不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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八話、投稿になります


八話, 分岐点

 時は遡り遠足の数日前、俺は神樹館から徒歩数分の場所にある喫茶店で安芸ちゃんの事を待っていた。理由はこの前ひよりから言われた神託についてを安芸ちゃんと話話し合う為だ

 

「お待たせしました」

「いや、そこまで待ってない。何か頼むか?」

「それじゃあ、コーヒーを」

 

 安芸ちゃんが席に座ると、俺は店主にコーヒーを頼む。マスターは程なくコーヒーを持ってくると安芸ちゃんの前に置き、カウンターまで戻っていく

 

「それで、要さん...話って?」

「この前の休み、ひよりと会った」

「ひよりって...上里家の?」

「あぁ、その時に言われたことについて、安芸ちゃんに話しておきたくてな」

 

 そこから俺が安芸ちゃんに神託の事を話す

 

「ひよりが受けた神託だが、勇者たちに危機が訪れるとの事だ、これは聞いてるか?」

「...いえ、この場で初めて聞きました」

「そうか、まぁ勇者たちに不安を与えられないように情報を止められているのは仕方ないか」

「今日はそのことについて?」

「あぁ、もし今後の戦いで死にそうになった場合俺が手助けする事を伝えておこうと思ってな」

「分かりました、もしもの時はよろしくお願いします」

「ひよりからもあいつらを助けてやってくれって依頼を貰ってる、だから基本的にあの子たちの判断に任せるが絶対に死なせない」

「お願いします」

 

 

 それから数日の時が流れ、あの子達が楽しみにしてたらしい遠足の日...バーテックスの襲撃が起こった

 

 

 

 

 

 

 樹海化の波に飲み込まれた俺達はいつものように大橋の前で敵を待ち構える

 

「だんだんこの光景にも慣れてきたなぁ」

「油断しないように銀。そういう時が」

「一番危ない、でしょ? 分かってる須美」

「なんだかミノさん、最近わっしーに注意されるような発言を、わざとしてるみたい~」

「あはは、なんだか癖になってさ」

「勘弁してほしいわ」

 

 三人はそう言っているだけだが、今回はどうにも不安がぬぐえない

 

「どうかしたの、徹?」

「...いや、なんか胸騒ぎがしてさ」

「! 来たよ~。え、えぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 須美にそう返してすぐに園子が敵が来た事を俺達知らせてすぐ後に絶叫が聞こえてくる。俺たちも敵の方を見ると今回せめてきらバーテックスは一体だけではなかった...目の前にいるバーテックスは二体。それが並び立ちこちらに向かってくる

 

「あちゃぁ、同時に二体...そうだよなぁ、律儀に一体ずつ来る必要ないよなぁ」

「バーテックスは単独行動が基本と聞いていたけれど...」

「今までが可笑しかっただけで...案外こういうイレギュラーの方が普通だったりするのかもな」

 

 今回で四度目の戦いだ、慣れてきたからか不安はあるが落ち着いている...きっと大丈夫だ

 

「驚いたけど、大丈夫だよ~。まずはミノさんといやえくんが一体ずつ相手をして、私は二人のサポート。わっしーは遊撃で援護してね。」

「流石ね、そのっち。了解!」

「じゃあアタシは気持ち悪い方と戦う!」

「どっちの敵も気持ち悪いと思うんだが...」

「だね~」

 

 銀の向かった方は尻尾に鋏のついている方だ。なら俺が向かうのはどことなくサソリっぽいほうに向かう。サソリの尻尾を避けながら動き、尻尾を切りつける

 

「変に小細工が無いからか、今までよりも戦いやすい!」

 

 銀の方も中々に順調なようでこの調子なら、押し切れると思う

 

「やえくん! そっちの敵はやえくんに針を当てたいみたいだから気をつけて~!」

「了解!」

 

 武器に風を纏わせることで、敵の放ってくる攻撃を僅かに逸らすことが出来る。そうして敵の攻撃を避けつつ着実にダメージを与えていく

 

「よし、このまま――「上から何か来る!」 ッ!」

 

