては身体を動かしていかないとな」
「ちょっと待って~」
俺たちも銀の後に続き、アスレチックを制覇すると銀が笑顔で言ってくると俺たちの後ろから園子の声が聞こえてきたからそっちを向くと、園子はパンダのようにタイヤにぶら下がっていた
「三人とも早いよ~」
半泣きになっていた園子を二人で救助すると、四人で次のアスレチックまで向かう
「よし、次はあれだ!」
「あ、いたいた。銀ちゃんちょっといい?」
次のアスレチックに向かおうとした銀に話しかけてきた女の子の方に行くと、どうやらサインを求められたらしい
「妹がね、大きなお役目についてる銀ちゃんに憧れてるみたいで」
「そ、そうか...私ももう、サインする側だったのか」
やたらテンションの高い銀に少し不安を感じながらも四人でアスレチックの前にやってくると前と同じように銀が先陣をきる
「いやー、楽勝楽勝! アスレチックくらいじゃ簡単すぎるな」
「ちょっと銀! 気を付けないと危ないわよ」
「大丈夫大丈夫、このくらい片手だって――」
そういったタイミングで縄を掴んでいた方の腕が離れ、地面に向かって落下してくる、すぐに気づいた俺達三人が大勢を崩しながら受け止めると、須美は厳しい口調で銀に話しかける
「銀、楽しいのは分かるけど浮つきすぎよ。お役目の重さをよく考えて」
「ごめん...そして、反省します! 口数を減らします!」
一応須美の言葉が通じたのだと信じたいが、昼食時になると銀はいつもの調子に戻っていた
「ふおぉぉ、これ絶対うまいやつだ! うまいやつだよ!」
「口数減らすんじゃなかったの」
「ミノさんはわんぱくだねぇ」
「そのっちも中々だと思うんだけど」
「まぁ楽しければいいんじゃないか?」
「それは、そうだけど」
「そういえば、わっしー虫苦手なんだっけ?」
「ちょっとだけ」
「大丈夫だよ! 仲良くなれるから!」
「そ、そうかしら...」
園子の方を見た須美の目に入ったのは大量のカブトムシに止まられ、カブトムシの怪人と化した園子の姿だった。それに別のナニカを幻視したであろう須美は声にならない悲鳴を上げながら倒れ、俺も声が出るまでもなく意識を手放した
ぶっ倒れた俺達二人が起きたころには、銀の手によって焼きそばは完成しており三人分全員分が更に盛られていた為。全員揃って手を合わせる
「「「「いただきます」」」」
しっかりと挨拶をした俺達は各々焼きそばを一口食べる...うまい、麺とソースはしっかりと絡まっているし野菜や肉の分量も適量。語彙力がなくなるほどにうまい
「うまいっ! これはカブト味だな」
「焼いてないから!」
「入ってたら大問題だよ」
「このお肉おいしい~」
「園子ならもっといい肉食べてるんじゃないの?」
「このお肉がいいの~......はぁーーっ」
「なんだなんだ? 忙しい奴だな」
お前がそれを言うのか
「わっしーもミノさんもお料理出来るのに、私だけなんにもできないなって...ふと自分が恥ずかしくなったんよ」
「それなら徹も料理出来ないだろ」
「...俺は料理出来るぞ?」
「うそっ!?」
「本当よ、銀」
「八重樫は元々大赦の要人に仕えるのが仕事だからな。家事全般小さい頃から叩き込まれてるんだよ...適正を持ってる俺は例外になっちまったけどさ」
八重樫家はもとより、乃木や上里等初代勇者の家系うぃはじめとした重要な家系に仕えるのが生業だった。護人の適正が無ければ俺だってどこかの家系に仕えることになっていたと思う...まぁその性質上俺は小さい頃から掃除、洗濯、料理、護身術等主の為に必要な技術や礼儀作法は叩き込まれているのだ。最も身についてるのは技術だけで礼儀作法はさっぱりだが
「はぁーーーっ」
「だ、大丈夫よ! 焼きそばくらいすぐ作れるわ!」
「じゃあ次の日曜、みんなで教えて!」
「お安い御用だ!」
「後、やえくんのお料理も食べてみたい」
「任せろ、絶対うまいって言わせてやるからな」
何事も無く時間は進んでいき、俺達は高台の上から住んでいる街の風景を見ていた
「アタシたちの街あっちの方かな?」
「えぇ、あっちで合ってるわ」
訂正、正確には俺たちの住んでいる街を探している...だった
「大橋やイネスは流石に見えないな」
「ミノさんはほんとイネス好きだねぇ」
「イネスはいいぞ! なんたって――」
「『中に公民館まであるんだから』」
「もう完全に読まれてるな...」
銀がそう言うと須美は少し得意げな顔を見せる、それを見た銀は須美の方を見ると自分も少し得意げになり言った
「アタシだって、須美については説明書をかけるくらい詳しくなったぞ?」
「あら、最初のページにはなんて書いてあるのかしら?」
「けっこう大変な品物ですのでくれぐれもご注意ください」
「っつ...確かにそうだな」
銀の言葉に俺が吹き出し反応をすると、須美は少しだけ不満そうな顔を俺たちに向ける
「めんどくさい人みたいな言われ方ね...否定できないけど」
「いいじゃん、奥行きがあって。私なんて新聞のチラシ並みにぺらいぞ、きっと」
「そんなことないわよ、わかりやすくはあるけど書くことはいーっぱいあるわ」
そう言うと、須美は明るい口調で銀に言う
「これからも色々な一面を暴いていこうと思うわ」
「お手柔らかに頼むよ...」
「実は私、始めミノさんが苦手だったんだ...」
「おぉい! いきなり酷いな!」
少し離れていた園子が銀の肩をぽんっと叩くとそういった
「えぇ、私も同じよ」
「そうか? 俺はそうでもなかったが」
「それは徹くんが銀と似たもの同士だからよ」
「スポーツ出来て、明るくて...なんだか種族が違う気がして。でも、話してみたらこんなにいい人なんだもん。わっしーもいいキャラしてるし、やえくんも見てて面白いし」
「私はキャラなの!?」
「見てて面白いってどういうことだ!?」
「よく一人で百面相してるところとか~」
「マジか、そんなに顔に出てる?」
「確かに、結構わかりやすいかも」
「マジか...」
そんなやり取りをしていると俺の方を見ていた銀が笑いながら言う
「確かに話してみないとわからないよな、こういうのは。気にってもらえてよかった...須美、園子、徹、これからもダチ公としてよろしく」
「「「こちらこそ!」」」
銀の差し出してきた俺達は手を重ね、そう言った
遠足の帰り道、俺達四人は分かれ道に辿り着くまでの道を歩いていると、空を見ながら銀が話始めた
「は~楽しかった! 毎日が遠足ならいいのにな!」
「それ賛成~!」
「俺は反対だな、こういうのは物珍しいから良いのだとひい爺ちゃんも言っていた」
「もう、転ぶわよ! 銀!」
そういいながら四人で歩いていると、須美が銀の事を注意する......その瞬間、俺達以外のすべてが静止する
「これって...」
「あぁ、敵だ!」
「も~せっかく楽しい遠足だったのに」
「遠足終わった後に来ただけ、まだマシじゃん?」
いつもと変わらないように感じるが、今回だけはどうしても不安をぬぐうことが出来ない、それは須美も同じだったようで何処か不安そうな表情を浮かべていた
きっと今回の戦闘を知らせる鈴の音は、俺達にとって不吉な何かを暗示しているように感じていたのだろうと思う