 このまま押し切ろうとした瞬間、須美の声と同時に数千の矢が俺達に降り注いだ、園子は自身の槍を傘替わりに防、須美はその隣にギリギリで滑り込んだ。銀の方も巨大な斧を交差させて防ぎ、俺も疑似的に風のバリアを作り光の矢を防ぐ

 弓矢を何とか防いだ瞬間、俺達四人の身体に衝撃が走る。光の矢が降り注いでいる間に他の二体は再生し俺達に攻撃を仕掛けてきたみたいだ。まともに攻撃を受けた俺達の身体は宙に浮き、そのまま地面に叩きつけられる

 

「あ...あぁっ...」

「げほっ、ごほっ......」

「た、立てるか...須美、園子、徹...?」

「お、俺は......何とか...」

 

 なんとか立ち上がった俺と銀の前に現れたのは三体のバーテックス、新たに現れた一体が光の矢を撃ってきた奴...

 

「動けるのはアタシたちだけか...こりゃ、とるべき道は一つだよな、徹」

「そうだな...気合い入れるか」

 

 そう言って俺は須美を、銀は園子を抱えて敵の攻撃が当たらない樹海の影に二人を隠す

 

「よし、それじゃ行くか!」

「あぁ、いっちょ派手にぶちかますか」

「何言ってるの...銀、徹くん...こんな時に」

「どうするつもり...」

「勇者が逃げたら世界が終わっちゃうから、ここは頑張るっきゃなでしょ。ね、徹!」

「あぁ、世界を守るのが勇者で...勇者を護るのが護人だから」

 

 そう言って銀が握っていた二人の手の上に俺の手を重ねる

 

「アタシたちに任せて二人は休んでてよ」

 

「それじゃあ――」

「そんじゃ―――」

 

「「またね / またな」」

 

 気軽い別れの言葉を二人で済ませると、俺達は化け物どもの前に戻る

 

「さーてと、徹」

「なんだ?」

「背中...預けとくね」

「なら、俺も背中を預けとく」

 

 俺たちは拳を軽く合わせた後、手に持った武器を握り直す

 

「ここは任せろと言った以上、責任持たないとカッコ悪いからね...それじゃ、いっとくかァ!」

「あぁ、ド派手に行こうぜ!」

 

 俺達は弾丸のようにバーテックスに突っ込む、さっきの攻撃で俺達は痛手を負ってしまったがそれと同時に相手の間合いも把握した。それなら相手の間合いから自分の間合いに無理やり引き込んでぶん殴ればいいだけだ。そうしてダメージを着実に与えていくが、ダメージを受けたバーテックスを支援するように光の矢を放ってくる

 

「二度もッ!」

 

 体中のバネを全力で使い銀の前までたどり着いた俺はチャクラムを交差させ風のバリアを形成する

 

「サンキュ! 徹!」

「このまま押し切れ火力ソース!」

 

 光の矢がなくなったタイミングで風のバリアを解き、今度は武器に風を纏い敵を切りつけようとした瞬間、防いだはずの光の矢が戻ってきて俺たちの身体を切り裂いていく。何が起きたのかを理解できなかったが矢が降り注いできた先を見て、何が起きたのかを理解する

 

「まさか...跳ね返した」

 

 ダメージを受けて動きが鈍った隙をつかれ、反射板で弾かれた俺は地面に叩きつけられる。俺が叩きつけられるのと同時に銀も同様の攻撃を受けたようで隣に落ちてくるのが見えた。ボロボロの身体を引き摺りながら銀の元まで行き受け止めると二人でそのまま地面に倒れこむ

 

「...銀......大丈夫か?」

「きっついけど...ここで根性見せないと...」

「そう...だな、もうひと踏ん張り...」

 

 そう言って起き上がろうと瞬間、足に力が入らなくなる。体中から出血し意識も少し朦朧とし始めた

 

「徹も...辛い...なら、須美たちと休んでていいんだぞ?」

「冗談...この程度...」

 

 口では強がっていても体は動かない、体中から血は出てるしなんか脇腹には穴が開いてる気がする

 

「が...頑張らないと、俺達が」

 

「いや、お前らはもう十分頑張った。美味しいところを持っていくみたいで悪いが...後は任せろ」

 

 ボロボロの俺達を抱きかかえた人の事を、薄れゆく意識の中で見る

 

「しら...ぬい...せんせい?」

「遅れてすまなかったな。だが、お前達の根性...俺にも伝わった。だから今は待ってろ、絶対死ぬなよ」

 

 その言葉と共に俺は意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

 少し離れていた距離を進み、俺が瀬戸大橋に辿り着いて頃には、酷い状態になっていた。最初に傷を負い寝かされている鷲尾と乃木を見つけ、それからバーテックスの方に行き二人よりもボロボロになり倒れている八重樫と三ノ輪の姿が目に入った。

 

「不甲斐ねぇな...クソ野郎、大口叩いててこれか」

 

 ボロボロの二人を鷲尾達の隣に寝かせた俺は、自分自身を責めるようにそう言った後一人で化け物三体の元に戻る。悠然と前に進み続けるその姿はあの戦いで見た時よりも完全なものになっているのが分かる

 

「久しぶりだな...だが懐かしの再会をしてる訳にはいかねぇんだ。全力でぶっ潰す」

 

 その言葉と共に血を使い槍を形成し、化け物どもに向かって走りだす。久々の戦いで少し体に違和感はあるが当時のように動くくらいなら何とかなりそうだ。

 現在(いま)西暦(むかし)のように共に戦ってくれる人(若葉たち)はいない、それなら俺の戦法は一つ...死なないのを最大限利用して敵を叩き潰す、サソリ野郎が降ってきた尻尾に思い切り槍を突き刺すと尻尾を切り裂いたまま、サソリ野郎の胴体まで上がっていく

 

「まずは...一匹!」

 

 駆け上がった俺はそのままサソリ野郎の身体の中に槍を突き立て茨のように伸ばす。体内を食い破るように槍でサソリ野郎を引き裂いた瞬間、光の矢が俺に降り注いでくる、少し貰ったがそのまま地面に降りて瞬間、サソリ野郎はゆっくりと後退を始める

 

「回復力も前以上かよ...つくづく己の火力不足を実感するねぇ」

 

 適当にぼやきながら次のターゲットを光の矢を撃ってくる化け物に定めると武器の形状を鎌に変化させる

 

「...鏖殺してやるよ、相手は二匹だがな」

 

 光の矢を撃ってくる敵に対して俺は鎌を振るい矢を吹き飛ばしながら接近し、思い切り鎌をぶん投げる。回転しながら化け物に突き刺さったことを見ると、その地点に向かって跳ぶ

 鎌の持ち手を足場にもう一度跳躍すると手の中に新たな槍を形成し化け物の上空から降下する、降下させながら槍の穂を巨大化させるとそのまま化け物を貫いた

 

「これで二体目、残り一体!」

 

 槍を消して敵に突き刺さったままの鎌を引き抜くと化け物を足場に残り一体に向かって跳躍する。残り一体は尻尾の鋏を使って攻撃してくるが武器を鎌から旋刃盤に変え、旋刃盤を盾に攻撃を逸らすと逆の手にボウガンを出現させ、鋏の脆そうな部分に撃ち込み、その部分をマーカーに旋刃盤を巨大化させ、ぶん投げる。ぶん投げた旋刃盤は矢の突き刺さった地点にぶち当たり、鋏を破壊したのを走りながら確認する

 鋏と言う攻撃手段を失った残り一体は反射板で攻撃を仕掛けてくる、一発目を避けながら武器を籠手に変化させると二発目を真正面からぶん殴りひびを入れると新たに刀を出現させ、反射板を足場にして一気に近づき上から下にかけてぶった切る

 

 

 勇者たちと戦闘を続けた後に俺の連戦、化け物側も持久戦は危険と判断したのか完全に後退しきるのを確認すると樹海化が解かれ始めた

 

「急がないとな」

 

 樹海化が解けたら急いで病院に連れて行って処置しないといけない程の重傷だった三ノ輪と八重樫の事を考えながら、俺は急いで勇者たちの元に向かった

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